18 / 22
第四話
夏の始まりは官能的だ2
☆☆☆
スキップしながら前を歩く茜。
ご機嫌な背中を見ながら、俺はまだ今朝クラスメイト達から言われた事を考えていた。
「ふふん、あの店も中々美味しかったね!」
「あぁ、そうだな……」
放課後、彼女と立ち寄った新しいカフェ。
お洒落な店内にも入り慣れ、緊張することはなくなっていた。
しかし、結局今日も味が分からなかった。
目の前でニコニコしてる彼女を見ていると、心が騒ついた。
「もー何かリアクション薄くない?」
こちらに振り向き頬を膨らませながら問いかけて来る茜。
「いや、そんなことないよ」
「美味しくなかった?」
「美味しかった美味しかった」
「心がこもってない! ほんと、楠って隠し事苦手だよね」
「か、隠し事なんてしてないぞ!?」
「ほら、そーやって狼狽えるところとか」
「ぅ……でも、本当に隠し事とかじゃない」
「じゃあ、何?」
──聞きたい事がある。
とは、素直に言えなかった。
茜が言えるようになった時、自分から教えてくれると言ってたから。
「……別に、なんでもない」
「そっか」
茜も、あの日の事があるからか深くは詮索してこなかった。
なら気にしない、と言わんばかりに正面を向き再びスキップを始める。
友達にはなったが、まだ俺達の間には溝がある。
彼女に秘密があるから……だけじゃない。
一つ気持ちに整理がついたら、また一つ俺の気持ちに変化がある。
むしゃくしゃして、苛々して、モヤモヤする感情。
どうしたらいいのか自分でもわからなくなってしまうのだ。
「楠、なら私はここで」
この道を右に曲がれば彼女の家、左に曲がれば俺の家へ。
ここで別れ、次の日学校で会う、というのがいつもの流れだ。
けど、なんだか今日はもう少しだけ彼女と一緒にいたいと思った。
「家まで送ってくよ。時間も時間だし」
「え、まだ明るいから大事だよ」
「……それでも、女の子一人は危ない」
「心配してくれるのは嬉しいけど……あ、まさか私の家を特定する気!?」
「なら、バレない程度まででいい。近くまで送らせてくれ」
「ほんと、今日はどうしたの?」
「ん……駄目なら、いいんだが……」
あぁ、あの日茜が行為をするわけじゃなく一緒に寝たいとお願いした意味が少しだけ分かった。
人は不安になると一人が怖くなって、誰かと一緒にいて欲しくなるんだ。
「ごめん、変な事言った。忘れてくれ」
「ん~……」
「それじゃあ、また明日学校であ──」
「途中までなら、大丈夫かな……うん、楠様に送ってもらいましょうか!」
「え、いいのか?」
「いいよ、私も楠ともう少し一緒にいたかったしさ」
「……っ、ありがとう」
何故か彼女の優しい言葉にも素直に喜ぶことができない。疑心暗鬼とでもいうのだろうか。
自分からお願いしておいて、相手が受け入れてくれれば不満に思う。
矛盾した感情、わがままの極みだ。
「でも、一緒に帰るからには暗いのは無し! わかった?」
「おう、分かった。必ずや無事、家まで送り届けてみせましょう!」
「よろしいッ!」
これ以上、負担を掛けさせるわけにはいかない。
俺は全力で笑顔を買いに張り付けたまま、茜の隣を歩いた。
「明日はどこいこっかー?」
「そうだなぁ……行きたいところは一通り行ったしな」
「日御碕灯台でも行く?」
「なんであんなところに、面倒だろ」
「なんか青春って感じで、よくない? 海見に行くとかさ」
「分からんでもないが、もうすぐ夏休みなんだし、その時にしない?」
「──ッ、確かに!!」
そう、今月は6月。もう少しで楽しい楽しい夏休みの始まりだ。
「こんなに楽しみな夏休み、初めてだよ!」
「あぁ、俺も茜と全く同じ、すげぇー楽しみ」
「私達、どっちも同性の友達いないもんね。あ、林檎ちゃんがいた!」
「そうだ、林檎も誘って三人で行くのもありだな」
「人数がいればいる程楽しいもんね。バーベキューとかもしたいかも」
「親父が道具一式持ってたはずだから、聞いてみとくよ」
「やった! 思いでいっぱい作ろうね!」
長期休暇の予定組に夢を膨らませる。
楽しみ、という気持ちに嘘偽りはなかった。
でも、それまでのところでこのモヤモヤは消しておかなければならない。
「ねぇ、楠」
「ん、どうした?」
「私も、夏休みの入るまでには全部話せるように頑張るから、楠も、全部私に教えてね」
「……約束する」
俺は彼女の問いかけに、しっかりと頷いた。
どうやら、モヤモヤを感じていたのは俺だけじゃなかったみたいだ。
お互いに考えてる事は同じ、か。
そう思うと、心が軽くなった気がした。
今日、明日で解決する必要はないんだ。夏休み、その時までにちゃんと整理をつけよう、と、決意した。
──だが、運命は悠長な時間を与えてくれない。
「久しぶりだなぁ、夏希~」
「──ッ!?!?」
聞きなれない男の声が聞こえた瞬間、茜の方がビクっと跳ねた。
振り向かない彼女の代わりに後ろを向くと、そこには金髪で明らかにちゃらちゃらした人がこちらに近づいてきていたのだ。
スキップしながら前を歩く茜。
ご機嫌な背中を見ながら、俺はまだ今朝クラスメイト達から言われた事を考えていた。
「ふふん、あの店も中々美味しかったね!」
「あぁ、そうだな……」
放課後、彼女と立ち寄った新しいカフェ。
お洒落な店内にも入り慣れ、緊張することはなくなっていた。
しかし、結局今日も味が分からなかった。
目の前でニコニコしてる彼女を見ていると、心が騒ついた。
「もー何かリアクション薄くない?」
こちらに振り向き頬を膨らませながら問いかけて来る茜。
「いや、そんなことないよ」
「美味しくなかった?」
「美味しかった美味しかった」
「心がこもってない! ほんと、楠って隠し事苦手だよね」
「か、隠し事なんてしてないぞ!?」
「ほら、そーやって狼狽えるところとか」
「ぅ……でも、本当に隠し事とかじゃない」
「じゃあ、何?」
──聞きたい事がある。
とは、素直に言えなかった。
茜が言えるようになった時、自分から教えてくれると言ってたから。
「……別に、なんでもない」
「そっか」
茜も、あの日の事があるからか深くは詮索してこなかった。
なら気にしない、と言わんばかりに正面を向き再びスキップを始める。
友達にはなったが、まだ俺達の間には溝がある。
彼女に秘密があるから……だけじゃない。
一つ気持ちに整理がついたら、また一つ俺の気持ちに変化がある。
むしゃくしゃして、苛々して、モヤモヤする感情。
どうしたらいいのか自分でもわからなくなってしまうのだ。
「楠、なら私はここで」
この道を右に曲がれば彼女の家、左に曲がれば俺の家へ。
ここで別れ、次の日学校で会う、というのがいつもの流れだ。
けど、なんだか今日はもう少しだけ彼女と一緒にいたいと思った。
「家まで送ってくよ。時間も時間だし」
「え、まだ明るいから大事だよ」
「……それでも、女の子一人は危ない」
「心配してくれるのは嬉しいけど……あ、まさか私の家を特定する気!?」
「なら、バレない程度まででいい。近くまで送らせてくれ」
「ほんと、今日はどうしたの?」
「ん……駄目なら、いいんだが……」
あぁ、あの日茜が行為をするわけじゃなく一緒に寝たいとお願いした意味が少しだけ分かった。
人は不安になると一人が怖くなって、誰かと一緒にいて欲しくなるんだ。
「ごめん、変な事言った。忘れてくれ」
「ん~……」
「それじゃあ、また明日学校であ──」
「途中までなら、大丈夫かな……うん、楠様に送ってもらいましょうか!」
「え、いいのか?」
「いいよ、私も楠ともう少し一緒にいたかったしさ」
「……っ、ありがとう」
何故か彼女の優しい言葉にも素直に喜ぶことができない。疑心暗鬼とでもいうのだろうか。
自分からお願いしておいて、相手が受け入れてくれれば不満に思う。
矛盾した感情、わがままの極みだ。
「でも、一緒に帰るからには暗いのは無し! わかった?」
「おう、分かった。必ずや無事、家まで送り届けてみせましょう!」
「よろしいッ!」
これ以上、負担を掛けさせるわけにはいかない。
俺は全力で笑顔を買いに張り付けたまま、茜の隣を歩いた。
「明日はどこいこっかー?」
「そうだなぁ……行きたいところは一通り行ったしな」
「日御碕灯台でも行く?」
「なんであんなところに、面倒だろ」
「なんか青春って感じで、よくない? 海見に行くとかさ」
「分からんでもないが、もうすぐ夏休みなんだし、その時にしない?」
「──ッ、確かに!!」
そう、今月は6月。もう少しで楽しい楽しい夏休みの始まりだ。
「こんなに楽しみな夏休み、初めてだよ!」
「あぁ、俺も茜と全く同じ、すげぇー楽しみ」
「私達、どっちも同性の友達いないもんね。あ、林檎ちゃんがいた!」
「そうだ、林檎も誘って三人で行くのもありだな」
「人数がいればいる程楽しいもんね。バーベキューとかもしたいかも」
「親父が道具一式持ってたはずだから、聞いてみとくよ」
「やった! 思いでいっぱい作ろうね!」
長期休暇の予定組に夢を膨らませる。
楽しみ、という気持ちに嘘偽りはなかった。
でも、それまでのところでこのモヤモヤは消しておかなければならない。
「ねぇ、楠」
「ん、どうした?」
「私も、夏休みの入るまでには全部話せるように頑張るから、楠も、全部私に教えてね」
「……約束する」
俺は彼女の問いかけに、しっかりと頷いた。
どうやら、モヤモヤを感じていたのは俺だけじゃなかったみたいだ。
お互いに考えてる事は同じ、か。
そう思うと、心が軽くなった気がした。
今日、明日で解決する必要はないんだ。夏休み、その時までにちゃんと整理をつけよう、と、決意した。
──だが、運命は悠長な時間を与えてくれない。
「久しぶりだなぁ、夏希~」
「──ッ!?!?」
聞きなれない男の声が聞こえた瞬間、茜の方がビクっと跳ねた。
振り向かない彼女の代わりに後ろを向くと、そこには金髪で明らかにちゃらちゃらした人がこちらに近づいてきていたのだ。
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
学園のアイドルに、俺の部屋のギャル地縛霊がちょっかいを出すから話がややこしくなる。
たかなしポン太
青春
【第1回ノベルピアWEB小説コンテスト中間選考通過作品】
『み、見えるの?』
「見えるかと言われると……ギリ見えない……」
『ふぇっ? ちょっ、ちょっと! どこ見てんのよ!』
◆◆◆
仏教系学園の高校に通う霊能者、尚也。
劣悪な環境での寮生活を1年間終えたあと、2年生から念願のアパート暮らしを始めることになった。
ところが入居予定のアパートの部屋に行ってみると……そこにはセーラー服を着たギャル地縛霊、りんが住み着いていた。
後悔の念が強すぎて、この世に魂が残ってしまったりん。
尚也はそんなりんを無事に成仏させるため、りんと共同生活をすることを決意する。
また新学期の学校では、尚也は学園のアイドルこと花宮琴葉と同じクラスで席も近くなった。
尚也は1年生の時、たまたま琴葉が困っていた時に助けてあげたことがあるのだが……
霊能者の尚也、ギャル地縛霊のりん、学園のアイドル琴葉。
3人とその仲間たちが繰り広げる、ちょっと不思議な日常。
愉快で甘くて、ちょっと切ない、ライトファンタジーなラブコメディー!
※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。
迷子を助けたら生徒会長の婚約者兼女の子のパパになったけど別れたはずの彼女もなぜか近づいてくる
九戸政景
恋愛
新年に初詣に来た父川冬矢は、迷子になっていた頼母木茉莉を助け、従姉妹の田母神真夏と知り合う。その後、真夏と再会した冬矢は真夏の婚約者兼茉莉の父親になってほしいと頼まれる。
※こちらは、カクヨムやエブリスタでも公開している作品です。
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗@オートスキル第1巻発売中
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
クラスのマドンナがなぜか俺のメイドになっていた件について
マカロニ
恋愛
名家の御曹司として何不自由ない生活を送りながらも、内気で陰気な性格のせいで孤独に生きてきた裕貴真一郎(ゆうき しんいちろう)。
かつてのいじめが原因で、彼は1年間も学校から遠ざかっていた。
しかし、久しぶりに登校したその日――彼は運命の出会いを果たす。
現れたのは、まるで絵から飛び出してきたかのような美少女。
その瞳にはどこかミステリアスな輝きが宿り、真一郎の心をかき乱していく。
「今日から私、あなたのメイドになります!」
なんと彼女は、突然メイドとして彼の家で働くことに!?
謎めいた美少女と陰キャ御曹司の、予測不能な主従ラブコメが幕を開ける!
カクヨム、小説家になろうの方でも連載しています!
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
クラスメイトの王子様系女子をナンパから助けたら。
桜庭かなめ
恋愛
高校2年生の白石洋平のクラスには、藤原千弦という女子生徒がいる。千弦は美人でスタイルが良く、凛々しく落ち着いた雰囲気もあるため「王子様」と言われて人気が高い。千弦とは教室で挨拶したり、バイト先で接客したりする程度の関わりだった。
とある日の放課後。バイトから帰る洋平は、駅前で男2人にナンパされている千弦を見つける。普段は落ち着いている千弦が脚を震わせていることに気付き、洋平は千弦をナンパから助けた。そのときに洋平に見せた笑顔は普段みんなに見せる美しいものではなく、とても可愛らしいものだった。
ナンパから助けたことをきっかけに、洋平は千弦との関わりが増えていく。
お礼にと放課後にアイスを食べたり、昼休みに一緒にお昼ご飯を食べたり、お互いの家に遊びに行ったり。クラスメイトの王子様系女子との温かくて甘い青春ラブコメディ!
※特別編4が完結しました!(2026.2.22)
※小説家になろうとカクヨムでも公開しています。
※お気に入り登録、いいね、感想などお待ちしております。