不思議な縁に導かれました

らいち

文字の大きさ
54 / 64
第四章

私も好きです

しおりを挟む
「……どういう事ですか?」

 頭の中が真っ白になっている。高科さんの言っている意味が分からない。

「言葉通りだ。君と俺とは異母兄弟で、俺たちの父親は君のお父さんだ」
「…………」 

 高科さんの言っていることがどうにも理解出来なくて、ぽかんと彼の顔を見つめる。高科さんはそんな私に、苦笑いをよこした。

「突然言われても驚くよな。だけど多分これは事実だ」
「どう言う事なのか、はっきり説明して下さい」

 高科さんの表情はすこぶる真剣で、私を揶揄おうと思っているわけではないことは、はっきりと分かった。でもだからと言って、すぐに信じられる訳が無い。じっと高科さんを見つめると、彼は小さく息を吐き顔を上げた。

「分かった。ちゃんと説明する」

 高科さんの説明はこうだった。

―― 高科さんのお母さんと私の父は大学時代に付き合っていた。だが、その後父が私の母と出会ったことで、父は二人には内緒で長い間二股を掛け続けたのだそうだ。そして高科さんのお母さんは、私の父との間に子供を授かった。それが高科さんだ。
 だけどその後、私の父が高科さんのお母さんを捨て、私の母と結婚した。
 だから私と高科さんは異母兄弟になるのだと、高科さんはお母さんから聞かされていたらしい。

「子供の頃に、君の名前も聞かされていたんだ。あなたには妹がいるのよって」

 ……あ、それで。

「初めに自己紹介した時に、高科さん、私の名前に反応してましたよね」
「ああ。……だが、聞いていた苗字とは違っていたから、関係ないと思った」

 そこまで聞いて色々と合点がいった。私が亡くなった父の話しをした後から、確かに高科さんの態度が変わったんだ。だけど……。

「……高科さんのお母さんを疑うわけではないんですけど、それは何かの間違いだと思います」
「どうしてだ?」

「私の父は真面目で不器用で、母のことを心底愛していました。そんな父が、例え短い間だったとしても二人の女性を騙すだなんて……、そんなこと出来るわけありません」

「お父さんのこと、信じてるんだな」
「はい」

 まっすぐ前を見て、私はしっかりと頷いた。

「高科さん」
「何だ?」
「私も高科さんのことが好きです」

 抑えられないくらい大きくなっていた私の気持ちだ。受け入れてもらえず迷惑だと思われているのなら、ここから出て行くしかないのだとずっとそう思っていた。
  だけど違っていたと分かった途端、何も考えずにスルリと気持ちがこぼれた。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

10年前に戻れたら…

かのん
恋愛
10年前にあなたから大切な人を奪った

どうぞ、おかまいなく

こだま。
恋愛
婚約者が他の女性と付き合っていたのを目撃してしまった。 婚約者が好きだった主人公の話。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

短編【シークレットベビー】契約結婚の初夜の後でいきなり離縁されたのでお腹の子はひとりで立派に育てます 〜銀の仮面の侯爵と秘密の愛し子〜

美咲アリス
恋愛
レティシアは義母と妹からのいじめから逃げるために契約結婚をする。結婚相手は醜い傷跡を銀の仮面で隠した侯爵のクラウスだ。「どんなに恐ろしいお方かしら⋯⋯」震えながら初夜をむかえるがクラウスは想像以上に甘い初体験を与えてくれた。「私たち、うまくやっていけるかもしれないわ」小さな希望を持つレティシア。だけどなぜかいきなり離縁をされてしまって⋯⋯?

置き去りにされた転生シンママはご落胤を秘かに育てるも、モトサヤはご容赦のほどを 

青の雀
恋愛
シンママから玉の輿婚へ 学生時代から付き合っていた王太子のレオンハルト・バルセロナ殿下に、ある日突然、旅先で置き去りにされてしまう。 お忍び旅行で来ていたので、誰も二人の居場所を知らなく、両親のどちらかが亡くなった時にしか発動しないはずの「血の呪縛」魔法を使われた。 お腹には、殿下との子供を宿しているというのに、政略結婚をするため、バレンシア・セレナーデ公爵令嬢が邪魔になったという理由だけで、あっけなく捨てられてしまったのだ。 レオンハルトは当初、バレンシアを置き去りにする意図はなく、すぐに戻ってくるつもりでいた。 でも、王都に戻ったレオンハルトは、そのまま結婚式を挙げさせられることになる。 お相手は隣国の王女アレキサンドラ。 アレキサンドラとレオンハルトは、形式の上だけの夫婦となるが、レオンハルトには心の妻であるバレンシアがいるので、指1本アレキサンドラに触れることはない。 バレンシアガ置き去りにされて、2年が経った頃、白い結婚に不満をあらわにしたアレキサンドラは、ついに、バレンシアとその王子の存在に気付き、ご落胤である王子を手に入れようと画策するが、どれも失敗に終わってしまう。 バレンシアは、前世、京都の餅菓子屋の一人娘として、シンママをしながら子供を育てた経験があり、今世もパティシエとしての腕を生かし、パンに製菓を売り歩く行商になり、王子を育てていく。 せっかくなので、家庭でできる餅菓子レシピを載せることにしました

イケメンエリート軍団??何ですかそれ??【イケメンエリートシリーズ第二弾】

便葉
恋愛
国内有数の豪華複合オフィスビルの27階にある IT関連会社“EARTHonCIRCLE”略して“EOC” 謎多き噂の飛び交う外資系一流企業 日本内外のイケメンエリートが 集まる男のみの会社 そのイケメンエリート軍団の異色男子 ジャスティン・レスターの意外なお話 矢代木の実(23歳) 借金地獄の元カレから身をひそめるため 友達の家に居候のはずが友達に彼氏ができ 今はネットカフェを放浪中 「もしかして、君って、家出少女??」 ある日、ビルの駐車場をうろついてたら 金髪のイケメンの外人さんに 声をかけられました 「寝るとこないないなら、俺ん家に来る? あ、俺は、ここの27階で働いてる ジャスティンって言うんだ」 「………あ、でも」 「大丈夫、何も心配ないよ。だって俺は… 女の子には興味はないから」

冷酷総長は、彼女を手中に収めて溺愛の檻から逃さない

彩空百々花
恋愛
誰もが恐れ、羨み、その瞳に映ることだけを渇望するほどに高貴で気高い、今世紀最強の見目麗しき完璧な神様。 酔いしれるほどに麗しく美しい女たちの愛に溺れ続けていた神様は、ある日突然。 「今日からこの女がおれの最愛のひと、ね」 そんなことを、言い出した。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

処理中です...