《R18》 想い出だったはずなのに 【完結】

神野ひなた

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Side Story

再会は少しせつなくて。 《母のしたこと》

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私が物心ついたころには母が妊娠していて、父と3人、千葉に住んでいた。
妹の絵里が生まれてからは母は絵里を溺愛し、私はあまり母に甘えることができずに育った。というか邪見にされていた。
父も優しかったけれど、妹へのそれとはまた違った感じでなんとなく私は疎外感をずっと感じていた。
学校にあがると母はいい成績をとって帰ってきてもほめたりもしてくれなかった。妹はどちらかというと勉強ができなくて愛嬌がいい子という感じだった。
なのに妹はちょっとしたことでほめられるのに私はいつも怒られていた。それも理不尽なことばかりで。
誰が見ても私はないがしろにされ、絵里ばかりをかわいがっているようにみえた。

高校2年の夏に進路を決める懇談会で私は公立の大学を受けたいと思っていたので先生から絶対大丈夫という学校をピックアップしてもらって母に相談したのだけれど、お金は出すから好きにすればいいと言われてショックだった。
その夜、父と母が話しているのを私は聞いてしまった。

「ねぇ、マサ、有理なんだけど、公立大受けるって。お金なんとか出せるよね。大学行ってくれたら一人暮らししてもらおうと思うんだけど。」

『沙耶、なんでそんなに有理ちゃんのこと嫌うの?いい子じゃないか。それにあのお金残ってるんだろ?あの子のためにもらったんだからちゃんと残してるよな?』

「だって、有理はあの人そっくりなんだもの。見てるだけで思い出しちゃう上に頭もいいし、手先も器用で。なんだか私のことバカにされてるみたいでイヤになっちゃう。」

えっ??私は嫌われているんだとショックだった。そっちが先にきてしまって一瞬あの人という言葉には気づかなかった。

『そりゃ仕方ないだろ。あの人は俺らとは違う。沙耶が産むって決めてあっちにいったのに勝手に帰ってきたのはお前だろ?』

「だって。あの人の家があんなにすごいってわかったからすぐに離婚してもらえるものをもらって戻ればいいって思ったんだもん。人が良すぎていい人だったけれどマサのことも忘れられなかったし、どうしてもむこうの暮らしにはなれなかった。だから予定どおりに帰ってお金をもらうことにしたんじゃない。マサのことだって隠しとおせたから慰謝料を請求されることもなかったし。。。。」

『ほんとお前サイテーだな。で、有理ちゃんの学費はそこから出せるんだろ?』

「・・・・4年間は無理かも・・・・」

『え?お前使い込んだのか?ありえんだろ、それ・・・』

「だって、絵里もいるんだから仕方ないでしょ?」

『いや、それは別にしないと。約束だろ?』

「もらったものはどう使おうが私の勝手でしょ?」

『いや、あれは有理ちゃんのものだろ?お前、ほんとにサイテー・・・・』

えっ?なに??私お父さんの子じゃないの???
お金って???なに?お母さんお金めあてでほかの人と結婚して離婚したの?


私は訳が分からずに混乱した。



話を聞いてしまったとはいえ、怖くてなにも聞けないまま大学に進学し、どうしても母親とはそりが合わなくて学校の近くに一人暮らしをすることにした。
学費は出してもらうことにして、バイトで生活費を稼ぎ、趣味でアクセサリー作りをして、それをネット販売したりしてお小遣いを稼いだ。

就活をはじめることになり、母親から離れたくてできるだけ大手の会社を受けて遠くに行きたいと思った。
願えば叶うのものなのか、京都に本社のある下着の会社に就職が決まった。
戸籍謄本を提出しなければならず、市役所にとりにいった。
そこで、私は父親と養子縁組をしていたことを知った。
母親を問い詰めると、スキー場で知り合った人とできちゃった婚で関西にいったのだけれどなじめずに私が2歳になるころに離婚して私を連れて戻ってきたのだと言った。

高2のときに聞いてしまった話をその時に思い出した。
お母さんはお金目当てで私を産んでその人と結婚し、離婚したってことなのか・・・
これまでも非常識と思われることがよくある人だったけれど、このとき初めてお母さんを軽蔑した。そしてお父さんの居場所を教えてほしいと言ったけれど、離婚の時の条件として一切かかわらないということにして一括で養育費をもらったという経緯があるからもう連絡先もなにもわからないとのことだった。
ただ、きっと関西にはいるだろうということだけはわかった。

ちょうど会社の本社は京都だ。勤務地の希望を本社か関西の支社で出そうと思った。

就職までの残りの時間でお父さんにつながる情報はないかとお母さんにナイショで調べた。
それに気づいた父親が当時母親の弁護についた弁護士事務所をこっそり教えてくれたのでその弁護士事務所に行ってみると、詳細は教えられないけれど、向こうの弁護士さんならと連絡先を教えてくれた。
あとでわかったことだけれど、その弁護士事務所の母の弁護をしていた方は、私のことを不憫に思ってくれていてもし私が来たらむこうの弁護士さんの連絡先だけでも教えてあげたいとデータを残してくれていたらしい。

・・・悲しいけれど、どうせ母の主張がめちゃめちゃだったんだろうとなんとなく想像がついてしまった。

私は入社して配属が本社に決まったので研修が終わったタイミングで母親に家を出て関西に住んで父親を捜すと伝えた。
もちろん反対されたけれど、高2のときに聞いてしまったことを伝え、お母さんとは縁を切るつもりで出ていくことにした。

私はそのときの母の顔を一生忘れない。

・・・・ほっとしたような顔をされてしまったのだから・・・・



・・・・・・・・・・・・・・



就職をして、引っ越して配属先に慣れるまではさすがにほかのことはできなかった。

だけど、夏休みには時間がとれたのでおしえてもらった弁護士事務所に電話をいれてみた。
お父さんが確か父親の苗字は前田だったと思うとこっそり教えてくれたので聞いてみるとものすごくビックリされた。

その弁護士さん・・・辰巳さんは私の会社の近くまで私に会いに来てくださった。
辰巳さんは前田さんという私の父親の友人で私の赤ちゃんの頃を知っていたのだ。ここまでの事情を話して父親に会いたいという私の気持ちを分かってくださった。

そして今住んでいるところを教えてくれた。
私が住んでいるところからそんなに遠くないところだったのだ。
今は工房をやっているとのことだった。
そういえば私が手先が器用なのは父親似だと母が言っていたのを思い出した。
なんだかうれしかった。

私は有休をとって会いにいくことにした。

辰巳さんは私のことは連絡しないでおくから突然行ってびっくりさせてあげてと言ってくれた。見た目もかっこいいし、なかなか素敵なおじさまだと思った。



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