3 / 44
天使と悪魔
魔界からのストーカー 2
しおりを挟む
「招いたつもりは無いんだがな」
相変わらず冷静な芙蓉の声。
時々俺をいらだたせる原因にもなっている芙蓉の態度だけど、今回ばかりはそれが俺を安心させてくれている。俺は、芙蓉の陰に隠れる形でユウマをそっと窺っていた。
「用が済んだらさっさと帰るさ」
そう言って、ユウマが俺の方へと視線を向ける。いつものように上からで、有無を言わせない視線だった。
「紫温」
ユウマに呼ばれて、反射的にビクッと体を震わせた俺は、慌てて芙蓉の後ろに身を隠した。ユウマは、そんな俺の態度に余計腹を立てたようで、眉間にしわを寄せて俺を睨む。
「帰るぞ」
「だっ、誰が戻るかよっ。俺を魔界から追放したのはそっちだろ? 今更なに言ってんだ」
ユウマは、刃向かう俺に一層気分を害したようで、ますます怖い顔になる。
芙蓉といい、ユウマといい、綺麗な顔をしている奴は怒ると無駄に怖い。
「ああ!? 口答えする気かテメ…ッ!?」
ユウマは突然びっくりしたような顔をして、動きが止まった。体を強張らせたまま、芙蓉を見る。
「という事だ。帰ってもらおうか」
「て、てめえ何しやがった!?」
ユウマの握りしめた拳が、小刻みに震えている。
「特に何も」
怒りに満ちたユウマの顔も、全く気にならないようで芙蓉の顔は涼しいものだ。
「嘘を吐くな!」
「強いて言えば、『近寄るな』と念じているだけだ」
「だけ…だと? てめえ一体何者だ」
芙蓉は、おもむろに腕を組んでゆっくりと答えた。
「元天使候補生だ」
ユウマは一瞬怪訝な顔をする。
「ふざけてんのか? 天界人がなんで悪魔と一緒にいるんだよ。こいつは出来そこないだがれっきとした魔界人だぞ」
「で?」
それがどうしたと言わんばかりに、顎を上げる。さすが芙蓉、あのユウマですら下に見ている…。
「もうちょっと力、入れてみようか」
芙蓉が平然と腕を組んだままそう言うと、ユウマの体が後ろにズズッと下がり始める。
「な…っ」
俺なんかと違い、魔力を十分に持っているユウマが、芙蓉に簡単に動かされている。俺も驚いたが、ユウマはもっと驚いたようだ。真っ青になり固まって芙蓉を見つめている。
しばらくそうして芙蓉を見ていたユウマだったが、気を取り直したのか力を抜いた。
「ちっ、分かったよ。今日の所は帰ってやる」
そして俺を見て、「またな」と言って消えていった。
「二度と来んなバカッ」
俺は消えゆくユウマに罵声を浴びせかけた。
そんな俺を隣の芙蓉がじっと見て、その後ため息を吐いた。
「俺としたことが、しくじった」
「え?」
ユウマを追い払ってくれたのにしくじったって何?と思って芙蓉を見たけど、「いや」と言っただけで、話してくれる気はなさそうだった。
相変わらず冷静な芙蓉の声。
時々俺をいらだたせる原因にもなっている芙蓉の態度だけど、今回ばかりはそれが俺を安心させてくれている。俺は、芙蓉の陰に隠れる形でユウマをそっと窺っていた。
「用が済んだらさっさと帰るさ」
そう言って、ユウマが俺の方へと視線を向ける。いつものように上からで、有無を言わせない視線だった。
「紫温」
ユウマに呼ばれて、反射的にビクッと体を震わせた俺は、慌てて芙蓉の後ろに身を隠した。ユウマは、そんな俺の態度に余計腹を立てたようで、眉間にしわを寄せて俺を睨む。
「帰るぞ」
「だっ、誰が戻るかよっ。俺を魔界から追放したのはそっちだろ? 今更なに言ってんだ」
ユウマは、刃向かう俺に一層気分を害したようで、ますます怖い顔になる。
芙蓉といい、ユウマといい、綺麗な顔をしている奴は怒ると無駄に怖い。
「ああ!? 口答えする気かテメ…ッ!?」
ユウマは突然びっくりしたような顔をして、動きが止まった。体を強張らせたまま、芙蓉を見る。
「という事だ。帰ってもらおうか」
「て、てめえ何しやがった!?」
ユウマの握りしめた拳が、小刻みに震えている。
「特に何も」
怒りに満ちたユウマの顔も、全く気にならないようで芙蓉の顔は涼しいものだ。
「嘘を吐くな!」
「強いて言えば、『近寄るな』と念じているだけだ」
「だけ…だと? てめえ一体何者だ」
芙蓉は、おもむろに腕を組んでゆっくりと答えた。
「元天使候補生だ」
ユウマは一瞬怪訝な顔をする。
「ふざけてんのか? 天界人がなんで悪魔と一緒にいるんだよ。こいつは出来そこないだがれっきとした魔界人だぞ」
「で?」
それがどうしたと言わんばかりに、顎を上げる。さすが芙蓉、あのユウマですら下に見ている…。
「もうちょっと力、入れてみようか」
芙蓉が平然と腕を組んだままそう言うと、ユウマの体が後ろにズズッと下がり始める。
「な…っ」
俺なんかと違い、魔力を十分に持っているユウマが、芙蓉に簡単に動かされている。俺も驚いたが、ユウマはもっと驚いたようだ。真っ青になり固まって芙蓉を見つめている。
しばらくそうして芙蓉を見ていたユウマだったが、気を取り直したのか力を抜いた。
「ちっ、分かったよ。今日の所は帰ってやる」
そして俺を見て、「またな」と言って消えていった。
「二度と来んなバカッ」
俺は消えゆくユウマに罵声を浴びせかけた。
そんな俺を隣の芙蓉がじっと見て、その後ため息を吐いた。
「俺としたことが、しくじった」
「え?」
ユウマを追い払ってくれたのにしくじったって何?と思って芙蓉を見たけど、「いや」と言っただけで、話してくれる気はなさそうだった。
0
あなたにおすすめの小説
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い
青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。
神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。
もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。
生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。
過去世と同じ轍を踏みたくない……
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
ちゃんと忠告をしましたよ?
柚木ゆず
ファンタジー
ある日の、放課後のことでした。王立リザエンドワール学院に籍を置く私フィーナは、生徒会長を務められているジュリアルス侯爵令嬢アゼット様に呼び出されました。
「生徒会の仲間である貴方様に、婚約祝いをお渡したくてこうしておりますの」
アゼット様はそのように仰られていますが、そちらは嘘ですよね? 私は最愛の方に護っていただいているので、貴方様に悪意があると気付けるのですよ。
アゼット様。まだ間に合います。
今なら、引き返せますよ?
※現在体調の影響により、感想欄を一時的に閉じさせていただいております。
愛していました。待っていました。でもさようなら。
彩柚月
ファンタジー
魔の森を挟んだ先の大きい街に出稼ぎに行った夫。待てども待てども帰らない夫を探しに妻は魔の森に脚を踏み入れた。
やっと辿り着いた先で見たあなたは、幸せそうでした。
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる