《R18》 想い出だったはずなのに 【完結】

神野ひなた

文字の大きさ
57 / 104
ー学生時代ー

名残り。2

しおりを挟む
ーside Akioー

濃密な時間を過ごして疲れてしまった莉緒菜は送っていく車の中でウトウト寝ていた。
父親の車は乗り心地がいいし、寝てしまって当然な時間の過ごし方をしていたので仕方ない。だけど、隣に彼女がいるだけで心が休まるのを感じていた。

彼女を家の近くでおろし、車が違うとはいえ誰かにみられると面倒なのでできるだけ店から遠い道を選んで住宅街を抜けた。
家まで戻る道はとても長く感じた。

家に戻ると電気はつけたままでたけれど、一人で住むには広すぎる家をさびしく感じた。
嫁さんと娘がでていったあの日以来さびしいなんて思うことはなかったのに。

飲み食べしたものは片付けていたのでソファーに身体を投げ出してテレビをつけた。
いつもは帰って寝るだけのこの家。
テレビも朝に時計代わりにつける以外はめったにつけないけれど、今はなんだかさびしくて。

莉緒菜と過ごした時間が濃密だったからではなく
濃密でなくてもきっと彼女といれば楽しいだろう。

目を閉じるとテレビから流れるニュースの音よりも
ここで莉緒菜と話していたときの莉緒菜の声がしてくるようだ。

・・・できたら彼女とずっと一緒にいたい。
でも、今はまだ無理だ。
やっぱりちゃんとしてからじゃないと彼女の家庭事情を思うとできないと思う自分がいた。

先に彼女に話しておけばよかったと数年後に後悔するなんて思いもしなかったのだ。

寝室にはいるとベッドの上はそのままだったので二人の香りが残っていた。
シーツを取り換えてから寝るべきなのだとは思ったけれど、その香りに包まれて眠りたかったのでそのままにして眠った。

朝、少し早起きして簡単に手洗いしてから洗濯機をまわすことになってバタバタしたのだけれど、よく眠れたからか、スッキリした朝を迎えた。

朝、いつものように早めに店について準備をしていると総菜部長がやってきた。

「店長、おはよう。きのうはゆっくりできました?」

「ああ、突然でご迷惑おかけしました。」

「いや、頑張りすぎだから休んだらいいのにって思ってたからホッとしたよ。」

「ありがとうございます。」

総菜部長は店長経験があるのでこの仕事が大変なことをよくわかってくれている。

「それよりさ、章夫、きのういいことあったか?」

突然、仕事モードを切って総菜部長に声をかけられた。

「えっ???」

「顔にでてるぞ。結婚前のおまえに戻った感じかな、いや、もっといい顔してるで、きのうはデートやったんか?」

うわ・・・図星・・・・

総菜部長、いや原田さんはずっとこの会社にいるから大間とつるんでいた若いころから僕のことを知っている。
だから結婚の経緯も知っているし、いろいろ心配していてくれたのもわかっている。今の状況にしても気にしてくれている。

「なぁ。。。りおちゃんやろ?」

返事に困っていると原田さんはそのまま続けた。

「彼女がきてからずいぶん明るくなったなとは思ってたんや。でも、気に入ってるだけやと思っててんけどなー。最近彼女がめっきりオンナっぽくなってきたからお前らを観察させてもらってたけど、オンナはすごいな、そんなそぶりをほとんどみせへん。でもお前をみとったらそうちゃうかなぁって。俺かってアホちゃうし、状況わかるから誰にも言わんけど社長も知ってるんやろ?だからきのう休みくれたんやと思ったんやけど。」

僕は観念して答えた。

「はい、まぁ、そんなところです。原田さん。申しわけないけどナイショにしといてもらえますか?」

「やっぱりな・・・・」

ニヤリと笑って原田さんは続けた。

「りおちゃんの家庭のことはみんな知ってるけどさ、なかなか大変やと思うで?あのこのお父さん、なかなかの人らしいから訴訟が終わって離婚できたとしてもバツイチで10歳も上の男に娘をどうぞなんてするとは思えんもんな・・・・」

そうなのだ。そこなのだ。

「お前の家のことを調べたらかわるかもしれんけどな・・・先まで考えてるんやったらしっかり根回ししとかな難しいで?」

「まだ、彼女は学生ですし、そこまで考えられないだろうからもうちょっと先でいいかなと思ってはいるんですけどね」

ぶっちゃけていうと、まだ1年学生生活がある彼女はその先の未来なんて考えてはいないだろうと思っていた。

「あまいな・・・・」

原田さんのその言葉はバックヤードの扉を開ける音にかき消されて僕には聞こえていなかった。
その通り、僕の考えは甘かったのだと知ることになるのはもう少し先だった。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

還暦の性 若い彼との恋愛模様

MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。 そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。 その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。 全7話

17歳男子高生と32歳主婦の境界線

MisakiNonagase
恋愛
32歳主婦のカレンはインスタグラムで20歳大学生の晴人と知り合う。親密な関係となった3度目のデートのときに、晴人が実は17歳の高校2年生だと知る。 カレンと晴人はその後、どうなる?

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

処理中です...