修行のため、女装して高校に通っています

らいち

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第五章

初めてのキス

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こういう時の梓は本当に可愛らしい。いつもの男前な印象をがらりと変えてしまう。

ゆっくりと、梓を驚かせないようにふわりと唇を触れ合わせる。

まるで時間が止まったかのような不思議な感覚。トクントクンと心臓の音がやけに大きく響いている。

そっと唇を離すと、梓はおずおずと目を開けた。

だけど恥ずかしいのか、視線が揺らいで僕を見ようとはしない。本当はギュッと抱きしめて、もっと何度もキスを重ねたいんだけど、万が一家族の誰かに見られたらとんでもないことになるので、気持ちを何とか切り替える。

「今日は楽しかったよ、ありがとう梓」

僕の言葉にようやく梓は顔を上げ、僕の目を見る。その目はちょっと潤んでいるようにも見えた。

「あたしも…由紀…、由紀也とデート出来て嬉しかった」

ぎゅううううっ。

「由、由紀也…」

梓の戸惑う声が聞こえて来たけど知るもんか!
まただよ!
また理性のタガが外されてしまった。何だこの梓の破壊力! 

今まで僕の名前をずっと忘れていたかのような「由紀」呼びだったくせに、なんで今本名で呼ぶかな!
可愛すぎて好きすぎてどうにかなってしまいそうだ。

だけど梓が僕の背中をパンパン叩くので、僕はイヤイヤ梓の体を解放した。

「ごめん」
「…謝らなくてもいいけど」

ほんのり赤い顔をした梓が上目づかいに僕を見ながら、拗ねたような口調で小さくつぶやいた。

「うん」
ニコッと微笑むと、梓も安心したような表情に変わる。

「じゃあ、そろそろ帰ろうかな」
「うん、送ってくれてありがとう」

梓はそう言いながら、また門まで僕を見送りに出てくれた。

「じゃあまた学校で」
「うん、気を付けてね」

僕は後ろ髪を引かれる思いで手を振りながら、小さくなっていく梓を何度も何度も振り返りながら駅への道を歩いて行った。
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