たとえ神様に嫌われても

らいち

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捕食する瞳

今はまだ知りたくない

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良く見るとその縁は刃物のように薄くなっていて、ちょっとでも触れたら切れてしまいそうだ。

「サモン」
 
ダークブラウンの長い髪をなびかせた、綺麗な女の人が立っていた。
凄く美人だけどその表情は冷たくて、出来ればお近づきになりたくないタイプだ。
 
……サモン?
 
今、大石君のこと、サモンって呼んだ?
 
大石君の腕の中で顔を見上げると、眉根を寄せてその女性を睨みつけていた。

「サモン、あなた私の忠告ちゃんと聞いてた? 何度も言ったわよね。人間に本気になるなって。……私がどういう立場にいるか、あなたも分かっているのでしょう?」

「報告……するのか?」
「したくないに決まってるでしょ! だから忠告に出て来てるんじゃないの」
 
この人は、人……じゃないか。魔女って事……?
何だか2人の関係って……、まるで……。

「したくないなら報告するな。俺はいづみを手放す気はないからな」
「サモン!」
 
魔女は凄い顔であたしを睨み、手を振り上げた。
その途端銀色に光る何かがすごい勢いでこちらに向かってきた。
ビックリして固まり大石君の腕にしがみつく。だけど大石君は平然とした顔で前を見ていた。
 
そしてその銀色に光る物がもう2メートルという所まで近づいてきたとき、先ほどの黒い刃がそれを思いっきり強く弾き飛ばした。
その2つの刃はまるで自ら意志を持っているかのように空中に浮いている。そして黒い刃は、あたしたちを守っているようにも見えた。

「思い直す気はないのね?」
「ああ」
「……わかったわ。今は魔王に報告はしない。その代りあなたの気持ちが変わるように……説得……し続けてあげる」
 
そして意味深に私を見て、空気に溶け込むように消えていった。

「はあ……っ」
 
完全に魔女の姿が消えた後、大石君は脱力するように大きく息を吐く。
そして苦く笑いながら視線をこちらに向けた。

「怖がらせて悪かったな」
「…………」
 
うん、とも、ううんとも言えなかった。
たださっきの魔女とのやりとりで、大石君は単なる悪魔ではないのではないかという疑問が湧き上がった。
見えない恐怖がすぐそこまで近づいてきているような気がして、どう返事をしていいのか分からない。と同時に、分かりたくないと現実から目を背けようとするあざとい自分の存在も感じていた。
 
顔を上げると、不安に揺れる大石君の瞳がある。そっと腕に触れると強い力で抱きしめられた。

「守るから。絶対にいづみの事は守るから……」
 
あたしの揺れる気持ちが不安だとでも言いたげな腕の力に、心が震える。

「うん。信じてる……」
 

強く抱きしめ返すことで、ありのままのあたしの気持ちが伝わってくれると良いと、そう思った。
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