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桜の花が散り、若い新緑に変わった。
五日間働いたあとのせっかくの休みを家の中でだらだら過ごすのもいい。
けど、晴臣は行きたいところがあった。
会社に行くのと変わらない時間に起き、いつもよりも念入りに身支度をし、昨日の夜から選んだ服に着替えると、足取り軽く家を出た。
気軽な一人暮らしも五年になる。
電車に揺られながら、メッセージアプリを開く。
短文ばかりのやり取りが続いていた。
瑛から連絡が来たのは一週間前だった。
肉が食べたい
メッセージを見てぷっと吹いた。
瑛とは高校からの付き合いだ。
同じバスケ部でクラスも一緒だったらすぐに打ち解けた。
大学も同じところを受験して、学部は違ってもお互いに呼び出され、呼び出し遊んでいた。
瑛の口癖は、『肉』だ。体が肉を欲しているとかなんとか言って、野菜を食べずに肉ばかり食べていた記憶がある。
いくら食べても太らなかった。
大学でもバスケを続けていたからかもしれない。
典型的なやせの大食いだった。
社会人になってお互いに就職しても一年ほどはお互いのアパートに行ったり来たりしていたが、しだいに疎遠になっていき、最近では一年に一度会っていない。
疎遠になった理由には、それなりの理由がある。
瑛に彼女ができたのだ。
最初はおめでとうと言っていた。けど、瑛に会って、瑛の口から彼女ののろけ話を聞くと決まって、次の日、落ち込んだ。
気がふさいで、瑛のことを締め出したくなった。彼の口から彼女のことを聞きたくなくなって、なにかと理由をつけて会わなくなった。これまではすぐに返していた連絡も、ゆっくりとしか返さなくなった。
だから、疎遠になったのは、晴臣にも原因があったわけだ。
でも、数日すると、会いたくてたまらなくなる。
会うと、気がふさぎ、会わないと会いたくなる。
それを繰り返すうちに、晴臣はある時気づいてしまった。
ああ、オレは瑛が好きなんだと――。
わかったところで、言えるわけがない。
悶々としているうちに、五年が経ってしまった。
前に会ったのは、一年前の春だった。桜も満開で、人ごみを縫いながら、川沿いの花道を歩いた。
去年会ったときは彼女のことは聞かなかった。瑛が話さないのだから、こちらから話をふることもしたくなかった。
会えると思うだけで、心が躍る。今はそれでいい。
電車から見える街並みをぼんやりと見ながら思った。
駅に着いた。
スマホをズボンのポケットに入れ、駅構内の案内掲示を頼りに、待ち合わせ場所をへと急ぐ。
今日の予定は、靴を買いたいという瑛の買い物につき合い、ボーリングで遊んだ後、食べ放題の焼き肉店で肉を食べまくる予定にしている。
いつも肉を食べる時は大人数でバーベキューだったら、二人で焼き肉屋へいくのは初めてだった。
通路を抜け階段を上がると、ビルが立ち並ぶ大通りに出た。
日曜日ということもあり、人通りが多い。
お店のロゴがついた紙袋をもって歩く女性、おしゃれしているカップル。
笑いながら歩いている大学生ぐらいの若者たち。
その先に、壁にもたれてスマホを見ている瑛を見つけた。
一年前に会ったときよりも、髪は短くなっていて、色は黒髪に戻っていた。
会えた喜びと、嬉しさ。それと、好きな気持ちを抑えなくてはならない寂しさが、胸の内に同時に湧き上がってくる。
晴臣は人ごみを避け小走りで、瑛の前に立った。人の気配に気づいた瑛が顔を上げると、二重の双眸と目が合った。
「はる」
嬉しそうに笑う瑛につられて、顔がほころぶ。
「あき、待たせた。行くか」
「いや。おれ、早く来たから」
瑛の気遣いに、「ありがとう」と言葉にするよりも、背中に腕をまわして、肩を抱き寄せた。
晴臣のくせみたいなものだ。
行動でしめす方が照れが少なくていい。
抱き寄せた手で瑛の背中を押して、「どこへいく?」と、彼の足を進ませた。
五日間働いたあとのせっかくの休みを家の中でだらだら過ごすのもいい。
けど、晴臣は行きたいところがあった。
会社に行くのと変わらない時間に起き、いつもよりも念入りに身支度をし、昨日の夜から選んだ服に着替えると、足取り軽く家を出た。
気軽な一人暮らしも五年になる。
電車に揺られながら、メッセージアプリを開く。
短文ばかりのやり取りが続いていた。
瑛から連絡が来たのは一週間前だった。
肉が食べたい
メッセージを見てぷっと吹いた。
瑛とは高校からの付き合いだ。
同じバスケ部でクラスも一緒だったらすぐに打ち解けた。
大学も同じところを受験して、学部は違ってもお互いに呼び出され、呼び出し遊んでいた。
瑛の口癖は、『肉』だ。体が肉を欲しているとかなんとか言って、野菜を食べずに肉ばかり食べていた記憶がある。
いくら食べても太らなかった。
大学でもバスケを続けていたからかもしれない。
典型的なやせの大食いだった。
社会人になってお互いに就職しても一年ほどはお互いのアパートに行ったり来たりしていたが、しだいに疎遠になっていき、最近では一年に一度会っていない。
疎遠になった理由には、それなりの理由がある。
瑛に彼女ができたのだ。
最初はおめでとうと言っていた。けど、瑛に会って、瑛の口から彼女ののろけ話を聞くと決まって、次の日、落ち込んだ。
気がふさいで、瑛のことを締め出したくなった。彼の口から彼女のことを聞きたくなくなって、なにかと理由をつけて会わなくなった。これまではすぐに返していた連絡も、ゆっくりとしか返さなくなった。
だから、疎遠になったのは、晴臣にも原因があったわけだ。
でも、数日すると、会いたくてたまらなくなる。
会うと、気がふさぎ、会わないと会いたくなる。
それを繰り返すうちに、晴臣はある時気づいてしまった。
ああ、オレは瑛が好きなんだと――。
わかったところで、言えるわけがない。
悶々としているうちに、五年が経ってしまった。
前に会ったのは、一年前の春だった。桜も満開で、人ごみを縫いながら、川沿いの花道を歩いた。
去年会ったときは彼女のことは聞かなかった。瑛が話さないのだから、こちらから話をふることもしたくなかった。
会えると思うだけで、心が躍る。今はそれでいい。
電車から見える街並みをぼんやりと見ながら思った。
駅に着いた。
スマホをズボンのポケットに入れ、駅構内の案内掲示を頼りに、待ち合わせ場所をへと急ぐ。
今日の予定は、靴を買いたいという瑛の買い物につき合い、ボーリングで遊んだ後、食べ放題の焼き肉店で肉を食べまくる予定にしている。
いつも肉を食べる時は大人数でバーベキューだったら、二人で焼き肉屋へいくのは初めてだった。
通路を抜け階段を上がると、ビルが立ち並ぶ大通りに出た。
日曜日ということもあり、人通りが多い。
お店のロゴがついた紙袋をもって歩く女性、おしゃれしているカップル。
笑いながら歩いている大学生ぐらいの若者たち。
その先に、壁にもたれてスマホを見ている瑛を見つけた。
一年前に会ったときよりも、髪は短くなっていて、色は黒髪に戻っていた。
会えた喜びと、嬉しさ。それと、好きな気持ちを抑えなくてはならない寂しさが、胸の内に同時に湧き上がってくる。
晴臣は人ごみを避け小走りで、瑛の前に立った。人の気配に気づいた瑛が顔を上げると、二重の双眸と目が合った。
「はる」
嬉しそうに笑う瑛につられて、顔がほころぶ。
「あき、待たせた。行くか」
「いや。おれ、早く来たから」
瑛の気遣いに、「ありがとう」と言葉にするよりも、背中に腕をまわして、肩を抱き寄せた。
晴臣のくせみたいなものだ。
行動でしめす方が照れが少なくていい。
抱き寄せた手で瑛の背中を押して、「どこへいく?」と、彼の足を進ませた。
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