不思議な縁に導かれました

第二章

近づく心

　今日は土曜日。天気が良いので洗濯機を回し、窓を開けて部屋の空気を入れ替える。高科さんはいつも通りに起き朝食を済ませた後、集中したいからと言って自室に籠っている。きっとまた、研究の事で頭がいっぱいなんだろう。

　バタバタと動き回っている内にだんだんお腹が空いてきた。時間を確認するともうお昼近くになっていたので、簡単にオムライスでも作ろうかとキッチンに立った。

　ペタン、ペタン、ペタン。
　高科さんが階段を下りてくる足音だ。もうキリが付いたんだろうか？

「腹減った。もう飯できる？」

　キュウ～ン。

「白山さん？」
「あ、はいはい。すぐ出来ます。向こうで待ってて下さい」
「わかった」

　ああ、びっくりした。何だキユウンって。ドキドキした。

　ソファに腰掛けて、素直にご飯が出来上がるのを待っている高科さんをチラリと窺う。長髪ボサボサ頭の後ろ姿は、まるで毛足の長い大型犬みたい。
　失礼かな？　でも、最近はああいう素直な感じを可愛いと思っちゃうんだよね。

「お待たせしましたー」
「あ、オムライス」
「オムライス好きですか？」
「ああ。嫌いな奴は少ないだろ？」
「そうかもしれませんね。サラダもどうぞ」
「ありがとう」

　最初の頃と比べて、高科さんが食事の最中に研究の事を考える比率は減ってきている。とは言っても余り冗舌な方ではないようで、二人で向かい合って食事をしていても、会話はほとんど無い。だけど最近は高科さんが私の食事を美味しそうに食べてくれているのが分かるから、会話が無くてもそれ自体はあまり気にならくなっていた。

　ピコーン♪ 

　高科さんのスマホから通知音が鳴った。彼は一瞬食事の手を止めてメッセージを確認した後、また食事を再開した。
　お友達かな？

　基本研究の事以外興味のない高科さんは、職場で同僚と言える人たちとすら親しくしている風情がない。そんなかなり風変わりな高科さんに対して、誰がメッセージを送って来たのかと気になった。