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第一章
体育の授業2
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……だけどまあ、下手くそという言葉は嘘じゃなかった。
彼女が受けたボールはなかなか前には飛ばず、八割方明後日の方向へと飛んでいく。
どんな技術だ、面白すぎる。
「ごめん、中山さん」
彼女は半分死にそうな顔をして、私のもとへと駆け寄ってきた。
「大丈夫だよ、気にしない気にしない」
「でもこれじゃ、練習にならないでしょ」
「あ~、そっか」
「そこのあなた」
「えっ? あっ、はい!」
先生が、まっすぐに美穂さん目指して歩いてくる。
「ボールの受け方が間違っているのよ。いい? ボールはこうやって、できるだけ額の上で……」
慌てふためく美穂さんに、先生は優しく丁寧に教え始めた。
意外といい先生だ。顔つきがキリッとしているから、もうちょっとキツイ先生なのかと思っていたけど。
「分かった?」
「はい、ありがとうございます」
「じゃあ、練習再開して」
「はい」
美穂さんはかなり緊張していたみたいだけど、さっきよりはだいぶましになっていた。それを確認した先生は、安心したように戻っていく。
そしてしばらくオーバーハンドパスの練習をした後、今度はサーブの練習に変わった。
バレーボールコートの両側にそれぞれ並んで、こちら側で放ったサーブをあちら側で打つという形式だ。そして終わった順に、それぞれ相手側へと移っていく。
こういう練習は苦手な人にはかなり苦痛だろう。一人でやる形式で、しかも並んで順番を待つのだ。失敗したときの恥ずかしさったらない。だからなるべく、下手な人は下手な人と一緒にかたまりたいのだ。
「ちゃんと入るかな」
美穂さんが心配そうに私に尋ねた。完璧にやる気のない私とは大違いだ。
「どうかな」
あっ、佳奈の番だ。
さすが長い間バレーボールをやっているだけあって、軽くサーブを決めた。一介の体育の授業にしては不釣り合いな、キレのある強いサーブに受ける側はビビって及び腰だ。
「あの打ち方かっこいいけど怖い、あんなサーブ打つの?」
「大丈夫、佳奈だけだよ。……と、吉田さんもそうかな」
他の人のサーブを見ていても、佳奈のように上から叩くフローターサーブを打つ人は少なくて、やっぱりほとんどがアンダーハンドだ。
でもその少数の中でも、佳奈のフローターサーブはやっぱり別格だ。
「はい、中山さん」
次は私だ。ボールを手渡されて、ふうっと息を吐いた。
無難に適当にアンダーハンドでサーブを打つ。ポーンと放たれたボールは、軽く弧を描いてネット前で落下した。
「ああ~、おしいね。あとちょっと」
「うん……。次、頑張ってね」
「うん」
コートの反対側に回るため、その場を後にして歩いていたら、小川君と目が合った。まあまあ離れた場所で、しかも体育の授業中だというのに。呆れたというか、心配しているというか、気にしているといった風情でこちらを見ている。
イライラする。中途半端に昔の私を知っていることで、気にする自分を優しいとでも思っているのだろうか。
――もったいないよ。
何が。
決めたんだ、私は。贖罪のためにも、もう二度と好きなことに没頭したりしないって。
彼女が受けたボールはなかなか前には飛ばず、八割方明後日の方向へと飛んでいく。
どんな技術だ、面白すぎる。
「ごめん、中山さん」
彼女は半分死にそうな顔をして、私のもとへと駆け寄ってきた。
「大丈夫だよ、気にしない気にしない」
「でもこれじゃ、練習にならないでしょ」
「あ~、そっか」
「そこのあなた」
「えっ? あっ、はい!」
先生が、まっすぐに美穂さん目指して歩いてくる。
「ボールの受け方が間違っているのよ。いい? ボールはこうやって、できるだけ額の上で……」
慌てふためく美穂さんに、先生は優しく丁寧に教え始めた。
意外といい先生だ。顔つきがキリッとしているから、もうちょっとキツイ先生なのかと思っていたけど。
「分かった?」
「はい、ありがとうございます」
「じゃあ、練習再開して」
「はい」
美穂さんはかなり緊張していたみたいだけど、さっきよりはだいぶましになっていた。それを確認した先生は、安心したように戻っていく。
そしてしばらくオーバーハンドパスの練習をした後、今度はサーブの練習に変わった。
バレーボールコートの両側にそれぞれ並んで、こちら側で放ったサーブをあちら側で打つという形式だ。そして終わった順に、それぞれ相手側へと移っていく。
こういう練習は苦手な人にはかなり苦痛だろう。一人でやる形式で、しかも並んで順番を待つのだ。失敗したときの恥ずかしさったらない。だからなるべく、下手な人は下手な人と一緒にかたまりたいのだ。
「ちゃんと入るかな」
美穂さんが心配そうに私に尋ねた。完璧にやる気のない私とは大違いだ。
「どうかな」
あっ、佳奈の番だ。
さすが長い間バレーボールをやっているだけあって、軽くサーブを決めた。一介の体育の授業にしては不釣り合いな、キレのある強いサーブに受ける側はビビって及び腰だ。
「あの打ち方かっこいいけど怖い、あんなサーブ打つの?」
「大丈夫、佳奈だけだよ。……と、吉田さんもそうかな」
他の人のサーブを見ていても、佳奈のように上から叩くフローターサーブを打つ人は少なくて、やっぱりほとんどがアンダーハンドだ。
でもその少数の中でも、佳奈のフローターサーブはやっぱり別格だ。
「はい、中山さん」
次は私だ。ボールを手渡されて、ふうっと息を吐いた。
無難に適当にアンダーハンドでサーブを打つ。ポーンと放たれたボールは、軽く弧を描いてネット前で落下した。
「ああ~、おしいね。あとちょっと」
「うん……。次、頑張ってね」
「うん」
コートの反対側に回るため、その場を後にして歩いていたら、小川君と目が合った。まあまあ離れた場所で、しかも体育の授業中だというのに。呆れたというか、心配しているというか、気にしているといった風情でこちらを見ている。
イライラする。中途半端に昔の私を知っていることで、気にする自分を優しいとでも思っているのだろうか。
――もったいないよ。
何が。
決めたんだ、私は。贖罪のためにも、もう二度と好きなことに没頭したりしないって。
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