貴方から逃げます

まる

文字の大きさ
5 / 8

代償

しおりを挟む
 明け方、荷物を持って部屋を出ると、そこには女中が立っていた。

「お部屋にお戻りください」

 何故、こんな時間に部屋の前にいるの……。私が逃げると予想して、お兄様が見張りを付けていたの?

 ここで無理に逃げるより、隙を見て逃げる方がいいよね。部屋に鍵をつけられたりしたら困るもの。

「わかったわ。少し疲れているから、朝食は部屋に運んで。手間取らせてごめんなさい」

 大人しく部屋に戻ったけれど、お兄様と顔を合わせたくない。


 30分ほどすると、雨が降ってきた。もし、あのまま逃げ出していたら、傘も持たない私はずぶ濡れだったわね。今日出ていけなかったのは、不幸中の幸いなのかしら。そうやって、前向きに考えないと、やってられない。

 コンコン

「朝食をお持ちしました」

 女の人の声で安心してドアを開けたけれど、そこにはお兄様もいた。

 急いでドアを閉めようとしたけれど、お兄様に押し返された。

「後は俺がやる」
「かしこまりました」
「待って!!」

 お兄様と2人にはなりたくない!

 呼び止めたって振り返ってもくれない。ここに私の味方はいない。

「何か用ですか?」
「逃げようとしたと聞いた」
「そんな事はしません」

 そこまて私を追い詰めているのはお兄様なのに、どうして平然とそんな事が言えるの……。

「外で働く許可をやろう」
「っ本当ですか!?」
「ああ」
「ありがとうございます」

 これでお兄様と離れられる!

「ただし、条件がある」
「条件?」
「今夜、俺の部屋へ来い」
「お話があるのでしたら、今お伺いします」
「話などない。昨日の続きを、俺の部屋でするだけだ」
「……」
「本気で俺から逃げたいのであれば、一夜を共にするくらい簡単だろう」

 どうしてこんなに酷い事を言えるの……。

「私が嫌いなら、放り出せばいいじゃない……。そうやって追い詰めて、何がしたいの?貴方のお父様を殺したのは私だし、貴方の愛するお母様を殺したのも私だから、恨んでるのでしょう」

 ここから出してもらえない生活が続くくらいなら、もういいわ。

「すぐにでも、貴方の好きにしてください。この家から1秒でも早く出ていきたいので」
「そうしたいが仕事がある。今日の夜11時に部屋に来い」

 そう言い残して、お兄様は部屋を出て行った。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

淫紋付きランジェリーパーティーへようこそ~麗人辺境伯、婿殿の逆襲の罠にハメられる

柿崎まつる
恋愛
ローテ辺境伯領から最重要機密を盗んだ男が潜んだ先は、ある紳士社交倶楽部の夜会会場。女辺境伯とその夫は夜会に潜入するが、なんとそこはランジェリーパーティーだった! ※辺境伯は女です ムーンライトノベルズに掲載済みです。

ブラック企業を退職したら、極上マッサージに蕩ける日々が待ってました。

イセヤ レキ
恋愛
ブラック企業に勤める赤羽(あかばね)陽葵(ひまり)は、ある夜、退職を決意する。 きっかけは、雑居ビルのとあるマッサージ店。 そのマッサージ店の恰幅が良く朗らかな女性オーナーに新たな職場を紹介されるが、そこには無口で無表情な男の店長がいて……? ※ストーリー構成上、導入部だけシリアスです。 ※他サイトにも掲載しています。

赤ずきんちゃんと狼獣人の甘々な初夜

真木
ファンタジー
純真な赤ずきんちゃんが狼獣人にみつかって、ぱくっと食べられちゃう、そんな甘々な初夜の物語。

世間知らずな山ごもり薬師は、××な騎士団長の性癖淫愛から逃げ出せない

二位関りをん
恋愛
平民薬師・クララは国境沿いの深い山奥で暮らしながら、魔法薬の研究に没頭している。招集が下れば山を下りて麓にある病院や娼館で診察補助をしたりしているが、世間知らずなのに変わりはない。 ある日、山の中で倒れている男性を発見。彼はなんと騎士団長・レイルドで女嫌いの噂を持つ人物だった。 当然女嫌いの噂なんて知らないクララは良心に従い彼を助け、治療を施す。 だが、レイルドには隠している秘密……性癖があった。 ――君の××××、触らせてもらえないだろうか?

新人メイド桃ちゃんのお仕事

さわみりん
恋愛
黒髪ボブのメイドの桃ちゃんが、働き先のお屋敷で、旦那様とその息子との親子丼。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される

clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。 状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

十歳の花嫁

アキナヌカ
恋愛
アルフは王太子だった、二十五歳の彼は花嫁を探していた。最初は私の姉が花嫁になると思っていたのに、彼が選んだのは十歳の私だった。彼の私に対する執着はおかしかった。

処理中です...