84 / 106
第五章
初めてのキス
しおりを挟む
こういう時の梓は本当に可愛らしい。いつもの男前な印象をがらりと変えてしまう。
ゆっくりと、梓を驚かせないようにふわりと唇を触れ合わせる。
まるで時間が止まったかのような不思議な感覚。トクントクンと心臓の音がやけに大きく響いている。
そっと唇を離すと、梓はおずおずと目を開けた。
だけど恥ずかしいのか、視線が揺らいで僕を見ようとはしない。本当はギュッと抱きしめて、もっと何度もキスを重ねたいんだけど、万が一家族の誰かに見られたらとんでもないことになるので、気持ちを何とか切り替える。
「今日は楽しかったよ、ありがとう梓」
僕の言葉にようやく梓は顔を上げ、僕の目を見る。その目はちょっと潤んでいるようにも見えた。
「あたしも…由紀…、由紀也とデート出来て嬉しかった」
ぎゅううううっ。
「由、由紀也…」
梓の戸惑う声が聞こえて来たけど知るもんか!
まただよ!
また理性の箍が外されてしまった。何だこの梓の破壊力!
今まで僕の名前をずっと忘れていたかのような「由紀」呼びだったくせに、なんで今本名で呼ぶかな!
可愛すぎて好きすぎてどうにかなってしまいそうだ。
だけど梓が僕の背中をパンパン叩くので、僕はイヤイヤ梓の体を解放した。
「ごめん」
「…謝らなくてもいいけど」
ほんのり赤い顔をした梓が上目づかいに僕を見ながら、拗ねたような口調で小さくつぶやいた。
「うん」
ニコッと微笑むと、梓も安心したような表情に変わる。
「じゃあ、そろそろ帰ろうかな」
「うん、送ってくれてありがとう」
梓はそう言いながら、また門まで僕を見送りに出てくれた。
「じゃあまた学校で」
「うん、気を付けてね」
僕は後ろ髪を引かれる思いで手を振りながら、小さくなっていく梓を何度も何度も振り返りながら駅への道を歩いて行った。
ゆっくりと、梓を驚かせないようにふわりと唇を触れ合わせる。
まるで時間が止まったかのような不思議な感覚。トクントクンと心臓の音がやけに大きく響いている。
そっと唇を離すと、梓はおずおずと目を開けた。
だけど恥ずかしいのか、視線が揺らいで僕を見ようとはしない。本当はギュッと抱きしめて、もっと何度もキスを重ねたいんだけど、万が一家族の誰かに見られたらとんでもないことになるので、気持ちを何とか切り替える。
「今日は楽しかったよ、ありがとう梓」
僕の言葉にようやく梓は顔を上げ、僕の目を見る。その目はちょっと潤んでいるようにも見えた。
「あたしも…由紀…、由紀也とデート出来て嬉しかった」
ぎゅううううっ。
「由、由紀也…」
梓の戸惑う声が聞こえて来たけど知るもんか!
まただよ!
また理性の箍が外されてしまった。何だこの梓の破壊力!
今まで僕の名前をずっと忘れていたかのような「由紀」呼びだったくせに、なんで今本名で呼ぶかな!
可愛すぎて好きすぎてどうにかなってしまいそうだ。
だけど梓が僕の背中をパンパン叩くので、僕はイヤイヤ梓の体を解放した。
「ごめん」
「…謝らなくてもいいけど」
ほんのり赤い顔をした梓が上目づかいに僕を見ながら、拗ねたような口調で小さくつぶやいた。
「うん」
ニコッと微笑むと、梓も安心したような表情に変わる。
「じゃあ、そろそろ帰ろうかな」
「うん、送ってくれてありがとう」
梓はそう言いながら、また門まで僕を見送りに出てくれた。
「じゃあまた学校で」
「うん、気を付けてね」
僕は後ろ髪を引かれる思いで手を振りながら、小さくなっていく梓を何度も何度も振り返りながら駅への道を歩いて行った。
0
あなたにおすすめの小説
二重のカーテン (スカートの下の黒い意志)
MisakiNonagase
青春
洗濯物の隙間に隠したのは、母としての祈りと、娘のプライド。
かつて、女子高生という生き物はもっと無防備で、自由だった。
44歳の主婦、愛子が朝のベランダで手にするのは、娘たちが毎日履き替える漆黒のオーバーパンツ、通称「黒パン」。それは、令和を生きる娘たちが自らの尊厳を守るために身に着ける、鉄壁の「鎧」だった。
小学校時代のママ友たちとのランチ会。そこで語られるのは、ブルセラショップに下着を売っていた奔放な50代、無防備なまま凛と歩くしかなかった40代、そして「見せないこと」に命を懸ける10代の、あまりに深い断絶。さらには、階段で石像のように固まる父、生徒の背後に立たないよう神経を削る教師……。
一枚の黒い布を通して浮き彫りになる、現代社会の歪さと、その根底にある不器用なまでの「優しさ」。
ベランダに干された黒いカーテンの向こう側に、あなたは何を見ますか?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる