業火のポニーテール~ポニテ大好き少年は、のじゃろりドラゴン幼女と合体しTSヒーローとなる~

あむあむ

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「GUKYURAAAAaaaッ!!」

 変身完了と同時に、縫合獣は飛びかかってきた。
 突進を横に飛んで回避、すると奴はそのまま空へと飛び立っていく。

「空中から攻撃しようってのか」
(ははは、こちらが飛べぬとでも勘違いしておるのではないか?)
「だろうな。今の俺達に不可能は無いってのに」
(あぁ……見せつけてやろうぞ!)

 グッと背中に力を入れ、魔力を移動させていく。
 ベガルスにいた時の妾の力を、このアマノガワでも解放させる。
 すると、背中の骨がグッと出っ張り少量の炎が噴き出し……一気に巨大な翼が生えた。
 赤い鱗と真っ白な膜……まさに龍の翼じゃ。

「こりゃぁいいや、炎の節約になるな」
(手騎と妾の心が1つになればなるほど、ベガルスでの力を引き出す事ができるからの。もう少ししたら尻尾も生えるかもな)
「尻尾はもう十分だろ!」
(……では頭からツノが生える……ってのはどうじゃ?)
「んッ……ツノとポニテのコントラストか、見てみたい……かもしれないな」
(よし、じゃあもっと心を合わせていくぞ!)
「あぁ……俺達は一心同体だからな!」

 グッと拳を握り、空で待ち構える不死鳥を見上げた。
 そして地面を蹴り、翼を羽ばたかせた。
 足は地から離れ、急加速すると一気に接近する。
 いつもならば、足から炎を噴出していた為、無駄な魔力を消費していたが……これで攻撃に専念する事ができるという訳じゃ。
 肉薄する妾達に向かって、奴は鋭い羽を放出してきた。

(避けるスペースが無いぞ! どうする?)
「わかってるだろ? ……だったら————」
「「燃やし尽くすまでじゃ!」」

 全身を炎で包み込み、薄い膜を張る。向かってくる羽は、直撃の前に燃え尽きていった。
 もはや、纏う火炎は奴のものを凌駕し圧倒的力量差を見せつける。
 こんな小鳥、敵では無い。
 しかし、1つ問題があった。

(手騎、知らぬと思うが奴は——)
「倒しても復活するんだろ!?」
(ッ!? な、なぜわかったのじゃ!?)
「相手はどこをどう見ても不死鳥だろ! そんな事は分かりきっているだろ」
(……いや、まぁ……そうじゃが……)
「この、俺が、その程度の事、問題に、すると、思うかぁ!」

 異常に自信満々じゃ。

(何か策でもあるのか?)
「ありありのありまくりだぜ!」
(で……その策とは!?)

 なんとなく察したが、一応聞いてみる。

「燃やし尽くすッ!!」 
(それはて無策なのでは……? 前に言ったことを覚えておるか?)
「無策とは最高の手段だと知れ! だろ?」
(その通りじゃ!!)

 帰ってきた。のすたるじっくな気持ちになるのぉ。
 羽を全て焼き切り、隙だらけの懐に潜り込むと全力で爪を振るう。
 体内に突き刺さる三本の爪は「GYAAA!」と鳥を叫ばせる。
 そのまま身を反転させ回し蹴りを頭に直撃させ、引っ張るように振り下ろした。

「うおらぁ!!」

 強烈な蹴りは鋭い衝撃を生み、不死鳥は勢いよく地面へ叩きつけた。
 じゃが、妾らの猛攻が休む事は無い。
 空を蹴り、地に落ちた敵に向かって急降下……そのスピードを利用して、飛び蹴りをかます。
 身を捩り、避けようと必死になる敵はギリギリのところで致命傷を避けた。
 だが代わりに翼に蹴りが直撃する。
 ただの蹴りでは無い、業火の蹴りだ。

「燃えろッ……炎よ!」
「KUKAAAA」
「まだまだぁー!!」

 突き刺さった足爪から、紅蓮の炎が溢れ、蒼炎の翼を焼き切る。
 修復不可能な程、粉々————いや、消し炭にした。
 そして竜馬は動けなくなった不死鳥に抱きつき、全身に力を込めたのだ。

「これが、俺の……愛ダァ!!!!」

 自身も燃やし尽くさんとする炎。全身を燃やし、不死鳥を巻き込んでいく。
 天にも登る火柱が高く、高く上がった。
 連鎖的に小さな爆発が発生し、次々と奴の部位を消し去っていく。
 全力、ガムシャラ、情熱……そんな言葉が相応しい技だ。

「「必殺——爆心地、だぁぁぁぁ!!」」

 竜馬と一緒に、限界まで叫んだ。
 もう、不死鳥の鳴き声は聞こえない。
 ただ、無限に溢れる炎が視界を真っ赤に染め上げ、妾達だけの空間を作り出す。
 楽しい。
 やはり……竜馬と共に戦うのは、楽しい。
 戦闘をそのように思うのは不謹慎だと思うが、最高の気持ちだった。

「……ッ……ぷっはぁ!」
(やったな、手騎)

 十分、長時間の攻撃が終わり竜馬は大きく息を吸った。
 周辺は真っ黒に焦げ、敵の復活する気配も無い。
 本当にこんなアホみたいな方法で倒しきった。
 流石は我が相棒じゃ。

「っと……イラ、ちょっと変身を解除してくれないか?」
「ん? 当然じゃ」

 戦闘が終了したのじゃ。
 わざわざお願いする必要もなかろうに。
 竜馬に言われた通り、妾は炎に戻り、そして体から離れた。

「さ、戻ったぞ。なんじゃ、改まって」
「……緊急事態だったから、しっかりと言えて無い。ケジメをつけたいんだ」
「はて?」
「本当に……申し訳ありませんでした!!」

 分離した瞬間、即座に一歩距離を取り飛んだかと思えば勢いよく土下座をかます。
 街中に響き渡る爆声で謝罪の言葉を叫ばれた。
 妾の方が謝る方なのじゃが……うむ、これ以上どっちが悪いだの言い争いは事を歪めかねない。素直に聞いておくとしよう。
 しかし……その、なんというか合体をし過ぎて移ってしまったのかの。
 竜馬のしているポニーテールという髪型が、やけに愛おしく見える……クク、手騎の趣向、少しだが理解したぞ。

「うむ、よかろう! だが、今後このような情けない姿を見せる事は許さぬぞ!」
「……ありがとう、イラ」
「あぁ、行こう。共に靡を救おうぞ」

 下を向く相棒に向かって手を差し伸べると、直ぐにその手をとって立ち上がる。
 ギュッと強めの握手は、意思の強さを表しているようだ。
 雨降って地固まる……諺という文化は良くできておるな。

「場所はわかっておる。時間は少ない……直ぐに向かおうと思うのじゃが、準備はよいか?」
「大丈夫だ。イラこそ大丈夫なのか?」
「……少し腹が減ったかの」

 三日三晩戦い続け、実のところ空腹の限界だった。
 今までは孤独感と戦闘の緊張感、そして消失感で全く感じなかったが手騎が来た事により安心したのか、言葉を放つと同時に「ぐぅ~」と情けない音が鳴った。

「ククック……イラ、そんな事だろうと思って」

 少し離れた位置にリュックサックが置かれており、竜馬はそれを取りに行くと中身を取り出し戻ってきた。

「おぉ、これは」
「急いでた上に、俺もあんま料理とかした事なくてさ……こんなんで悪りぃけど、腹の足しにはなると思う」

 差し出したのは、ラップに包まれたまん丸の握り飯だった。
 中身の具が隠しきれておらず、鮭や昆布などが見えている。
 個数にして十個以上はあるだろうか……なるほど、美味そうだ。

「最高じゃ、腹がへっては戦は出来ぬ……頂くぞ!」
「……本当は三角にしようと思ったんだが、難しいもんだな。見栄えが悪くなっちまった。不味かったら残してくれ。一度アルタルスに戻って買ってくるから」
「何を言う。一生懸命作ってくれた飯を誰が不味いと言おうか。主の努力を否定する者がおるのであれば、妾は其奴を許しはせん」

 奪い取るように握り飯を貰うと、急いでラップを剥ぎ取り被りついた。

「美味い、美味いぞ! もう一つ寄越せ」
「ぉ、ぉおお!」
「大変美味じゃ、妾は嬉しいぞ。ほれ、手騎も食わんか!」
「ん、じゃあ俺も頂くぜ」

 妾達は一度地べたに座り、久しぶりの夕食にありついた。
 場所は関係無い、こうして相棒と同じ物を食べる事が大事なのだ。
 少々行儀は悪いが、頬一杯に握り飯を頬張った。

「んー、んん、んー!」
「ん……んんッ! ッく……そうじゃな、猶予は後三日ある。じゃが、強制的に並行世界の自分を一つにする儀式、結合の儀は準備が整えば直ぐにでも発動できるのじゃ」
「ん……ごくッ、結合の儀か。それって大掛かりな装置でも必要なのか?」
「装置というよりも、魔力を結ぶのに時間がかかる……といった感じか。魂を糸で結ぶわけでは無く、心と心を一つにするわじゃから」
「俺達の合体と同じってイメージでいいか?」
「その言い方にすると、妾か竜馬……どちらかの心が無いといった方が伝わりやすいな」
「……死ぬのか?」
「死んではおらぬ。じゃが、実質死んだも同然じゃ。見ることも、聞くことも、感じることも出来ぬ……そんな状態にさせられるわけじゃからな」

 その言葉を聞き、手騎は険しい表情を見せた。
 ギリっと歯軋りを鳴らし、拳を地面に叩きつける。
 妾も同じ気持ちじゃった。

「あいつの夢を叶える為に、靡は生きてきた訳じゃねぇ……絶対に助けるぞ」
「愚問じゃな。当然の事を聞くで無い……時に手騎よ?」
「なんだ?」
「主にとって靡はどういう存在なのじゃ?」
「どういうって……幼馴染で一番の理解者、そして大事な友人だ」

 我が手騎はやはり少々素直じゃ無い部分もあるようじゃな。

「では靡は手騎の事をどう思っておるのじゃろうか……の?」
「勿論、同じに決まってんだろ。俺の為にあそこまでしてくれるんだ、大事な友達だと思ってくれている筈さ」
「……ッふぅ~」

 我が手騎は鈍感系主人公のようじゃな。

「まぁよい、この戦いが一つのキッカケになればいいのじゃがな」
「……? お前一人で何言ってんだ?」
「此方の話しじゃ、気にするでない……さて竜馬、準備はいいか?」
「あぁ! 満腹だぜ」
「妾もじゃ、とても美味かったぞ」
「お粗末様だ」
「じゃあ行こうか……いざ、最終決戦へ」
「応ッ!」

 頬についた米粒を親指で拭い立ち上がると、視線を合わせてハイタッチ。
 視線を合わせ、決意を確認し合い歩き出した。
 妾達も不死鳥のように一度死んでから蘇る事で一回り大きくなった。
 もう、気持ちが離れることは決してない。
 これで織姫との因縁も断ち切る事ができるだろう。
 そうなれば……妾と竜馬の関係も……いや、今はそんな事考えたくはないな。
 今は希望だけを見つめていたい。
 二人ならば出来ないことなど何もない。
 さぁ行こう、最終決戦に。
 妾達の出会いの場へ————
 
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