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第四章

初めてのレシピ検索

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 高遠さんが使っていいと言って提供してくれた部屋は和室の四畳半。小さな造りではあるけれど居候なわけだし、変な話、こういう小さな部屋が少し新鮮にも感じられる。

 開けっ放しになっていたドアから、高遠さんが布団を抱えて入って来た。

「とりあえず、これを使ってくれ。予備の枕は無かったから、このクッションでも適当に使ってくれ」
「ありがとうございます」

 迷惑だと思っているだろうに、こうやって受け入れてくれたのだ。私はそのことに感謝して、しっかり高遠さんを守らなきゃと改めて思った。

「明日の朝食も頼めるんだろうな?」
「えっ!? あ、は、はい、もちろんです!」

 ホッとした途端にダメ押しのように言われて、私はびっくりしたと同時に、反射的に肯定の返事をした。だけどもちろん、そんな自信はどこにもあるわけが無い。

 後でレシピ検索をしなくちゃ……。

「着替えを持ってきているんだよな?」

 そう言いながら、高遠さんの視線はボストンバックに注がれる。

「はい。当座の分は詰め込んできました」
「じゃあ、風呂に案内する。俺はすることがあるから、そのまま休んでくれていいから」
「あ、ありがとうございます」

 私は高遠さんに案内されて風呂に入り、また与えてもらった部屋に戻った。

「はあ……」

 覚悟はしていたけど、本当に相手にしてもらえないんだな。

「だけど、そんなことを愚痴っていても仕方がないわよね!」

 そう、問題は山積みなのだ。
 明日からは、ご飯の支度もしなくてはいけないし……。

 スマホをバッグから出して、とりあえずレシピ検索だ。
 今は動画を見ながら一緒に料理をする事も出来ると聞いたことがある。

 そういえば……。材料はどうなっているのかしら。何があるか確認してから、レシピ検索はそれからだわ。

 部屋を出て台所をザッと確認して、炊飯器を確認した。蓋を開けてみると、水に浸かったお米が入っていた。どうやら明日の朝に炊けるように予約をしているようだ。冷蔵庫の中や、籠に入っている常備野菜を確認して部屋に戻った。

 お味噌が入っていたし、ご飯がセットされているからきっと朝は和食派よね。

 確認した食材から、自分でも出来そうな朝食レシピを検索していく。

 ……もうちょっと初心者用の優しいレシピは無いかしら? しかも出来るなら、高遠さんに満足してもらえるようなご飯にしたいし。
 そんな我儘な願いを叶えたいだけの為に、目を皿にしてレシピ検索を続けた。

 だけど私のわがままな欲求を満たしてくれるレシピなんてそうそうあるわけもなく、だんだん頭の中がごちゃごちゃになってきて、なんだかもうどうでもいいような気分に陥るという本末転倒な状態に陥っていった。
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