たとえ神様に嫌われても

らいち

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サモン

それでも好きなの

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誰かに何度も名前を呼ばれて意識が浮上する。
うっすらと目を開けると、心配そうな顔をした大石君があたしをじっと見ていた。

「……夢?」
 
大石君が傍にいる。しかも彼の腕の中にいる。
夢なら覚めて欲しくないとそっと彼の腕に触れた。触れてリアルなその感触に、もう一度大石君の顔を見上げると、彼が安堵のため息を吐いた。
 
大石君が戻って来てくれた。戻ってきてくれたんだ…。

「大石君……。大石君……」
 
あたしは大石君が戻ってきてくれたことがただただうれしくて、彼の背中に腕を回した。

「大丈夫だ」
 
大石君はあやすようにあたしの背中を撫でてくれた。だけどすぐに体を離そうとする彼にびっくりして、慌ててギュッとしがみ付いた。

「いや。絶対離れない……。ヤダ……」
 
だけど彼は、そんなあたしにため息を吐いた。

「お前……怖いんだろう、俺が。いづみがいつも見ているこの姿は、俺の本当の姿じゃない。……だいたい俺は、お前にすべてを見せているわけじゃないんだ」

――すべてを見せているわけじゃない。
 
その言葉に、一瞬体が震える。だけど……。

「それでも、いい……」
「いづみ……」
 
あたしの大石君への気持ちは本当に複雑で、何かあるたびに戸惑ったり後ずさったりしている。だけどそれでも、まるで赤い糸で繋がっているんじゃないかと思いたくなるくらい、どんなに彼を怖いと思っていても決して嫌いにはなれないんだ。
それどころかこうやって、会いたくて会いたくて仕方なくなる。
 
大石君はフーッと細く息を吐いたかと思うと、目を閉じて体を変貌させた。
捩じれた角が伸びて羽が生える。耳も尖り、大きくなった。
 
あの時近づけなかったあたしを試しているのかもしれない。大石君は、あたしをじっと見ていた。
 
大石君を掴む腕に、力を込めた。
 
その姿の彼は、やっぱりどうしてもまだ怖い。だけどそれでもあたしは煩く喚く心臓を一生懸命無視して、大石君の胸に頭を預けた。

「知ってる……。もうちゃんと知ってるから」
 
一瞬、彼の体がピクリと動いた。そしてため息を吐く。


「しょうがないな……。ホント馬鹿だ」
 

そうつぶやいた後、大石君は魔力を封印した人間の姿に戻ってくれた。その姿を見てあたしは思わずホッとして、体の力が一気に抜けてしまった。
 
そんなあたしの様子に、彼は苦く笑っていた。
あたしが一生懸命強がっている事に、気づいてしまったのかもしれない。
 
それでも、傍に居てくれるよね?

そんな思いで彼を見つめていると、優しく笑ってあたしを抱き寄せてくれた。
 
 
傾いた夕日がオレンジ色に空を包む。綺麗な色に、切なくなった。
 

こんなに誰かを好きになった事なんてない。
例え先が見えなくても、自分から手を離す事なんて、もう出来そうになかった。
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