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第一章

秋永君に相談したよ

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「おはよう、未花ちゃん」
「おはよう」

 いつものように、駅に行くとすでに秋永君が待っていた。その姿に心底ホッとして、肩の力が抜ける。

 電車内も通常通りで特に混んでいるわけではなかった。空いている席を見つけて二人で並んで座った。
 それにしても、昨日の変態とはどこで遭遇したんだろう。高校生でも無かったし社会人って感じでもなかったし……。見覚えが無いってことは知り合いじゃないってことで。
 ……てことは、やっぱり――。

「未花ちゃん?」
「え? あ、何? どうかした?」

 顎に手を当て考えこむ私を覗き込むように、体を傾げながら秋永君が声をかけた。

「それはこっちのセリフだよ。……どうかしたの? さっきから押し黙っちゃって」
「え? ああ、うん……」

 私は体を起こしてさりげなく車内を見回し、背もたれに体を預けた。

「実はちょっと気になることがあってね」
「気になること?」
「うん。……電車降りてから話すよ」
「……分かった」

 ゴトンゴトンと揺れる電車に身を預けながら、いつも通りに過ぎ去る時間。だけど今日の私たちは、いつもより口数が少なかった。

 電車を降りて改札を出、しばらく歩いたところで秋永君が口を開いた。

「さっきの気になってることって、聞いてもいい?」

 秋永君は、真剣な表情だ。もしかしたら口数少なかった電車内で、そのことばかりを考えていたのだろうか。
 私も昨日のことに関して隠したいなんて思っていなかったし、むしろ相談するつもりだったんだ。コクリと頷いて、私は昨日の出来事を総て秋永君に話した。

「それって、ストーカー!?」
「……やっぱ、そうのかな?」

 だとしたら気色が悪い。悪寒が走り、腕には鳥肌が立った。思わず両腕をスリスリと擦る。

「そのつけられてる感じは、昨日が初めてだっんだね?」
「うん、たぶん」
「そっか。……じゃあ、今日俺がそいつを捕まえてやる」
「え?」

「だってさ、そんな後をつけ回すような奴、エスカレートしたら拙いだろ? 早いうちにしっかり釘を刺しとかないと」

「うん。そうだよね」
「今日は未花ちゃんの家まで送るから、安心して?」
「うん……。ありがと」

 力強い秋永君の言葉にホッとして、昨日からのモヤモヤした嫌な気分は少しだけ軽くなった。

「任せとけって!」

 秋永君はそう言って、大仰に胸を張りトンッと拳で胸を叩いた。そのわざとらしさ満載の仕草に、私も思わず噴き出した。
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