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天使と悪魔

魔界からのストーカー 3

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「あ、あの芙蓉。えっと、あ、ありがと」

芙蓉に礼を言うのは何だかこっぱずかしいけれど(悔しいともいう)、助かったのは事実なので、ちゃんと礼は言わなくては。

まあ、顔を見るのは抵抗あるのでポリポリと鼻の頭をかきながら、床を見ながらではあるけれど。

「…どういう関係なんだ?」

無いと思っていた突然の芙蓉の反応にちょっと驚いた。だって、芙蓉が俺に興味を持ってるなんて思わなかったから。

「別に関係なんてないよ」

そう言って芙蓉の顔を見ると、明らかに不審そうな表情で、じっと俺の顔を見つめている。
無言でじっと見られるのは、かなりの圧だ。しかも綺麗な顔なので尚更圧迫感があり、俺はしぶしぶ圧に屈した。

悔しいけど、俺はこいつに勝てた試がない。

「…あいつ、魔界の王子でさ、何をとち狂ったか平民の俺に目ぇつけて、愛人になれなんてふざけたこと言いやがったんだよ」

ため息つきつつそう言うと、芙蓉が眉根を寄せた。

「それで大騒動して逃げ回ってたら魔王にばれちゃって、俺の方が追放されたってわけ。でも俺、異端児だったからな。然程の未練もないんだけどさ」

これは、本音だった。俺は悪魔の端くれではあったけど、魔界は俺には住みにくい世界だったから。

「異端児ね…。確かに」

芙蓉も、納得したように俺を見る。
そして、

「……ぷっ、思い出した。お前、本当にドジだもんなあ」

失礼なこいつは、俺を目の前に、盛大に思いだし笑いを引き起こす。

「くーっくっくっくっ。思い出したらもう止まらん、腹イテー」

芙蓉は顔を真っ赤にして、腹を抱えて笑い転げる。
本当に失礼な奴だ!

「芙蓉のバカッ」

そう言い捨てて、俺はリビングを出て行った。
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