92 / 106
第六章
戸惑い 2
しおりを挟む
「そう言えば夏の公演の日程、正式に決まったってよ」
「そうなんだ、いつから?」
「8月1日から23日までだって。公演は昼のみで、12時半開演らしいよ。場所は東北第二ホテルだって」
「ホテルってことは、宿泊プランか…。じゃあ、もう予約受付始まってるよな」
「うん、そうみたい」
じゃあ、梓にも連絡しなきゃだな。
「…姉さん、もしかして佐藤に連絡した?」
「えっ!?」
僕の不意打ちの質問にかなり動揺したのか、姉さんは素っ頓狂な声を上げた。
「あー、連絡済なんだね。はいはい」
「ちょっと…。まだ何にも言ってないけど」
「んー、だって顔見たら分かるし。姉さん今、佐藤とどうなってるの?」
「ど、どうって…。あの、実はね…昨日…付き合ってほしいって…」
「え!? てことは、晴れて恋人同士になったんだ!」
「うん…」
姉さんは照れくさそうに笑う。
「おめでとー! やったね! でも水臭いなあ。何で教えてくれなかったんだよ!」
「…言おうと思ったんだけど、なんかちょっと照れちゃって…」
そういう姉さんの顔はほんのりと赤くて、凄く幸せそうだ。明日は佐藤によくやったと言ってやろう。
僕の心もさっきまでとは一変して、ほっこりと暖かくなるのを感じていた。
そして翌日、登校中。
「佐藤君おはよー」
明るくにこやかに元気よく、僕は佐藤に朝のご挨拶。
「お、おう。おはよう由紀」
朝からの、あまりにテンションの高い僕に違和感を覚えたのか、若干引き気味の佐藤がタジタジと返事をする。
「ねえねえ佐藤君」
ちょっと意地悪な気分になった僕は、佐藤のシャツをつんつんと軽く引っ張りながら詰め寄った。
「…なんだよ」
「あ、違った。お義兄さんおはよう」
にーっこりと笑う僕を見て、佐藤は途端に真赤になった。
「何言ってんだ! 気が早…っ。て、そうじゃなくて…」
珍しく慌てる佐藤が、何だかとてつもなく可愛らしい。あー、良いなあ、普段隙のない奴の慌てる姿って。
だけどなんだ、ムッとした顔すらかっこいいじゃねーかこの野郎。
「…お前」
あれ?
お義兄さん、声が低いですよ?
ああ、からかわれてると気づいて機嫌損ねちゃいました?
「ああもう、腹立つなあ。由紀に遊ばれるなんてガラじゃねえぞ」
「あはは。ごめん、ごめん。だって嬉しかったんだよ。姉さんと佐藤には早くくっついて欲しいと思ってたからさ」
そう言うと、佐藤は目を細めて優しい顔になった。
「…そうか。ありがとな」
「ううん。僕の方こそ、姉さんの事よろしくな」
「おう」
僕の言葉に、今度は佐藤は真剣な顔で、しっかりと頷いた。
「そうなんだ、いつから?」
「8月1日から23日までだって。公演は昼のみで、12時半開演らしいよ。場所は東北第二ホテルだって」
「ホテルってことは、宿泊プランか…。じゃあ、もう予約受付始まってるよな」
「うん、そうみたい」
じゃあ、梓にも連絡しなきゃだな。
「…姉さん、もしかして佐藤に連絡した?」
「えっ!?」
僕の不意打ちの質問にかなり動揺したのか、姉さんは素っ頓狂な声を上げた。
「あー、連絡済なんだね。はいはい」
「ちょっと…。まだ何にも言ってないけど」
「んー、だって顔見たら分かるし。姉さん今、佐藤とどうなってるの?」
「ど、どうって…。あの、実はね…昨日…付き合ってほしいって…」
「え!? てことは、晴れて恋人同士になったんだ!」
「うん…」
姉さんは照れくさそうに笑う。
「おめでとー! やったね! でも水臭いなあ。何で教えてくれなかったんだよ!」
「…言おうと思ったんだけど、なんかちょっと照れちゃって…」
そういう姉さんの顔はほんのりと赤くて、凄く幸せそうだ。明日は佐藤によくやったと言ってやろう。
僕の心もさっきまでとは一変して、ほっこりと暖かくなるのを感じていた。
そして翌日、登校中。
「佐藤君おはよー」
明るくにこやかに元気よく、僕は佐藤に朝のご挨拶。
「お、おう。おはよう由紀」
朝からの、あまりにテンションの高い僕に違和感を覚えたのか、若干引き気味の佐藤がタジタジと返事をする。
「ねえねえ佐藤君」
ちょっと意地悪な気分になった僕は、佐藤のシャツをつんつんと軽く引っ張りながら詰め寄った。
「…なんだよ」
「あ、違った。お義兄さんおはよう」
にーっこりと笑う僕を見て、佐藤は途端に真赤になった。
「何言ってんだ! 気が早…っ。て、そうじゃなくて…」
珍しく慌てる佐藤が、何だかとてつもなく可愛らしい。あー、良いなあ、普段隙のない奴の慌てる姿って。
だけどなんだ、ムッとした顔すらかっこいいじゃねーかこの野郎。
「…お前」
あれ?
お義兄さん、声が低いですよ?
ああ、からかわれてると気づいて機嫌損ねちゃいました?
「ああもう、腹立つなあ。由紀に遊ばれるなんてガラじゃねえぞ」
「あはは。ごめん、ごめん。だって嬉しかったんだよ。姉さんと佐藤には早くくっついて欲しいと思ってたからさ」
そう言うと、佐藤は目を細めて優しい顔になった。
「…そうか。ありがとな」
「ううん。僕の方こそ、姉さんの事よろしくな」
「おう」
僕の言葉に、今度は佐藤は真剣な顔で、しっかりと頷いた。
0
あなたにおすすめの小説
二重のカーテン (スカートの下の黒い意志)
MisakiNonagase
青春
洗濯物の隙間に隠したのは、母としての祈りと、娘のプライド。
かつて、女子高生という生き物はもっと無防備で、自由だった。
44歳の主婦、愛子が朝のベランダで手にするのは、娘たちが毎日履き替える漆黒のオーバーパンツ、通称「黒パン」。それは、令和を生きる娘たちが自らの尊厳を守るために身に着ける、鉄壁の「鎧」だった。
小学校時代のママ友たちとのランチ会。そこで語られるのは、ブルセラショップに下着を売っていた奔放な50代、無防備なまま凛と歩くしかなかった40代、そして「見せないこと」に命を懸ける10代の、あまりに深い断絶。さらには、階段で石像のように固まる父、生徒の背後に立たないよう神経を削る教師……。
一枚の黒い布を通して浮き彫りになる、現代社会の歪さと、その根底にある不器用なまでの「優しさ」。
ベランダに干された黒いカーテンの向こう側に、あなたは何を見ますか?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる