17 / 82
捕食する瞳
離れて行かないで
しおりを挟む
じっと、表情を見逃さないように大石君を見つめていると、彼は自嘲するかのように薄く笑った後目を伏せた。
そしてそのままあたしの目は見ず、口を開く。
「……好きだよ。そんなつもりは無かったけどな……」
告白してくれているのに、その表情はまるで懺悔でもしているかのようだった。
「最初は面白半分だった。俺が出会ってきた人間の中で、嗅いだ事の無い甘い匂いのするお前がどんな奴なのかっていう興味だけだった」
「……甘いって、それ何度も言ってたけど、どういう意味なの?」
「どうって……」
一瞬言いよどむような顔をして、あたしの目をまっすぐに見た。
「本気になってもいいか?」
まっすぐ、まるで挑むような目で見られて、心臓が煽られる。
急に活発になったそれに、息が詰まりそうになった。
あまりにも真剣な表情に怖いと思った。
屋上で靡く、長い髪も思い出した。
だけど――
「うん」
それ以上に、大石君が自分から離れて行くことの方が怖いと思ってしまったんだ。
大石君はあたしの言葉に目を閉じて、言葉を紡いだ。
「俺は人間じゃない」
やっぱり、と思う気持ちと、ざわざわと騒ぎ始める気持ちと。相反する気持ちが同時にあった。
「……うん」と小さく頷く。
それを見て一瞬安堵の表情を浮かべた後、大石君はまた緊張感を纏ってあたしに向かう。
「俺は、魔界人だ」
「……ま、魔界……?悪魔ってこと……?」
想像もしていなかった恐ろしい言葉に、息を呑む。
そんなあたしを見て、大石君が目を細めた。
「まあ、そうだな」
少し悲しげな表情であたしを見ていた大石君だったけど、意を決したように言葉を続けた。
「怖いか?」
その言葉にハッとした。
今自分がどうしたいのか、大石君のことをどう思っているのかちゃんと言葉にしないといけないと思った。
目を瞑って自分の気持ちと向き合ってみる。
あたしは…、あたしは。
「怖い、凄く怖いよ。だけど……」
涙が溢れてきて言葉が詰まる。しゃくりあげながら、必死で言葉を紡いだ。
「お……大石……くんが、好き……。……ばに……いたい。一緒に居たいの……」
思いを言葉にすると、更に気持ちが膨らんで来る。
胸の中が熱くなっていっぱいになり、涙として溶けだしてきた。
もうどうでも良いと思った。隠さずに伝えることが、今のあたしの精一杯なんだから。
そんなあたしの気持ちに気づいてくれたのか、ゆっくりと大石君が近づいてくる。
優しくあたしを見つめていたその目が、一瞬宙を見て、慌ててあたしを抱き寄せた。
カツーン。
金属が激しくぶつかるような音が頭上でする。
ビックリして振り向くと、黒光りする長方形の小さなものが浮いていた。
そしてそのままあたしの目は見ず、口を開く。
「……好きだよ。そんなつもりは無かったけどな……」
告白してくれているのに、その表情はまるで懺悔でもしているかのようだった。
「最初は面白半分だった。俺が出会ってきた人間の中で、嗅いだ事の無い甘い匂いのするお前がどんな奴なのかっていう興味だけだった」
「……甘いって、それ何度も言ってたけど、どういう意味なの?」
「どうって……」
一瞬言いよどむような顔をして、あたしの目をまっすぐに見た。
「本気になってもいいか?」
まっすぐ、まるで挑むような目で見られて、心臓が煽られる。
急に活発になったそれに、息が詰まりそうになった。
あまりにも真剣な表情に怖いと思った。
屋上で靡く、長い髪も思い出した。
だけど――
「うん」
それ以上に、大石君が自分から離れて行くことの方が怖いと思ってしまったんだ。
大石君はあたしの言葉に目を閉じて、言葉を紡いだ。
「俺は人間じゃない」
やっぱり、と思う気持ちと、ざわざわと騒ぎ始める気持ちと。相反する気持ちが同時にあった。
「……うん」と小さく頷く。
それを見て一瞬安堵の表情を浮かべた後、大石君はまた緊張感を纏ってあたしに向かう。
「俺は、魔界人だ」
「……ま、魔界……?悪魔ってこと……?」
想像もしていなかった恐ろしい言葉に、息を呑む。
そんなあたしを見て、大石君が目を細めた。
「まあ、そうだな」
少し悲しげな表情であたしを見ていた大石君だったけど、意を決したように言葉を続けた。
「怖いか?」
その言葉にハッとした。
今自分がどうしたいのか、大石君のことをどう思っているのかちゃんと言葉にしないといけないと思った。
目を瞑って自分の気持ちと向き合ってみる。
あたしは…、あたしは。
「怖い、凄く怖いよ。だけど……」
涙が溢れてきて言葉が詰まる。しゃくりあげながら、必死で言葉を紡いだ。
「お……大石……くんが、好き……。……ばに……いたい。一緒に居たいの……」
思いを言葉にすると、更に気持ちが膨らんで来る。
胸の中が熱くなっていっぱいになり、涙として溶けだしてきた。
もうどうでも良いと思った。隠さずに伝えることが、今のあたしの精一杯なんだから。
そんなあたしの気持ちに気づいてくれたのか、ゆっくりと大石君が近づいてくる。
優しくあたしを見つめていたその目が、一瞬宙を見て、慌ててあたしを抱き寄せた。
カツーン。
金属が激しくぶつかるような音が頭上でする。
ビックリして振り向くと、黒光りする長方形の小さなものが浮いていた。
0
あなたにおすすめの小説
冷酷総長は、彼女を手中に収めて溺愛の檻から逃さない
彩空百々花
恋愛
誰もが恐れ、羨み、その瞳に映ることだけを渇望するほどに高貴で気高い、今世紀最強の見目麗しき完璧な神様。
酔いしれるほどに麗しく美しい女たちの愛に溺れ続けていた神様は、ある日突然。
「今日からこの女がおれの最愛のひと、ね」
そんなことを、言い出した。
10年引きこもりの私が外に出たら、御曹司の妻になりました
専業プウタ
恋愛
25歳の桜田未来は中学生から10年以上引きこもりだったが、2人暮らしの母親の死により外に出なくてはならなくなる。城ヶ崎冬馬は女遊びの激しい大手アパレルブランドの副社長。彼をストーカーから身を張って助けた事で未来は一時的に記憶喪失に陥る。冬馬はちょっとした興味から、未来は自分の恋人だったと偽る。冬馬は未来の純粋さと直向きさに惹かれていき、嘘が明らかになる日を恐れながらも未来の為に自分を変えていく。そして、未来は恐れもなくし、愛する人の胸に飛び込み夢を叶える扉を自ら開くのだった。
数合わせから始まる俺様の独占欲
日矩 凛太郎
恋愛
アラサーで仕事一筋、恋愛経験ほぼゼロの浅見結(あさみゆい)。
見た目は地味で控えめ、社内では「婚期遅れのお局」と陰口を叩かれながらも、仕事だけは誰にも負けないと自負していた。
そんな彼女が、ある日突然「合コンに来てよ!」と同僚の女性たちに誘われる。
正直乗り気ではなかったが、数合わせのためと割り切って参加することに。
しかし、その場で出会ったのは、俺様気質で圧倒的な存在感を放つイケメン男性。
彼は浅見をただの数合わせとしてではなく、特別な存在として猛烈にアプローチしてくる。
仕事と恋愛、どちらも慣れていない彼女が、戸惑いながらも少しずつ心を開いていく様子を描いた、アラサー女子のリアルな恋愛模様と成長の物語。
Re.start ~学校一イケメンの元彼が死に物狂いで復縁を迫ってきます~
伊咲 汐恩
恋愛
高校三年生の菊池梓は教師の高梨と交際中。ある日、元彼 蓮に密会現場を目撃されてしまい、復縁宣言される。蓮は心の距離を縮めようと接近を試みるが言葉の履き違えから不治の病と勘違いされる。慎重に恋愛を進める高梨とは対照的に蓮は度重なる嫌がらせと戦う梓を支えていく。後夜祭の時に密会している梓達の前に現れた蓮は梓の手を取って高梨に堂々とライバル宣言をする。そして、後夜祭のステージ上で付き合って欲しいと言い…。
※ この物語はフィクションです。20歳未満の飲酒は法律で禁止されています。
この作品は「魔法のiらんど、野いちご、ベリーズカフェ、エブリスタ、小説家になろう」にも掲載してます。
溺愛彼氏は消防士!?
すずなり。
恋愛
彼氏から突然言われた言葉。
「別れよう。」
その言葉はちゃんと受け取ったけど、飲み込むことができない私は友達を呼び出してやけ酒を飲んだ。
飲み過ぎた帰り、イケメン消防士さんに助けられて・・・新しい恋が始まっていく。
「男ならキスの先をは期待させないとな。」
「俺とこの先・・・してみない?」
「もっと・・・甘い声を聞かせて・・?」
私の身は持つの!?
※お話は全て想像の世界になります。現実世界と何ら関係はありません。
※コメントや乾燥を受け付けることはできません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
俺に抱かれる覚悟をしろ〜俺様御曹司の溺愛
ラヴ KAZU
恋愛
みゆは付き合う度に騙されて男性不信になり
もう絶対に男性の言葉は信じないと決心した。
そんなある日会社の休憩室で一人の男性と出会う
これが桂木廉也との出会いである。
廉也はみゆに信じられない程の愛情を注ぐ。
みゆは一瞬にして廉也と恋に落ちたが同じ過ちを犯してはいけないと廉也と距離を取ろうとする。
以前愛した御曹司龍司との別れ、それは会社役員に結婚を反対された為だった。
二人の恋の行方は……
あなたがいなくなった後 〜シングルマザーになった途端、義弟から愛され始めました〜
瀬崎由美
恋愛
石橋優香は夫大輝との子供を出産したばかりの二十七歳の専業主婦。三歳歳上の大輝とは大学時代のサークルの先輩後輩で、卒業後に再会したのがキッカケで付き合い始めて結婚した。
まだ生後一か月の息子を手探りで育てて、寝不足の日々。朝、いつもと同じように仕事へと送り出した夫は職場での事故で帰らぬ人となる。乳児を抱えシングルマザーとなってしまった優香のことを支えてくれたのは、夫の弟である宏樹だった。二歳年上で公認会計士である宏樹は優香に変わって葬儀やその他を取り仕切ってくれ、事あるごとに家の様子を見にきて、二人のことを気に掛けてくれていた。
息子の為にと自立を考えた優香は、働きに出ることを考える。それを知った宏樹は自分の経営する会計事務所に勤めることを勧めてくれる。陽太が保育園に入れることができる月齢になって義弟のオフィスで働き始めてしばらく、宏樹の不在時に彼の元カノだと名乗る女性が訪れて来、宏樹へと復縁を迫ってくる。宏樹から断られて逆切れした元カノによって、彼が優香のことをずっと想い続けていたことを暴露されてしまう。
あっさりと認めた宏樹は、「今は兄貴の代役でもいい」そういって、優香の傍にいたいと願った。
夫とは真逆のタイプの宏樹だったが、優しく支えてくれるところは同じで……
夫のことを想い続けるも、義弟のことも完全には拒絶することができない優香。
偉物騎士様の裏の顔~告白を断ったらムカつく程に執着されたので、徹底的に拒絶した結果~
甘寧
恋愛
「結婚を前提にお付き合いを─」
「全力でお断りします」
主人公であるティナは、園遊会と言う公の場で色気と魅了が服を着ていると言われるユリウスに告白される。
だが、それは罰ゲームで言わされていると言うことを知っているティナは即答で断りを入れた。
…それがよくなかった。プライドを傷けられたユリウスはティナに執着するようになる。そうティナは解釈していたが、ユリウスの本心は違う様で…
一方、ユリウスに関心を持たれたティナの事を面白くないと思う令嬢がいるのも必然。
令嬢達からの嫌がらせと、ユリウスの病的までの執着から逃げる日々だったが……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる