週末の金曜日

立樹

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俺自身は、ただ、青木の真似をしたまでで、特に意味なくした行為だが、この時初めて、佐藤の表情が揺れた。

ん?

「佐藤、顔赤い?」
「反則だ……」

佐藤は、俺の目線から顔を隠すように、片手で顔を覆い、もう片方の手で俺の視界を遮った。

俺の前に出された手を退けながら、
「青木、だから、会話飛びすぎ。で、切っ掛けがどうしたんだよ?反則って何?」
と、聞くと、佐藤はうらめしそうに俺を見ながら言った。
「佐藤、お前がよくわからない。それを素でしているのか?分かってしているのか?」
退けられた手を顔に持って行き、両手で顔を隠しながら、うつむき加減に言う。

素で?
分かって?
よくわからない――。

「青木」
と、俯いている彼の名を呼んだ。
「何?」
「俺もよくわからないんだよ」
その答えに、青木は、がっくりと肩を落とした。

「けどさ、俺、今日変なんだ。こんなこと言うと、引かれるかも知れないんだけど、佐藤を見ていると、なんか、こう、たまに、ドキッとするんだよな……なんだろな、これ」
言った後、恥ずかしさを隠すために、息を吐き、軽く笑った。
そして、グラスに並々と注ぐと一気に飲んだ。

青木はそんな俺を穴があくほど見てきた。
じっと見られることに、耐え切れず、俺は
「もう一缶持ってくるわ」
と言って、席を立った。

その腕をグッと掴まれ、ガクンと俺の身体がバランスを崩した。

ガタン!

俺の肘がテーブルにぶつかる。
ぶつけた衝撃に、痛さが肘から全身へと駆け巡ってきた。
「な、なんだよ。急に引っ張って。しかも、痛いし」
肘をテーブルに着けたまま、青木の方を振りむき、顔を上げる。

「!!」

上を見上げると、俺を見下ろすようにテーブルをはさんで、青木の顔がある。

ち、近い……。

吐息が俺の頬にかかる。
さっき飲んでいた、レモンの匂いとお酒の匂いがする。
アルコールのせいなのか、少し目が潤んでいる。
長いまつげが、憂いを帯び、朱が差す切れ長の目に吸い寄せられる。
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