《R18》 想い出だったはずなのに 【完結】

神野ひなた

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ー学生時代ー

新しい悩み

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いろいろあった2月が終わり、年度末がやってきた。

あのあと、辰巳さんが水田さんのところに連絡をして面談を一度だけしたらしい。それがきっかけでどうやら辰巳さんが水田さんに気に入られてしまって困っていると聞いた。
まあ、あれだけのイケメンで物腰がやわらかそうで。だけど一応訴えを起こそうとしている相手の弁護士という関係上もあり、今のところは会うとしつこくされている程度らしい。

・・・というのも、辰巳さんはいつのまにか伊藤先生のところに頻繁に来るようになっていた。
私も学校で何度か辰巳さんをみかけたのだけれど、イケメン男子なんて学校にはめったにいないからそのたびに大騒ぎになっていた。
辰巳さんは学長にも簡単に経緯を話したらしく、それ以降事務所が近いこともあり、どうやらうちの学校でお仕事をもらったようだった。
やるな・・・イケメン弁護士(笑)

そんなこんなでよく学校に出入りしていることもあって水田さんの勘違いが発動したらしい。
おかげでお店に彼女がくることはなくなり、私たちには平穏が戻っていた。
辰巳さんは伊藤先生にアプローチしているっぽい。先生は今のところ辰巳さんのアプローチを笑顔でかわしているのだけれど、まんざらでもなさそう。
これは私しか知らないのだけど。。。

あれからまだ1か月ちょっとなのにみんないろいろはやくない?
なんて思いながら学校とバイトと学祭委員、クラブに忙しく過ごしていた。

最初はあまり行かないほうがいいけど、行かなさすぎもおかしいからとお店にはちょこちょこ顔をだしていた。
ただ、土曜日のバイトの日にあきおさんと何気ない会話をバックヤードでしていたくらいしかしていないのに、総菜部長が気付いたっぽくて時々私に探りをいれてくるようになった。

現場でバレるとやりにくいし、やっぱり本社だけにしたほうがいいのではいう話もあがりつつ、週末は人が足りないとのことで土曜日だけはバイトにいっていた。
総菜部長は誰に言うわけでもなく、私かあきおさんに探りをいれているだけだったので社長には事情を話して様子をみてもらっていた。

あれから二人っきりでは会っていない。
水田さんの矛先がこっちに向かなくなったのでそろそろ大丈夫かなと
次のピアノの帰りにはゆっくりお店に寄ろうかなと思っていた。

ピアノのレッスンが終わっていつものようにお店の近くまで来ると、
あきおさんがバックヤードの扉の前で誰かと話しているのがみえた。
スタッフかなと思って近づいてみると、浜野さんのおばちゃんだった。

確か、あの人あきおさんのことを狙っているという噂があったよね・・・
そう言われるとしゃべり方が私たちと話す時と違って若干きゃぴきゃぴしているようにもきこえる。
やたらとあきおさんにボディータッチもしている。

どうしよう・・・今日はけっこうはやく終われたしとワクワクしてきたのに。。。

ふと思いついて表通りに出た。少し先に公衆電話があるのでそこまで行って、お店に電話をしてみることにした。
だけど、あきおさんはバックヤードの外にいる。ドアはあいているけれど電話の音が聞こえるかどうかはわからない。

とりあえずかけてみたけれど、やはりコール音が何度もなるだけでとってもらえる気配はない。

一度切って、もう一度かけてみる。

だけどむなしくコール音が私の耳に響くだけだった。


とりあえずもう一度お店の近くを通り過ぎてみようと思った。

お店の1本手前の筋から交差点を通り過ぎたところで浜野さんがみえた。特に音を立てたわけではなかったけれど、彼女がちらりとこちらに目をやった。

一瞬目があったような気がしたけれど、知らん顔をしてまたあきおさんのほうに媚を売るような声で話しかけている。

どうしよう・・・
ここで逃げるのはよくないよなとは思った。
悩んだ末、わざとそばを通って挨拶して帰るふりをしてもう一度遠回りして電話ボックスに行くことにした。
あの人のねっとりした笑い方が私は嫌いだ。
娘さんは中学のときのクラブの後輩で会えば話すくらいだ。おばさんとはめったに話すことはない。

普通に・・・普通に・・・・
自分に言い聞かせてお店に近づく。

「こんばんは。」
気持ちを落ち着かせてさらっと声をかけてみた。

あっという顔を一瞬したあきおさんだったけれど、

「「こんばんは」」
浜野さんとほぼ同時に挨拶をした。

「今帰り?気を付けてねー」
何か言おうとしたあきおさんだったが、先に浜野さんが言ったので
私はペコリとおじぎをして通り過ぎることにした。

浜野さんはわざとらしい甘えたような声でまたあきおさんとの会話を続けた。

少し遠回りをして電話ボックスに戻ってもう一度お店に電話をかけたのだけど
むなしくコール音が響くだけだった。

まだ話してるのかな・・・
浜野さんの誘いに乗るわけがないとわかっていても、なんとなくイヤな気分だった。



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