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第五章

束の間の休息 2

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「由紀ちゃん最近お疲れだね」

突然現れたまどかの声にびっくりして今度は僕が固まった。危ない危ない…。

「ありがと、大丈夫よ。気が抜けちゃっただけで疲れとかじゃないから」
僕は安心させるために起き上がって、ニッコリ笑った。

「そっか、良かった」
まどかも安心したようにニッコリ笑う。

「そうだ! もし良かったら、今日いつもより早く授業終わるからみんなでどっか遊びに行かない?」
せっかく稽古が休みだから、気分転換に遊びに行きたい。

「良いね、それ。まどかはどう?」
「うう~ん…。行きたい、行きたいけど今日はダメだ~」
「何か用事?」
「うん…。おばさんがね、姪っ子連れて遊びに来るのよ。相手してやってねって、念を押されてるのよね…」
「そっか、そりゃ残念」

それじゃあしょうがないね~と言うことで、僕は梓と二人でショップ巡りでもしようかと言うことになった。


「これってデートだね」

今、僕と梓は某アイスクリームショップで幸せを満喫中。稽古とテスト勉強に追われて半分死んでいた僕にとっては、梓と二人っきりの時間はまさに癒しの時間だ。

「うん」

梓も満更でも無さそうで、楽しそうに足をぶらぶらさせている。

「どっか行きたいとこある?」

「んー、特には…。あ、あの駅前にあるファストファッションのショップにでも行く? あそこならレディスもメンズも揃っているし、買わなくても冷やかしでもあんまり気にならないし」

「そうだね。そのくらいがちょうどいい時間だな。よし、行くか!」

梓は今特に欲しいものは無いというので、メンズのコーナーで僕はパンツを物色中。

「あ、これ欲しいかも」

どれどれと梓が覗き込んできた。僕の手にしているのは黒のスキニーパンツ。

「ああ、良いかもね。似合うんじゃない? 着てみたら?」
「うん、そうする。…あ」

僕はちょっと面白い事に気が付いてしまった。

「ここで男物一式買って、メイクを落としたら完璧なデートだよな」
梓は一瞬キョトンとしたが僕の言いたいことが分かったようで、ゆっくりと口角が上がる。

「近くにドラッグストアあったよ。拭くだけのメイク落とし買ってくる?」
「じゃあお願いする! その間にパンツとTシャツ買っておくよ」

「あたしらも大概だな」
笑って梓はドラッグストアへと向かい、僕はスキニーパンツを手に、Tシャツを物色するべく歩きだした。
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