天使なんかと上手くやれるわけがない

らいち

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千年に一人の逸材

現れた芙蓉

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麗紗はずいっと近づいて、俺の頭を鷲掴みにする。

「てめっ、何しやがる!」

抵抗しようにも二人がかりで羽交い絞めにされているため、身動きが出来ない。ギリギリと締め付けられる頭が痛い。何をしているのか分からないが、その内キーンという音が頭に響いて気分が悪かった。

「…ダメだ、こいつ。使い物にならない」

何とも失礼な事を言いながら、麗紗は俺の頭から手を離した。

「牢獄に入れようにも、これじゃ許可も下りんぞ。人間界に来る以前の過去も見てみたけど、小物以前で話にならない」
「じゃあ俺が独断で連れて行きます。上の許可は取らなくてもいいです。芙蓉様にはどうしても、天界に戻ってもらわなくては」

言うなり男は俺を拘束する手を強めた。

だんだん理不尽な言葉の数々に腹が立ってきた。誰が大人しく連れていかれたりするもんか!
せめて魔力でこの天使たちから逃れようと、俺は全神経を集中した。

体温が上がりドクドクと怒りが頂点に達しようとしたその時、パシンと目の前で白い光が弾け、俺を拘束していた天使たちが弾き飛ばされた。

ハッとして顔を上げると、冷ややかなオーラを纏った芙蓉が立っていた。

「麗紗」

普段よりもいっそう冷たく不機嫌な声だ。
芙蓉は彼らの視界から俺を遮るように、俺の前へと移動して来た。

「お前が言う事聞かないからだ。天界に居た頃の芙蓉はどこに行ったんだよ」

「どこにも。俺は俺だ。…ただ、そうだな。あの頃の俺は視野が狭くて、自分の力こそが天界には必要だと、そんな事しか考えられなかったんだな」

「…今は、その悪魔の側なのかよ」

苦虫を噛み潰したような麗紗の声に、芙蓉が一瞬片眉を上げる。

「…別に。そうだな…、例えば紫温が魔界に帰ったとしても俺はここに残るぞ。確かに影響はあったかもしれないが、別に紫温がここに居るから天界に帰らないわけじゃない」

「そうなのか?」

心底驚いたと言った風情で、麗紗が目を見開く。
それよりも俺は、別の言葉に反応していた。

…影響、されてたんだ、俺に。
まったくもって気づかなかった…。気づかなかったけど、何だこれ。すごく嬉しいぞ。

「…お前、俺をなんだと思ってる」

芙蓉は俺に背を向けたまま他の天使と喋っている。良かった、顔を見られなくて。
絶対真っ赤になっているだろう俺の顔を芙蓉に見られたらと思うと、ここに今すぐ穴を掘って埋まりたいくらい恥ずかしい。

「しょうがないでしょ。芙蓉があまりにも変わってしまってるんだから。しかも悪魔と同居って」
「芙蓉様」

傍で見ていた、階級が下っぽい別の天使が口を開いた。

「…なんだ」
「その悪魔、連れて帰ってもいいですね?」
「何言ってんだ、お前。俺の話しを聞いてなかったのか」

一際低い、怒りを含んだ声で芙蓉がそれに返した。

「聞いてましたよ。この悪魔がいるからここに居るわけじゃないって事ですよね? ならその悪魔が天界で拘束されていようがどうあろうが、関係ないって事でしょう? だったら私がこいつを飼っても、問題ないって事ですよね」

「ああ!? てめえ、何言ってやがんだ!」

余りの言い草に俺は芙蓉の背後から一歩出て、傍若無人な天使に噛みついた。だけど一歩前に出た俺を引き戻すように、芙蓉が俺の肩を抱き寄せた。
そして驚くほどに冷たい空気があたり一面を覆い尽くす。

「バカッ。お前! 芙蓉、冗談だからな。本気にするなよ」
「麗紗様。俺は冗談なんかじゃ…」

言いかけた言葉を天使は咄嗟に飲み込んだ。それくらい芙蓉からは、恐ろしい気が発せられていたのだ。

だけどその気すらも蹴散らすように突然空が白く輝き、辺りが眩い光に包まれる。
俺は眩しさに目を開けられずに咄嗟に目を瞑って、芙蓉のシャツを掴んだ。

「いい加減にしなさい」

落ち着いたトーンの、だけど威厳のある声に、俺は恐る恐る目を開けた。
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