《R18》 想い出だったはずなのに 【完結】

神野ひなた

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ー学生時代ー

新しい悩み 3

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「おはよーございます。」

バックヤードの扉をあけて声をかけてから中にはいる。

事務スペースにあきおさんがいるだけでバックヤードにはほかの誰もいなかった。

「お、りおちゃん、急ぎのやつ出しておいたから、すぐはじめよう。」

あきおさんは何事もなかったかのように私に声をかけた。
正直なところちょっと拗ねていたこともあり、だれも今いないけど、事務的に返事をしようと思いついた。

「あ、はいお願いします。」

あえてあきおさんの顔は見ずに始める。
最近は先に自分で資料をみながら入力をして、店長に最終チェックをしてもらってから送信するようにしているので話す必要はないといえばない。

黙々と入力をしていると、あきおさんがみんながいないのを確認してから耳元で小さな声で言った。

「この間はごめん、最近あの人しつこくってね、邪険にできないからさ・・・」

「そうなんですか。」

間違うといけないから集中しているし、あまり話はしたくない。
あきおさんもそれはわかっているのでそのときはそれ以上何も言わなかった。
あきおさんは入力中いなくてもかまわないのに、今日は後ろでずっとみていた。

最近は本社で入力をたくさんしているからか入力のスピードがあがっていて、思っていたよりはやく置かれていた分の入力が終わった。
各小計をあきおさんにチェックしてもらっていったん終了となる。
急ぎでないものもまだあるけれど、とりあえずいったんあきおさんにチェックしてもらう。

OKがでたので一度休憩をする。
バックヤードにはちょうど総菜部長がはいってきていた。
チラリと私たちのほうをみたけれど、鼻歌を歌いながら総菜部におろす野菜をチェックしはじめた。
それをみてあきおさんが言った。

「りおちゃん、ちょっと話があるから事務所きてくれる?」

「おっ、俺ジャマか?なんならこれもってあっち行くけど。」

総菜部長がお店の総菜調理場にいこうとじゃがいもをかかえた。

「いえ、例の件なんで上の方がいいかと思って。なのでここで続けてください。」

「あー、あれはさっきパートさんたちからりおちゃんきいとったで。」

「えっ?」

ああ、一応私は週イチだからね、さっき聞かなければ知らない状態だったわけで。
「はい、聞きましたよ。このあとはレジはいるから気を付けますね。」

知ってるなら行かなくてもいいだろうと二人きりを回避したくて言った。

「いや、社長からのことづけもあるんで。とりあえず先あがってて。」

「はい。」

ホントに社長からのことづけなんてあるのかな?
たぶん私の態度には気づいてるはず。
でも、今は仕事中でホントに仕事の話かもしれない。
なんとなく憂鬱だったけれど言うことをきいてバックヤードの扉をあけた。

「あらっ、岡野さん!こんにちは!」

げっ・・・・今一番会いたくない人がそこにいた。

バックヤードの扉をあけたところに浜野さんがいたのだ。この感じは偶然を装おってドアが開くのを待っていたのでは。


「あ、こんにちは。お買い物ですか?」
このイヤな気持ちがばれないようににっこりと微笑んで挨拶をした。

「うーん、そうねぇ。。。」

あ、これはすぐ戻って確認?いや、まだあきおさんの名前でてないよね・・・

とか思っていたらあきおさんが扉をあけてでてきてしまった。

「あらー♡前田さん♡ ちょうどよかった!今ちょっといいですか?」

声が一瞬で甘えた声にかわった。
これ、だれでもドン引きですが・・・
あきおさんも彼女を見た瞬間に固まっていた(笑)

「すみません、今から会議なので。」

「あら、そうなの?岡野さんも?バイトなのに?」

怪訝そうに私の顔をちらりとみる浜野さん。
この間見かけたときもそうだったけど、何か気づいているのかな・・・
なんて思いつつ、とりあえず知らん顔で先に事務所の階段を上がった。

「彼女、今本社で社長のサポートにバイトではいってもらっているんですよ。こっちは土曜日だけ手伝ってくれているので会議にもはいってもらってまして。すみません、時間ないので。」

総菜部長も彼女の声をきいてタバコを片手に外にでてきていた。
「あ、こんにちはー。」
微妙に白々しく聞こえるあいさつを耳にしながら事務所に入っていつも私が座る席についた。

「えっ?そうなの?学生でも社長のサポートなんてするのね。できる子は違うのね。うちの子もバイトさせようかしら・・・」
浜野さんの娘さんはまだ高校生であまりいい噂のない学校に通っていた。
中学のときはそんなことなかったのだけれど、家庭環境のせいだったのかもしれない。

「浜野さんとこのおじょうさん? あー、向いてないね、ここの仕事はハードだからきっと無理やわ。岡野さんああみえて根性あるねんで。」

「えー、そうなんですか?バイトの子たち楽しそうにしてるじゃないですか。」

いや、お金があわないと帰れないし、けっこう立ちっぱなしも大変だし。
思ったよりも大変です。みんないい人で働きやすいからきてるけど・・・

2階まで聞こえてくる浜野さんの大きな声にブツブツと事務所の中でかえしていたらあきおさんが事務所にはいってきてカチャリと鍵を閉めていたのだけれど、私はそれに気づかなかった。

総菜部長の声は通らないのでほとんど聞こえないけれど、浜野さんの相手をしてくれているようでそちらに気をとられていたのだ。

「りお・・・」

座っていた私の背後からあきおさんが腕をまわして耳元で私の名を呼んだ。



・・・・やっぱり仕事ちゃうやん。。。。
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