のあと星の箱庭🐭チューチュールート

くりくま

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6話

のあと星の箱庭🐭チューチュールート6話

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目が覚めると、見慣れない倉庫のような場所にいた。辺りを見回して、自分が鳥籠のような大きな檻に入っているのがわかった。出る方法を探そうと起き上がった瞬間、気を失う前に聞いた声が聞こえた。

「目が覚めましたか、お姫様」
声の主は、黒と緑の服に身を包んだ長い黒髪の人物だった。チューチューくんみたいなマフィアっぽい格好をしている。声や背格好からは男の人なのか、女の人なのかは判断が出来ないけど、危ない人だということだけはわかる...。微笑んではいるけど、全く暖かみを感じない...。まるで蛇に睨まれた蛙になった気分...。

「はじめまして。あの車に乗っていたということはASIPからスクィット・チューチューの話をお聞きになったのでしょう?私はその話に出てきた悪いマフィアのアブロガーレです。」

藤瀬さんから話を聞いた時は、そんな酷いことをする人がこの世にいるのだろうか?と思っていた。でも、目の前の人物の異常な雰囲気を見ると自分の理解を超えた人っていうのは居るんだ、と思った。目の前に居るだけで体が震えて逃げ出したくなる。それなのに体が強張って動かない...自分が冷たい嫌な汗をかいているのがわかる。

「ああ、返事はしなくていいですよ。どうせ貴女は間も無く自分の意思では喋れなくなります。私の精神支配の能力はとても便利なのですが、支配するまでが少し面倒でしてね。対象と一定時間の会話が必要になるんです。」

なんとか声を出そうとするけど、恐怖で体が強張って声が出ない...。...怖い!怖い!近くにいたく無い!

「震えていますね、怖いんですよね。大丈夫ですよ。暫く会話していれば人形になって恐怖を感じなくなります。」
怖い、と感じていることが私がまだ人間だと証明する証になるなんて皮肉なものだ。

「貴重なヒーラー能力者の人形が欲しかったのですが、アルカ・ステラ学園の結界が厳しくてね。貴女が学園外に出る機会を伺っていたんです。」
「そんな...」

「お姫様、美しい夢から覚める時間ですよ。貴女は今日から私の為にヒーラー能力を使う人形になるんです。」
少しでも離れなきゃ!と頭ではわかってるけど、体が動かない。
...もう、どうでもいいかもしれない...。
という思考が頭をよぎったその時。

バーン!と銃声がして私とアブロガーレの間に弾が撃ち込まれ、アブロガーレが後ろに避けた。
「【のあ】!」
銃を撃った声の主を見ると、チューチューくんだった。その顔を見た瞬間、安心して、自分の感情が戻ってきた。
「チューチューくん!」
「スクィット、私はここに来るよう指示していない。去れ。」

藤瀬さんの話を思い出した。藤瀬さんは、チューチューくんはこの人に支配されていた、と言っていた...。
ということは、きっとこの人の命令には逆らえない...!私のせいで、また最初の頃のような、人形みたいになっちゃうのかな?!そんなの嫌だ!

でも、

チューチューくんはアブロガーレに向かって銃を構えた。

「俺はもう貴方の人形じゃない。貴方の命令は聞かない。【のあ】を解放しろ。」
「おやおや随分支配が解けているな。お姫様のヒーラー能力は相当高いようだ。」


私には早すぎて全然見えなかったけど、いつの間にかアブロガーレも銃を出して、映画の中でしか見た事ないような光景が繰り広げられた...。弾が反射してそこら中からカンカンという音が響き渡る。
こ、これ現実かな...?夢...かな?

あまりに非現実的な光景に現実逃避していると、カン!と音がして弾みたいなものがこっちに飛んできた?!と思って思わず屈むと、どこからかねずぬいさんたちが「チュー!」と出てきて弾を弾いてくれた。チューチューくん、撃ち合いながら私のことも守ってくれてるんだ...。
「私に銃まで向けるとはな。支配が解けすぎだ。仕方ない、順番を変えよう。」

そう言って、私の方に銃口を向けてきた。
銃が、私に、向けられて、る...
恐怖で体が更に強張って、小刻みに震える。心臓が張り裂けそうなくらい脈打っている。本当に怖い時って、声とか、出ないんだな。

「スクィット、銃を捨ててそこの檻に入れ。先にお前の再支配を進めることにする。入らないとお姫様を撃つ。」
「ハッタリだな。貴方は【のあ】に価値を見出してる、傷つけることはしない。」

「...ヒーラー能力とは、大抵手があれば充分に使える。足の一本くらい無くても支障は無い。」
恐ろしい会話に背筋が凍る。
その言葉を聞いてチューチューくんは言われた通り、銃を捨てて檻に入ってしまった。
私、足手纏いになってる...私のせいでまたチューチューくんがこの人に支配されちゃう!

「チューチューくん!逃げて!」
「おやおや、お姫様は王子様のお顔を見て元気になってしまったようだ」
「チューチューくんも私も貴方の人形なんかじゃありません!う、撃つなら撃ちなさい!銃なんて怖くないんだから!」
我ながら声が震えているし、足もガクガクしてしている。撃たれたら痛いんだろうな...血が出るんだろうな...と想像してしまう...。

「やれやれ、人形の管理も面倒だな。1体づつならもっと楽なんだが」

「...ハハハ!」
「...スクィット...何が可笑しい?」
「俺の支配度を見て貴方ならこうすると思っていた。【のあ】のおかげで貴方の気が逸れて準備が整った。」

ドサドサドサッ!

突然、
天井から、大量の箱が落ちてきた。

皮肉にも硬い鉄の檻の中に居たチューチューくんと私は守られたけど、アブロガーレは下敷きになってしまった。すかさず、ねずぬいくんたちが下敷きになって気絶したアブロガーレに纏わりつき身体をぐるぐる巻きにしていく。そんなこと思ってる場合じゃないんだけど、ガリバー旅行記みたい...
山盛りの箱の中から、一匹のねずぬいくんが出てきた。鍵を見つけたようで、チューチューくんに渡して私の檻が開けられて、

「【のあ】!」
ぎゅっと抱きしめられた。


「怖い思いをさせてしまってすまなかった...」
「だいじょ...う、うわーん!」
大丈夫、と言おうとしたのに言葉が上手く出なくて、ぎゅっと抱きしめられて安心してしまって涙が止まらなくなった。
思ったより自分でも無理をしていたみたい。
暫く抱きしめられたまま泣き続けた。

「ヒック、ヒック...急に泣いちゃってごめんなさい、もう大丈夫...」
「無理しなくていい、もう少しこうしていよう。怖い目に合わせてしまってすまない...」
「うっ、そんなこと、ない...助けに、来てくれてありがとう...」

「...俺は...【のあ】のこと、すぐに助けに行く判断ができなかった」
抱きしめてくれながら、チューチューくんが震える声で話してくれた。

「すまない、怖かったんだ、アブロガーレが、心の底から」
「...うん」
「でも、【のあ】と会ってから毎日新しいことがいっぱいで、楽しくて、【のあ】がいなくなってしまうのはもっと怖いと思った」
「うん」
その時、更にぎゅっと抱きしめられた。さっき抱きしめられた時は頼もしい男性に見えたのに、いつもの堂々とした軽快な喋り方からは考えられない。ぽつり、ぽつりと少しづつ本音を話す姿は小さな子どもみたいだった。

「無事で良かった...」
抱きしめられた状態で小声で言われたその一言が、とても心地よかった。
「うん」
安心するなあ...。

「あー、青春してるところすまん!少し【のあ】さんに怪我が無いか確認させてもらっても良いか?」
いつの間にか来ていた藤瀬さんが横に立っていた。

「父さん!いつの間に来たんだ!」
「ねずぬいがアブロガーレを捕らえたと報告してくれてな!ASIPの私の部隊を出動させた。いやー...若人の青春が終わるまでおじさんたちは待とうと思っていたんだが、リオたちが青春してる間にアブロガーレの拘束と周りの調査が終わってしまってなー!あとの仕事が【のあ】さんの精神支配が進んで無いかと怪我が無いか確認なんだ!すまんな!」

改めて、客観的に今の自分たちを“青春”と表現されて顔が真っ赤になってしまう。恐怖と安心感でそれどころじゃ無かったけど、確かに凄く長い間抱きしめてもらった気がする。

藤瀬さんと部下らしき人たちに、名前は言えるかとか数はわかるかとか痛むところは無いかとか、色々なことを聞かれた。私に問題が無いとわかると、学園まで車で送ってもらえることになった。遠慮しようと思ったけど、こんなことがあった後なので絶対に送る、とチューチューくんに押し切られてしまった。

学園の前に着いて、お礼を言って車を降りるとチューチューくんがついてきた。
「チューチューくん?!ここまでで大丈夫だよ!ありがとう。」
「寮の部屋の前まで送る」
「いいよ!そんな!」
「頼む、送らせてくれ」
手を握られて、お願いするような目でジッと見つめられてしまった。うっ、この美しいお顔に見つめられたら断るなんてできない...。
結局、部屋の前まで送ってもらった。
...正直、安心しちゃった...。あんな目に遭った後だから、本音を言えば1人で帰るのは心細かった。部屋の前まで手を繋いで歩いて、部屋の前に着いた。
部屋に着いたからもうお別れしなくっちゃ。わかってるのに、手を離したくない気持ちが出ちゃって、部屋のドアの前に着いたのにずっと立ち尽くしてしまった。
「...【のあ】、このねずぬいを置いていく。何かあったらねずぬいに言ってくれ。すぐに駆けつける。」
「え、でも」
「本当は今晩はずっと側に居たいが...俺がずっと居たらゆっくり休めないだろうからな。」

手が離されて、もう一回ぎゅっと強く抱きしめられた。
「おやすみ、【のあ】」


私も、本当は、今晩は一緒に居たかった。離れたくないって思った。

手に残されたねずぬいくんをぎゅっと抱きしめる。
抱きしめられた時、あの時は余裕が無かったけど、大きかったなあ...。私より長い睫毛だし大きなキラキラした目だけど、男の子なんだなあ...。
体は泥のように疲れているけど、心はなんだか満たされていた。
早く明日にならないかな、会いたいなあ...。
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