不思議な縁に導かれました

らいち

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第四章

私も好きです 2

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「智未……」
「高科さん……」

 初めて名前を呼ばれて、気持ちが昂ぶった。だけど高科さんのその表情は、嬉しそうでもあり苦しそうでもあり、とても複雑なものだった。

「……調べてみませんか?」
「えっ?」

「私は絶対に、父が母を裏切るようなことをしていたとは思えません。だから親子鑑定……、でしたっけ。それをして、私たちが兄妹じゃないってことを証明しましょう」

「…………」 

 きっと賛同してくれると思ったのに、高科さんはたじろいでいた。

「俺は……、智未が俺の異母妹だと分かってからも、君を手放す気も無ければましてや誰かに渡すだなんて想像すら出来なかった。だから俺は君とは血なんか繋がっていないんじゃないかと思い込むことで、なんとか正気でいられたんだ」

「高科さん……」

 驚いた。まさか高科さんがそんな風に深く、私のことを思っていただなんて考えもしなかったから。

「もし……、もしちゃんと調べて、血が繋がっていると分かったらどうするんだ?」

 消え入りそうな声。そして初めて見る心もとない子供のような表情に、私の心臓が甘くキュウッと痛む。
 思わず高科さんの両手をギュッと握る。

「私も怖いです。怖いですけど……。だからといって、こんな宙ぶらりんのままなんて嫌です」

 高科さんの手を握ったまま、じっと彼の目を見つめる。彼は長い間逡巡した後、そっと小さく息を漏らした。

「……そう、だな。科学者の一人として、真実から目を反らすわけにはいかないな」
「はい」
「……近い内に、父に連絡してみる」

 溜息まじりにそう言った後、高科さんはソファに深く座った。
 その横顔から、彼の緊張と疲弊が感じ取られる。そんな表情を見るのは初めてで心配で、私はそっと窺った。

「智未、もっとこっちに来い」
「……はい」

 人一人分くらい空けて座っていたスペースを狭めて、少し近寄った。その様子を横目で見ていた高科さんが、私の腕を取って引き寄せる。

 ピッタリとくっつく身体。さらに肩を引き寄せられたので、私の頭は高科さんの肩にちょうど良く乗っかった。

「あっ……、あの……」
「何だ?」

 嬉しいけれど、慣れていないからものすごく恥ずかしい。

「……い、いいんですか?」

 とんちんかんな事を聞いてしまった。両思いだと分かったというのに、なに色気のないことを言っているんだろう。

「俺達が兄妹の確率は、無いに等しいんだろう?」
「もちろんです!」

 間、髪を容れずに答えたら、高科さんの表情が緩んだ。

「じゃあ、いいじゃないか。それに例え兄妹だったとしても、このぐらいの事は大した事はないだろう」
「……はい」
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