42 / 62
学園編
これもある意味修羅場なのか何なのか
しおりを挟む
「おいウィルヘルミナ! 昼食にするぞ、ついてまいれ!!」
なんかこれ、デジャヴを感じませんか?
昨日は散々サーシャさん様に付き合わされたなと思い出しながら学校に行き、授業を受けてお昼を迎えると。
椅子から立ち上がった瞬間そんな大声が聞こえてきて「は?」ってなった。
この声、昨日めちゃくちゃお聞きしましたやつですけれど。
「で、……殿下」
やはり視界に映ったのはサーシャだった。教室のドアの前でふん、と腕を組んでいる。
後ろにはいつも通り、カリュさんが控えていた。
「早く来んか!」
「いやいやあのちょっっとお待ちいただけません?!」
思わず額に手を当てる。ちょっと待ってくれ。状況がまず飲み込めてない今しばらく時間がほしい。
何で。今。彼は私を昼食の場に連れて行こうとしているのか。
何故、呼ばれるのがヒロインではないのか?!
「殿下、やはり突然教室に来てお誘いするのはいけなかったのでは……」
「何故だ? 余直々に声をかけにきてやったのだぞ。喜んでついてくるのが当然であろう」
相変わらずの俺様余様なキングっぷりである。もうアイツ誰かどうにかして。
だが、この状況をいつまでも放置し現実逃避をしているわけにもいかない。教室の視線という視線が私に集まってきているのをひしひしと感じているからだ。
死ぬほど重い腰を上げ、サーシャの待つ扉付近へと歩いていく。
「そなた、来るのが遅いぞ」
「すみません……」
何で私が謝らにゃならんのか。悲しき身分の差よの。
「……あの、一つお聞きしたいのですが、何故私をお誘いに……?」
「気分だ!!」
声でかいよだからぁ!! 私も人のこと言えた立場じゃないけどぉ!!
そして気分。気分か。どういう気分なのか、てえてえ立場ではない元庶民の私にはまっったく理解できませんね。
ただ言いたいことが一つ。
そんな気分を持ってくるな。
「さぁゆくぞ!」
意気揚々と私の腕を掴み連れて行こうとするサーシャ。おいおい待て待て待て!! やめろ!!
「で、殿下! お待ちください! まず私の話を」
「ふーむ、そなたにそう呼ばれるのは些か面白くないな。昨日のようにサーシャと、名で呼べ」
「わぁぁぁあ?! こんなとこで何言ってるんですか!!」
もうお前喋るな!! そして手を離せ!!
「はっはっは、照れずともよい。もうそなたと余は他人の仲ではないであろう?」
「どういう意味です?! ちょっ、とりあえずは、な、し、て! くだッ、さい~~……ッ!!」
今の私、完全に「散歩から帰りたくない柴犬」の図です。
そんな感じでわぁわぁやっていると、突然サーシャの肩がぽん、と誰かに掴まれるのが見えた。
え、誰?
「……大変失礼ながら、殿下。僕の婚約者に何か御用で……?」
……何故かめちゃくちゃ怖い空気を纏わせたユーリでした。
背後に鬼が見える。多分気のせいとちゃいますね。
*
「ふん。折角ウィルヘルミナを昼食に誘ったというのに、まさか婚約者までついて回ってくるとはな」
とか言いながらご飯を食べているサーシャ。
何なんだその不本意そうな態度は。
……ていうかさぁ。
もっかい言うけど。もう何度でも言わせてもらうけど。
誘う相手が違うんだよ!! キレるぞ?!
まぁ、なんかユーリとサーシャが揉めてる間に私は瞬速で間を抜けて困ったように眺めていた大天使の元へ行ったがな。
そして当然彼女も一緒に、こうして薔薇の宮にて昼食を摂っている。
一方、私から昨日の出来事を聞かされて、さっきの私と同じように額に手を当てて悩ましそうにしているユーリくんです。
「……ウィラ、殿下と外へ遊びに行ったこと、どうして僕に言わなかったんですか……」
「ち、違います!! 言おうとしてました、今日!! お昼時に!! そしたら……」
ちらりと横目で見る。そこには我関せずなサーシャが。
大体の流れを察したらしいユーリは大きなため息をついた。
「一応お話しておきますが、婚約者が居る身で他の男性と遊びに行ったりするのは、この国の貴族においてあまり良くないことなんですよ」
「……は、はい……知って、ます……」
「まぁ、相手が隣国の王太子ということもあり、あなたが断れずそのまま付き合うハメになってしまったというのは容易に想像つきますけど……」
割とサーシャに対して辛辣やなユーリ。いつものロイヤルな優しさはどうしたん。
そんなことを考えていた私の顔に、ユーリが自身の美しいかんばせをずいっと近付けて、如何にも悲しげな表情を浮かべる。
「それでも、僕の立場としてはやはり、嫌な気持ちを隠せないです」
「す、すみません……」
「僕だってウィラと外へ遊びに行くことは中々出来ないことなのに、それを他の男とだなんて……、僕はとても悲しい」
「ウッ」
まるで捨てられた子犬のように目を潤ませるユーリ。
罪悪感がちくちくと心を突き刺してくる。
「あなたの婚約者は僕です。分かってくれていますよね?」
「は、はい」
「だから、僕が見るのはあなただけだし、あなたが見るのも僕だけなんですよ」
「……は、はい?」
「あなたと添い遂げるのは義兄上でも殿下でもありません。まごうことなきこの僕ただ一人です。それ以外なんて到底許せ……」
「おい、そこの」
だんだん何言ってるのか分かんなくなってきた所で横から尊大なお声がかかりました。
あと、何でユーリは私の手握ってんの?
「……何でしょう」
「ヒェッ」
怖っ!! いきなり黒いオーラ出さないでよびっくりするから!!
しかし、ユーリのそんなオーラも全く意に介さず、ふんぞり返りながらサーシャが話す。
「余と其奴が昨日行ったのは下町の視察のようなものだ。ならば、この国に留学中である余をサポートする係を担う生徒会の役員共が余についてくるのは当然であろう?」
「……お言葉ですが、殿下。彼女は僕の婚約者として、幼い頃からそう振る舞ってきました。この国では婚約者の居る女性が他の男性と親しくしすぎたり、ましてや二人で出掛けることなど、あってはならないことなのですよ」
「侍従も居たのだから二人っきりなどではない。全く、この国の男は心がよほど狭いのだな」
「ほう……?」
ヤバイ。
ユーリの額にどんどん怒りのマークが刻まれてってる気がする。
「殿下のお国は男女関係について随分と奔放な風潮があるのですね。ですがここはルルリエ王国。ここに居る以上、我が国のしきたりに従っていただかなくては」
「おいウィルヘルミナ、そなたはこのような男が好みなのか? これなら余の所へ来た方が断然楽しく過ごせるぞ。やはりうちに来て余の傍に居るのが正しい」
「おやめください殿下。ウィラは僕の婚約者です。
それに、そのようなお話が御身の口から出てしまうと、『婚約者を持っている他国の令嬢に求婚している』などといった噂が流れてしまいますよ? それはあなたにとっても本意ではないのではないですか?」
(……この二人、こんな仲悪かったっけ?)
あまりにも気まずい空気が続くので現実逃避が始まってしまった。いやもう、龍と獅子が睨み合ってるみたいだよ。二人の背後にそれぞれ見えるもん。
ゲーム中でもこんな描写はあんまり無かった気がするんだけどなぁ。逆ハーレムルートでもそこまで喧嘩とかしてなかったと思うし。
じゃあ今のこの状況は何やねんって話になるんだけども。
(……ユーリがこの国の男女関係についてしっかり教えておこうとしてるのに、サーシャがのらりくらりと躱してる気がする……)
つまり、結論。ユーリの話を聞かないサーシャが悪い。
うん、多分これだな! もう何言ってんのか分かんなくなってきて話聞くのもだるくなってきた!!
「余は別に構わんが」
「はい?」
「昨日ウィルヘルミナと接してみて分かったが、存外に面白く、笑う姿が愛らしい女だ。余のハレムに加えることも考えている故、別段そのような噂が流れようが特に構うまい。
むしろそれでそなたらの仲が拗れて婚約破棄、といった形になれば、余が此奴を引き取ってやろうぞ」
「はぁあ?!?!」
思わず身を乗り出して叫んだ。
ちょっと待て。いつの間にそんな話になっとるんじゃい!!
「殿下、アイラちゃんのことはどうするんですか!!」
「えっ」
横で小さく「えっ、私?」みたいな反応するアイラちゃんが見えたけど、そうだよ。何よりも重要なのはそこだよ!!
私のことはどうせサーシャの気まぐれとか適当に言ってるだけだろうから特に気にしてないけど、「美しい女だ」とか言ってたアイラちゃんのことはどうすんの!! そこをハッキリさせろ!!!!
私の叫びに、サーシャは目を丸くしながらこう返す。
「アイラのことか? 其奴もよき女であるし、そなたが連れてゆきたいと考えているのなら共についてきて構わぬぞ?」
「いやそうじゃなくて! 聞きたいのはそういうのではなく~~っ……!!」
言いたいのに上手い言葉が見つからないこのもどかしさ。言いたいことも言えないこんな世の中じゃ。
それにしても何だこの急な矛先の変わりようは。
まさか昨日そんなに面白いことやっちゃったんだろうか自分。王様の目を引く芸とかやった覚えないんですけど!!
「ところでそなた、愛称はウィラと言うのだな」
「え? ……そ、うですけど……それが何か」
「よし、余もこれからそなたをそう呼ぶとしよう」
「何で?!?!」
「そなたも余を名で呼ぶとよいぞ! 特別に許す!! ハハハハ!!」
何笑っとんねん。
ダメだこの王子。まるで話が通じない。
思わず脱力した所で、横から発せられる恐ろしい空気にびッ!! と身体が跳ね上がる。
……おそるおそる、隣を見ると。
「…………」
(怖ーーーーッッ!! 笑顔怖ーーーーッッ!!)
もう真っ黒も真っ黒な笑顔でユーリがサーシャを睨んでました。笑顔だけどわかる。これは睨んでるに違いねえ。
「……あ、あの……ユーリ様?」
「…………」
「殿下の言葉はただの気まぐれというか、ふざけて言っているだけだと思われるので……、そ、そんな風に怒る必要は無いかと……」
「こら、サーシャと呼べと言っているだろうウィラ」
「殿下ぁぁ?!」
あーーお客様!! お客様、この期に及んで煽るのはおやめください!! 止まってくださいお客様あーーーーッッ!!
「……サーシャ殿下」
すると、それまで笑顔で黙っていたユーリがサーシャの名を呼ぶ。
「ウィルヘルミナは、僕の妻となる女性です」
(……いや、ならないんだけど……)
「大変申し訳ありませんが、殿下の元へお渡しするわけにはまいりません。ですから、それを本気で奪おうというのなら……、僕と全面的に争う覚悟で、お願いいたします」
それを聞いて、ふ、と笑みを零すサーシャ。
「よかろう。受けて立とうではないか、その宣戦布告に」
…………。
…………え、今の、宣戦布告とかだったんですか。
「……もう訳わからん……」
「ウィルヘルミナ様! 大丈夫ですか……?!」
へなへなとソファーに倒れ込むと、大天使が心配そうに介抱しに来てくれた。
ああ、アイラちゃん。もう私頭が混乱してきて何も考えたくないから、今はひたすら君のかわいい姿を見ていたいよ……。
上を見上げれば、ユーリとサーシャが見つめ合っていて。
……その間にバチバチッと、激しい電撃のようなものが見えた気がしたけど。
うん、気のせい。
気のせいだきっと。
……気のせいなんだよ!! そういうことにさせといてくれよ、もう!!
なんかこれ、デジャヴを感じませんか?
昨日は散々サーシャさん様に付き合わされたなと思い出しながら学校に行き、授業を受けてお昼を迎えると。
椅子から立ち上がった瞬間そんな大声が聞こえてきて「は?」ってなった。
この声、昨日めちゃくちゃお聞きしましたやつですけれど。
「で、……殿下」
やはり視界に映ったのはサーシャだった。教室のドアの前でふん、と腕を組んでいる。
後ろにはいつも通り、カリュさんが控えていた。
「早く来んか!」
「いやいやあのちょっっとお待ちいただけません?!」
思わず額に手を当てる。ちょっと待ってくれ。状況がまず飲み込めてない今しばらく時間がほしい。
何で。今。彼は私を昼食の場に連れて行こうとしているのか。
何故、呼ばれるのがヒロインではないのか?!
「殿下、やはり突然教室に来てお誘いするのはいけなかったのでは……」
「何故だ? 余直々に声をかけにきてやったのだぞ。喜んでついてくるのが当然であろう」
相変わらずの俺様余様なキングっぷりである。もうアイツ誰かどうにかして。
だが、この状況をいつまでも放置し現実逃避をしているわけにもいかない。教室の視線という視線が私に集まってきているのをひしひしと感じているからだ。
死ぬほど重い腰を上げ、サーシャの待つ扉付近へと歩いていく。
「そなた、来るのが遅いぞ」
「すみません……」
何で私が謝らにゃならんのか。悲しき身分の差よの。
「……あの、一つお聞きしたいのですが、何故私をお誘いに……?」
「気分だ!!」
声でかいよだからぁ!! 私も人のこと言えた立場じゃないけどぉ!!
そして気分。気分か。どういう気分なのか、てえてえ立場ではない元庶民の私にはまっったく理解できませんね。
ただ言いたいことが一つ。
そんな気分を持ってくるな。
「さぁゆくぞ!」
意気揚々と私の腕を掴み連れて行こうとするサーシャ。おいおい待て待て待て!! やめろ!!
「で、殿下! お待ちください! まず私の話を」
「ふーむ、そなたにそう呼ばれるのは些か面白くないな。昨日のようにサーシャと、名で呼べ」
「わぁぁぁあ?! こんなとこで何言ってるんですか!!」
もうお前喋るな!! そして手を離せ!!
「はっはっは、照れずともよい。もうそなたと余は他人の仲ではないであろう?」
「どういう意味です?! ちょっ、とりあえずは、な、し、て! くだッ、さい~~……ッ!!」
今の私、完全に「散歩から帰りたくない柴犬」の図です。
そんな感じでわぁわぁやっていると、突然サーシャの肩がぽん、と誰かに掴まれるのが見えた。
え、誰?
「……大変失礼ながら、殿下。僕の婚約者に何か御用で……?」
……何故かめちゃくちゃ怖い空気を纏わせたユーリでした。
背後に鬼が見える。多分気のせいとちゃいますね。
*
「ふん。折角ウィルヘルミナを昼食に誘ったというのに、まさか婚約者までついて回ってくるとはな」
とか言いながらご飯を食べているサーシャ。
何なんだその不本意そうな態度は。
……ていうかさぁ。
もっかい言うけど。もう何度でも言わせてもらうけど。
誘う相手が違うんだよ!! キレるぞ?!
まぁ、なんかユーリとサーシャが揉めてる間に私は瞬速で間を抜けて困ったように眺めていた大天使の元へ行ったがな。
そして当然彼女も一緒に、こうして薔薇の宮にて昼食を摂っている。
一方、私から昨日の出来事を聞かされて、さっきの私と同じように額に手を当てて悩ましそうにしているユーリくんです。
「……ウィラ、殿下と外へ遊びに行ったこと、どうして僕に言わなかったんですか……」
「ち、違います!! 言おうとしてました、今日!! お昼時に!! そしたら……」
ちらりと横目で見る。そこには我関せずなサーシャが。
大体の流れを察したらしいユーリは大きなため息をついた。
「一応お話しておきますが、婚約者が居る身で他の男性と遊びに行ったりするのは、この国の貴族においてあまり良くないことなんですよ」
「……は、はい……知って、ます……」
「まぁ、相手が隣国の王太子ということもあり、あなたが断れずそのまま付き合うハメになってしまったというのは容易に想像つきますけど……」
割とサーシャに対して辛辣やなユーリ。いつものロイヤルな優しさはどうしたん。
そんなことを考えていた私の顔に、ユーリが自身の美しいかんばせをずいっと近付けて、如何にも悲しげな表情を浮かべる。
「それでも、僕の立場としてはやはり、嫌な気持ちを隠せないです」
「す、すみません……」
「僕だってウィラと外へ遊びに行くことは中々出来ないことなのに、それを他の男とだなんて……、僕はとても悲しい」
「ウッ」
まるで捨てられた子犬のように目を潤ませるユーリ。
罪悪感がちくちくと心を突き刺してくる。
「あなたの婚約者は僕です。分かってくれていますよね?」
「は、はい」
「だから、僕が見るのはあなただけだし、あなたが見るのも僕だけなんですよ」
「……は、はい?」
「あなたと添い遂げるのは義兄上でも殿下でもありません。まごうことなきこの僕ただ一人です。それ以外なんて到底許せ……」
「おい、そこの」
だんだん何言ってるのか分かんなくなってきた所で横から尊大なお声がかかりました。
あと、何でユーリは私の手握ってんの?
「……何でしょう」
「ヒェッ」
怖っ!! いきなり黒いオーラ出さないでよびっくりするから!!
しかし、ユーリのそんなオーラも全く意に介さず、ふんぞり返りながらサーシャが話す。
「余と其奴が昨日行ったのは下町の視察のようなものだ。ならば、この国に留学中である余をサポートする係を担う生徒会の役員共が余についてくるのは当然であろう?」
「……お言葉ですが、殿下。彼女は僕の婚約者として、幼い頃からそう振る舞ってきました。この国では婚約者の居る女性が他の男性と親しくしすぎたり、ましてや二人で出掛けることなど、あってはならないことなのですよ」
「侍従も居たのだから二人っきりなどではない。全く、この国の男は心がよほど狭いのだな」
「ほう……?」
ヤバイ。
ユーリの額にどんどん怒りのマークが刻まれてってる気がする。
「殿下のお国は男女関係について随分と奔放な風潮があるのですね。ですがここはルルリエ王国。ここに居る以上、我が国のしきたりに従っていただかなくては」
「おいウィルヘルミナ、そなたはこのような男が好みなのか? これなら余の所へ来た方が断然楽しく過ごせるぞ。やはりうちに来て余の傍に居るのが正しい」
「おやめください殿下。ウィラは僕の婚約者です。
それに、そのようなお話が御身の口から出てしまうと、『婚約者を持っている他国の令嬢に求婚している』などといった噂が流れてしまいますよ? それはあなたにとっても本意ではないのではないですか?」
(……この二人、こんな仲悪かったっけ?)
あまりにも気まずい空気が続くので現実逃避が始まってしまった。いやもう、龍と獅子が睨み合ってるみたいだよ。二人の背後にそれぞれ見えるもん。
ゲーム中でもこんな描写はあんまり無かった気がするんだけどなぁ。逆ハーレムルートでもそこまで喧嘩とかしてなかったと思うし。
じゃあ今のこの状況は何やねんって話になるんだけども。
(……ユーリがこの国の男女関係についてしっかり教えておこうとしてるのに、サーシャがのらりくらりと躱してる気がする……)
つまり、結論。ユーリの話を聞かないサーシャが悪い。
うん、多分これだな! もう何言ってんのか分かんなくなってきて話聞くのもだるくなってきた!!
「余は別に構わんが」
「はい?」
「昨日ウィルヘルミナと接してみて分かったが、存外に面白く、笑う姿が愛らしい女だ。余のハレムに加えることも考えている故、別段そのような噂が流れようが特に構うまい。
むしろそれでそなたらの仲が拗れて婚約破棄、といった形になれば、余が此奴を引き取ってやろうぞ」
「はぁあ?!?!」
思わず身を乗り出して叫んだ。
ちょっと待て。いつの間にそんな話になっとるんじゃい!!
「殿下、アイラちゃんのことはどうするんですか!!」
「えっ」
横で小さく「えっ、私?」みたいな反応するアイラちゃんが見えたけど、そうだよ。何よりも重要なのはそこだよ!!
私のことはどうせサーシャの気まぐれとか適当に言ってるだけだろうから特に気にしてないけど、「美しい女だ」とか言ってたアイラちゃんのことはどうすんの!! そこをハッキリさせろ!!!!
私の叫びに、サーシャは目を丸くしながらこう返す。
「アイラのことか? 其奴もよき女であるし、そなたが連れてゆきたいと考えているのなら共についてきて構わぬぞ?」
「いやそうじゃなくて! 聞きたいのはそういうのではなく~~っ……!!」
言いたいのに上手い言葉が見つからないこのもどかしさ。言いたいことも言えないこんな世の中じゃ。
それにしても何だこの急な矛先の変わりようは。
まさか昨日そんなに面白いことやっちゃったんだろうか自分。王様の目を引く芸とかやった覚えないんですけど!!
「ところでそなた、愛称はウィラと言うのだな」
「え? ……そ、うですけど……それが何か」
「よし、余もこれからそなたをそう呼ぶとしよう」
「何で?!?!」
「そなたも余を名で呼ぶとよいぞ! 特別に許す!! ハハハハ!!」
何笑っとんねん。
ダメだこの王子。まるで話が通じない。
思わず脱力した所で、横から発せられる恐ろしい空気にびッ!! と身体が跳ね上がる。
……おそるおそる、隣を見ると。
「…………」
(怖ーーーーッッ!! 笑顔怖ーーーーッッ!!)
もう真っ黒も真っ黒な笑顔でユーリがサーシャを睨んでました。笑顔だけどわかる。これは睨んでるに違いねえ。
「……あ、あの……ユーリ様?」
「…………」
「殿下の言葉はただの気まぐれというか、ふざけて言っているだけだと思われるので……、そ、そんな風に怒る必要は無いかと……」
「こら、サーシャと呼べと言っているだろうウィラ」
「殿下ぁぁ?!」
あーーお客様!! お客様、この期に及んで煽るのはおやめください!! 止まってくださいお客様あーーーーッッ!!
「……サーシャ殿下」
すると、それまで笑顔で黙っていたユーリがサーシャの名を呼ぶ。
「ウィルヘルミナは、僕の妻となる女性です」
(……いや、ならないんだけど……)
「大変申し訳ありませんが、殿下の元へお渡しするわけにはまいりません。ですから、それを本気で奪おうというのなら……、僕と全面的に争う覚悟で、お願いいたします」
それを聞いて、ふ、と笑みを零すサーシャ。
「よかろう。受けて立とうではないか、その宣戦布告に」
…………。
…………え、今の、宣戦布告とかだったんですか。
「……もう訳わからん……」
「ウィルヘルミナ様! 大丈夫ですか……?!」
へなへなとソファーに倒れ込むと、大天使が心配そうに介抱しに来てくれた。
ああ、アイラちゃん。もう私頭が混乱してきて何も考えたくないから、今はひたすら君のかわいい姿を見ていたいよ……。
上を見上げれば、ユーリとサーシャが見つめ合っていて。
……その間にバチバチッと、激しい電撃のようなものが見えた気がしたけど。
うん、気のせい。
気のせいだきっと。
……気のせいなんだよ!! そういうことにさせといてくれよ、もう!!
97
あなたにおすすめの小説
公爵令嬢は嫁き遅れていらっしゃる
夏菜しの
恋愛
十七歳の時、生涯初めての恋をした。
燃え上がるような想いに胸を焦がされ、彼だけを見つめて、彼だけを追った。
しかし意中の相手は、別の女を選びわたしに振り向く事は無かった。
あれから六回目の夜会シーズンが始まろうとしている。
気になる男性も居ないまま、気づけば、崖っぷち。
コンコン。
今日もお父様がお見合い写真を手にやってくる。
さてと、どうしようかしら?
※姉妹作品の『攻略対象ですがルートに入ってきませんでした』の別の話になります。
王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません
きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」
「正直なところ、不安を感じている」
久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー
激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。
アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。
第2幕、連載開始しました!
お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。
以下、1章のあらすじです。
アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。
表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。
常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。
それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。
サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。
しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。
盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。
アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?
転生したら、実家が養鶏場から養コカトリス場にかわり、知らない牧場経営型乙女ゲームがはじまりました
空飛ぶひよこ
恋愛
実家の養鶏場を手伝いながら育ち、後継ぎになることを夢見ていていた梨花。
結局、できちゃった婚を果たした元ヤンの兄(改心済)が後を継ぐことになり、進路に迷っていた矢先、運悪く事故死してしまう。
転生した先は、ゲームのようなファンタジーな世界。
しかし、実家は養鶏場ならぬ、養コカトリス場だった……!
「やった! 今度こそ跡継ぎ……え? 姉さんが婿を取って、跡を継ぐ?」
農家の後継不足が心配される昨今。何故私の周りばかり、後継に恵まれているのか……。
「勤労意欲溢れる素敵なお嬢さん。そんな貴女に御朗報です。新規国営牧場のオーナーになってみませんか? ーー条件は、ただ一つ。牧場でドラゴンの卵も一緒に育てることです」
ーーそして謎の牧場経営型乙女ゲームが始まった。(解せない)
せっかく転生したのにモブにすらなれない……はずが溺愛ルートなんて信じられません
嘉月
恋愛
隣国の貴族令嬢である主人公は交換留学生としてやってきた学園でイケメン達と恋に落ちていく。
人気の乙女ゲーム「秘密のエルドラド」のメイン攻略キャラは王立学園の生徒会長にして王弟、氷の殿下こと、クライブ・フォン・ガウンデール。
転生したのはそのゲームの世界なのに……私はモブですらないらしい。
せめて学園の生徒1くらいにはなりたかったけど、どうしようもないので地に足つけてしっかり生きていくつもりです。
少しだけ改題しました。ご迷惑をお掛けしますがよろしくお願いします。
【完結】白い結婚成立まであと1カ月……なのに、急に家に帰ってきた旦那様の溺愛が止まりません!?
氷雨そら
恋愛
3年間放置された妻、カティリアは白い結婚を宣言し、この結婚を無効にしようと決意していた。
しかし白い結婚が認められる3年を目前にして戦地から帰ってきた夫は彼女を溺愛しはじめて……。
夫は妻が大好き。勘違いすれ違いからの溺愛物語。
小説家なろうにも投稿中
枯れ専モブ令嬢のはずが…どうしてこうなった!
宵森みなと
恋愛
気づけば異世界。しかもモブ美少女な伯爵令嬢に転生していたわたくし。
静かに余生——いえ、学園生活を送る予定でしたのに、魔法暴発事件で隠していた全属性持ちがバレてしまい、なぜか王子に目をつけられ、魔法師団から訓練指導、さらには騎士団長にも出会ってしまうという急展開。
……団長様方、どうしてそんなに推せるお顔をしていらっしゃるのですか?
枯れ専なわたくしの理性がもちません——と思いつつ、学園生活を謳歌しつつ魔法の訓練や騎士団での治療の手助けと
忙しい日々。残念ながらお子様には興味がありませんとヒロイン(自称)の取り巻きへの塩対応に、怒らせると意外に強烈パンチの言葉を話すモブ令嬢(自称)
これは、恋と使命のはざまで悩む“ちんまり美少女令嬢”が、騎士団と王都を巻き込みながら心を育てていく、
――枯れ専ヒロインのほんわか異世界成長ラブファンタジーです。
「白い結婚最高!」と喜んでいたのに、花の香りを纏った美形旦那様がなぜか私を溺愛してくる【完結】
清澄 セイ
恋愛
フィリア・マグシフォンは子爵令嬢らしからぬのんびりやの自由人。自然の中でぐうたらすることと、美味しいものを食べることが大好きな恋を知らないお子様。
そんな彼女も18歳となり、強烈な母親に婚約相手を選べと毎日のようにせっつかれるが、選び方など分からない。
「どちらにしようかな、天の神様の言う通り。はい、決めた!」
こんな具合に決めた相手が、なんと偶然にもフィリアより先に結婚の申し込みをしてきたのだ。相手は王都から遠く離れた場所に膨大な領地を有する辺境伯の一人息子で、顔を合わせる前からフィリアに「これは白い結婚だ」と失礼な手紙を送りつけてくる癖者。
けれど、彼女にとってはこの上ない条件の相手だった。
「白い結婚?王都から離れた田舎?全部全部、最高だわ!」
夫となるオズベルトにはある秘密があり、それゆえ女性不信で態度も酷い。しかも彼は「結婚相手はサイコロで適当に決めただけ」と、面と向かってフィリアに言い放つが。
「まぁ、偶然!私も、そんな感じで選びました!」
彼女には、まったく通用しなかった。
「なぁ、フィリア。僕は君をもっと知りたいと……」
「好きなお肉の種類ですか?やっぱり牛でしょうか!」
「い、いや。そうではなく……」
呆気なくフィリアに初恋(?)をしてしまった拗らせ男は、鈍感な妻に不器用ながらも愛を伝えるが、彼女はそんなことは夢にも思わず。
──旦那様が真実の愛を見つけたらさくっと離婚すればいい。それまでは田舎ライフをエンジョイするのよ!
と、呑気に蟻の巣をつついて暮らしているのだった。
※他サイトにも掲載中。
悪役令嬢に成り代わったのに、すでに詰みってどういうことですか!?
ぽんぽこ狸
恋愛
仕事帰りのある日、居眠り運転をしていたトラックにはねられて死んでしまった主人公。次に目を覚ますとなにやら暗くジメジメした場所で、自分に仕えているというヴィンスという男の子と二人きり。
彼から話を聞いているうちに、なぜかその話に既視感を覚えて、確認すると昔読んだことのある児童向けの小説『ララの魔法書!』の世界だった。
その中でも悪役令嬢である、クラリスにどうやら成り代わってしまったらしい。
混乱しつつも話をきていくとすでに原作はクラリスが幽閉されることによって終結しているようで愕然としているさなか、クラリスを見限り原作の主人公であるララとくっついた王子ローレンスが、訪ねてきて━━━━?!
原作のさらに奥深くで動いていた思惑、魔法玉(まほうぎょく)の謎、そして原作の男主人公だった完璧な王子様の本性。そのどれもに翻弄されながら、なんとか生きる一手を見出す、学園ファンタジー!
ローレンスの性格が割とやばめですが、それ以外にもダークな要素強めな主人公と恋愛?をする、キャラが二人ほど、登場します。世界観が殺伐としているので重い描写も多いです。読者さまが色々な意味でドキドキしてくれるような作品を目指して頑張りますので、よろしくお願いいたします。
完結しました!最後の一章分は遂行していた分がたまっていたのと、話が込み合っているので一気に二十万文字ぐらい上げました。きちんと納得できる結末にできたと思います。ありがとうございました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる