修行のため、女装して高校に通っています

らいち

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第五章

幸せの残像

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「すっごい人だったな、梓いつもあんな感じ?」
「ううん、もうちょっとましだよ。いつもはもう少し遅い時間の電車だから」
「えぇ~? あー、そうか梓部活してたもんな。惜しいことした…もうちょっと遊んでいれば良かったな」
「そうだね、でもそれじゃあ由紀の帰る時間が遅くなっちゃうだろ?」
「別に構わないよ」
「そっか。じゃあやっぱ惜しかった」

そう言いながらも梓は、全然惜しい風もなく楽しそうに笑ってる。

「あ、ここ。この通り…」
僕が梓に気持ちをうっかり漏らしてしまったところだ。そしてお互いの気持ちを確認し合った場所。

「うん…」
梓も僕と同じことを思っていたようではにかみながら頷いた。

「ここさ、あたしの通学路でもあるんだよ。だから朝夕毎日通るんだ」
「うん」
「だからさ…そのたんびに由紀との事思い出して、幸せな気分になったりするんだよな」
「梓…」

あの後、本当はもっとロマンチックな雰囲気で梓に「好きだ」って言えればよかったのにと、しくじったなあって思っていた僕は、梓の言葉に驚いてしまった。
梓の顔を見れば、今でもやはり幸せそうに頬が緩んでいる。

――そうか…毎日、幸せな気分になってくれているんだ

何気ない一言に僕の気持ちもふわふわと舞い上がってくる。恋って凄いものなんだな。

「着いちゃった。ありがとな由紀」
今は梓の家の門の前。

「うん。…玄関前まで送るよ」
「え? うん」

梓は訝しげな顔をしながらも門を開け、僕を玄関前まで通してくれた。

梓の家の玄関は門から真っ直ぐではなく、家を回り込むように入って行き、そのために通り沿いからは見えないような造りになっていた。
だから今、僕たちは誰の目にも触れない状態だったりする。

「梓…」

梓の名前を呼びながら、そっと肩に触れる。
呼ばれて梓は「え?」という表情をしたが、僕の目を見ていつもと違うことに気づいたんだろう。ちょっと固まって緊張したようだ。

僕は梓の唇に、自分のそれを合わせようとゆっくり顔を近づけて行った。
だけど梓は、僕の目をそのままじっと見つめたままだ。

「梓、目閉じて」

僕が苦笑交じりの小さな声で訴えると、梓は一瞬ピクンと体を揺らし、それからおずおずと目を閉じた。
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