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放っておけない

里奈ちゃんとのデート 2

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館内には私語禁止の張り紙。
別にそれを意識してマナーを守ってと言うわけでは無いけれど、二人とも絵に関する感想をボソボソとしゃべるくらいで、ほとんど話はしなかった。

なんせ俺の意識は絵画なんかより、自分の左腕に集中している。
里奈ちゃんの右手が触れている部分が熱くてしょうがない。
ぶっちゃけ絵なんてどうでも良かった。

だけど、気になったのは里奈ちゃんの表情だ。
俺は彼女に舞い上がっていたのでそれだけでふわふわしていたんだけど、時折盗み見た彼女の表情はどことなく沈んだ感じで、思い詰めているようにも見える。もしかしたらストーカーの事でかなり悩んでいるのかもしれないと思うと、ふわふわしてばかりも居られないなと俺は気持ちを引き締めた。

「…?」

さほど強くは無いけれど、何か視線を感じたような気がして振り返った。
来館者が大勢いるので誰がこちらを見ていたのかまでは分からなかったけれど、誰かがこちらを見ていたのは間違いない。
もしかしてストーカーかとも思ったけれど、あえて里奈ちゃんに聞くことはしなかった。


二時間ほど見て回って、俺たちは美術館を出る事にした。
エントランス近くに展覧会用のグッズを販売していたので、入ってみる。

里奈ちゃんが一枚のポストカードを手にした。横から覗いてみると、淡い色調の印象派らしい絵が印刷されていた。里奈ちゃんが一番気に入って、ずっと見ていた絵だ。

「気に入ったの?」
「うん…。買おうかな」
「そっか」

俺は、里奈ちゃんの手からそのポストカードを引き抜いた。

「え?」

驚いて俺を見る。可愛いよなぁ、やっぱ。

「チケット出して貰ったから、お礼」
「あ、いえ、チケットは貰った物ですから」
「でも里奈ちゃんが誘ってくれたから、俺はここに来れたんだし。お礼させて?」

そう言って微笑むと里奈ちゃんは困った顔をしたけれど、しぶしぶ了承してくれた。
俺はレジでお金を払い、ポストカードを彼女に渡す。

「有難うございました」

困ったような、はにかんだ笑顔がすごく可愛い。

「まだ時間ある?」
「はい。二時間くらいなら」
「じゃあ、ちょっとお茶でもしようか」
「はい」

里菜ちゃんが、感じのいいカフェがあるからと言うので案内してもらった。
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