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「上手く回る」握拳の幕開け。

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「カズくん・・・お口でしてあげよっか?」


悪戯っぽい笑顔。
姉の笑顔で言われる。



もぉーーーー・・・・だいじょーーぶですぅーーー



・・・まったく、もう・・・

いつも、こんなふうにからかわれてしまう。



「大丈夫だよ。
カーテン閉めちゃえばバレないって・笑」



本気とも冗談ともつかない笑顔だ。・・・・いや、明菜さんは、たぶん本気なんだろうな・笑。

もちろん、ボクだって20歳の健康体男子だ。
一瞬、明菜さんの舌技が頭を過ぎる。

下半身が甘く疼く・・・

でも、ボクには、そんな勇気はない。



大丈夫・・・いいですって・・・笑。



パイプ椅子から腰を上げた。



「じゃあ・・・今週は今日子にしてもらうんだよー」



はいはい・・・・


手を振りながら歩き出す・・・・



「今日子には頼んどいたからねーーー」



背中で聞きながら病室を出た。



・・・・そっか・・・・そういうことか・・・



駐車場でスカイラインに乗り込む。


エンジンをかけて走り出す。



「今日子に頼んどいたから」


・・・・あれは・・・
本当かもしれない・・・



明菜さんがボクのアパートにやってくるのは、月に1回、2回くらい・・


そして、今日子さんがやってくるのも同じくらいの頻度だった。


考えたこともなかったけど、

ふたりは、示し合わせて「バッテイング」しないようにしてたのかもしれないな・・・・いつもSEXしちゃうからな・・・・

バッティングしたら、さすがにマズいよな・・・・さすがに、そんな趣味はない。

アダルトビデオで他人のSEXを見ることはできても、
自分のSEXを見せたいとか・・・複数人数とかには興味はない。

目の前で違う男のSEX見て、
自信無くすのも嫌だしな・笑。



最初の頃は、ふたりで一緒に来ることもあった・・・・それが、いつからか、一緒には来なくなっていた。


・・・・なんか、

ボクの知らないところで、・・・そんな「変」な取り決めがされてるのかもしれないな・笑。



「総務女子」


付き合っていくと・・・・時間が経ってくると、

その中でも、「派閥」のようなものがあるのがわかった。・・・・「派閥」ってほどじゃないんだけど・・・仲の良さみたいなもんか。


当然と言えば当然だけど、


「秘書グループ」と

「経理グループ」に分かれていた。


「秘書グループ」のリーダーが、桐原先輩の彼女さん・・・役員秘書だった。

なんだか、・・・聞いたことのない・・・・ボクが知らないだけなんだろうけど、

東京のカタカナ名の大学出身だった。


だいたい、学校名に「カタカナ」があるってのが、田舎育ちのボクは知らなかった・笑。

・・・それもさ、・・・東京には・・・なんか、いくつもカタカナ名の学校があるんだよな・笑。


名前聞いてるだけで、・・・なんだか「妄想」が膨らむような・・・・綺麗ってか、美しいってか・・・
田舎者を圧倒するような、アニメのタイトルのような学校名が存在する。


・・・そか、

あの、漫画とかの学校名は、

「アニメ」の世界の脚色ってんじゃなく、
実際にある学校をモチーフとしてるんだ。

・・・そんなふうに、東京出てから気づいたもんだ。



そして、


「経理グループ」のリーダーが明菜さんだった。


明菜さんの短大は・・・なんか由緒正しい「短大」って感じの名前だった。


・・・・そう、

「秘書」は4年制大学が多かった。

んで、

「経理」は短大卒が多かった。



「秘書課」も、地方出身者が多かったけど・・・・

それは、「東京じゃない」ってことであって、

千葉だとか、埼玉、神奈川・・・・ボクからしたら「もう東京じゃん?」ってな関東近郊の出身者が多かった。


で、

「経理グループ」

明菜さんを筆頭として・・・・ボクと同じように、本当の「地方出身者」が多かった。

東北・・・北海道・・・九州・・・



・・・・やっぱり、


学校。

大学卒と短大卒。

・・・・それに育った地域。


そこには、圧倒的な「溝」のようなものがあるのかもしれないな・・・・


最初は寮暮らしだった。

寮には、色んな地域からの出身者が集まっている。

その地域、地方での特徴、人間性ってのは確かにあるって気がする。


偏見から言えば、

東京から離れていけば行くほど、人間が優しくなるような気がする・・・・


東北、北海道・・・・そして九州の人間は優しい気がする・・・・あくまで「偏差値」ってことだけど。



同じように、
だから、


大学卒と高卒。


圧倒的な・・・無意識のヒエラルキーが存在するのかもしれないな・・・



・・・・のちに、

それは痛いほどに体験することになる・・・・


まぁ・・・

あの一件が「学歴」の違いだけだったとは思わないけれど・・・・




陽が暮れていく。


緑が多い・・・街路樹はすでに紅葉だ。

東京郊外とはいえ、

田舎から比べれば、遥かに「高層ビル」が多い。


都会の街並み。

街路樹の紅葉の中。スカイラインを走らせる。



・・・・いずれにしても、

ボクは、

必然的に、

「経理グループ」と仲が良くなっていって・・・


まぁ、明菜さんに引っ張り回されてる感じなんだけど・・・・

だから、
アパートまでに来るのは、明菜さん、今日子さんだけだったけど、・・・・いや、「来ただけ」っていうなら、他にもいた。

・・・みんな「ひとり暮らし」ってやつの現実を知りたいみたいで、「見学」って感じでやってきた。

だから、
スカイラインを「足」にされていたのは、「経理グループ」が多くて、他にも何人かいた。



・・・・考えてみれば「不思議な関係」だった。


何らかのトラブルになっても不思議じゃない。

それが、

なんだか、うまく回っていた。


後輩以上・・・しかし、恋人未満・・・・

さらには、複数交際のような・・・


なんだか、
そんな「複雑な関係」が上手くいっていた。



ボクの人生は、

たいていが「トラブル」を生む。

ましてや、
こんな複雑な人間関係が上手くいくはずはなかった。

・・・・なのに、

この時は、

こんなおかしな関係が上手くいっていた。


・・・・なんか・・・
人生が動いている感じがしていた・・・


まぁ、
たぶん、姉ちゃんが・・・

明菜さんが、ボクの見えないところで、上手く仕切っていたんじゃないかと思う。

明菜さんは、

ホントに「姉御肌」だったからな。

みんなに慕われていた。



次の週末。


明菜さんが言っていた通り、今日子さんがボクのアパートにやってきた・笑。



20:00


・・・もうすぐ今日子さんが帰る時間だ。
女子寮の門限の時間だ。


今日子さんは自転車で来ていた・・・それでも、10分もあれば帰れる。



今日子さんがボクに跨っていた・・・・そして腰を使っている・・・


いつも、明菜さんには、
帰り際、
口中で責められた。


・・・・その代わりと言うわけじゃないだろうけど、

今日子さんは、
自ら跨り、・・・ユルユルと腰を使っていた・・・・・
小ぶりな、・・・ぴったりと掌に収まる少女のような乳房・・・

ボクは、両手を伸ばし、乳頭を人差し指と中指で挟んで、その柔らかさ・・・安らぎを楽しんでいた。
・・・・明菜さんと違って、今日子さんは、ボクが手を伸ばすことを許してくれた。


今日子さんが明菜さんにお願いされたのかどうかは知らない・・・そんなの聞けないしな。


・・・それでも、
明菜さんとの別れ際のように、
カタチとしては、「姉ちゃんに責められる」って態勢だった。


・・・ボクは・・・快感に耐えていた・・・


今日子さんは、明菜さんのように「アケスケ」した感じじゃない。

あからさまな「姉貴」って感じじゃない。・・・・それでも、「親族」って感じはする・・・なんというか・・・・親族の安心感のようなもの。・・・・一緒にいて、そんな安らぎを感じる。



ギシ・・・ギシ・・・ギシ・・・・

緩やかなベッドの軋む音・・・・


今日子さんのSEXは、
ボクの身体を使ってオナニーするような感じだ。・・・・彼氏には言えない・・・彼氏にはできない・・・

そんな、自分の「快感」を求めるようなSEXだった。・・・・「SEXの探求」とでもいうのか・・・

いろんなことを試してるような感じがする。・・・・自分の快感だけじゃなく・・・ボクの身体・・・男の身体についてもだ。



「大学デビュー」


そんな言葉があるけれど、

地方の高校を卒業して、東京で進学・・・・そして、東京で就職。


これまでの・・・18歳までの「田舎」を払拭して・・・

都会の「美しい蝶」に脱皮していく時期なのかもしれない。


今日子さんは・・・山陰地方のどこかの出身だった。
ボクには、全く縁のない地域だ。


「美しい蝶」へ。


同じように「SEX」にも目覚めていくんだろう。


「SEX」って・・・覚えてしまうと濃密な快楽だからな・・・

猿にオナニーを教えれば、死ぬまでやり続けるらしい。


男の子にとって、

「性欲」ってやつは、本当に困ったもんだった。

「受験」の大敵だった。

・・・これは、女の子にはわからないんだよな・・・


男の性欲は、


「のべつ幕無し」 だ。


女の性欲には、

「スイッチ」がある。

スイッチが入らない限り・・・入れられない限り、その気にならない。

だから、露出の多い服でも平気で着られる。

露出の多い服を着たからといって「性欲」が ON になるってわけじゃない。・・・男は、そうじゃない。

男の性欲は、常に ON だ。

だから、満員電車での「痴漢行為」みたいなことが起こる。


・・・・確かに、女の人でも「痴漢行為」をするヒトはいるけどな・・・・笑。



・・・なんの因果か、そんな目にあったこともあるけど・笑。


それは、「希」なことだ。



SEXは「奥」が深い。

とくに、「女の人」のSEXは、

男と違って、
どんどんと快楽が深くなる・・・・そして、際限がない。・・・・らしい。


「男」のSEXは、
皆同じだ。

所詮、「射精」その一点の快感のみのものだ。


17歳のSEXも、20歳のSEXも・・・30歳のSEXも、快感の上限は変わらない。


でも、
「女」のSEXは、そうじゃないらしい・・・最大限なら、快楽は男の100倍だとか言われる。


・・・・「100倍」って・笑。


・・・ボクの「100倍」・・・想像もつかない。


女の人には、男とは「桁違い」の快楽を味わうポテンシャルがあるらしい・・・・
まぁ、それを味あわないで人生終わる女の人も多いんだろうけど・・・・


・・・・でも、
それだけの「快楽」・・・・ご褒美がなければ子供なんか産めないってことらしい。


出産というのは命がけの行為だ。


現代ならまだしも、

古来・・・中世・・・

「出産」というのは、命がけの行為だ。


冷静に考えれば、


「二度とごめんだ」


それほどの過酷な行為だ。・・・・となれば、妊娠を避ける・・・・SEXを避ける・・・・それが当然だ。


それを乗り越える「代償」が、女性のSEXの快楽・・・・男の100倍と言われる快楽なんだってことらしい。


・・・・確かに一理あるかもな・・・そう思う。



だから、
女には、SEXで・・・・男とは桁違いの快楽を得る権利があるのよ。



そんなことを、高校時代、歳上の女の人に教え込まれた時期があった・・・



だからといって、
「受け身」の女の人にとって、
SEXの快楽を追求するのは難しい。


なんせSEXには相手が必要だ。


・・・・こうして欲しい・・・

・・・こんなふうにして欲しい・・・


誰にでも言えることじゃない。


・・・・だけど、

今日子さんにとって・・・・もちろん、明菜さんにとっても、

ボクになら言える・・・
ボクにならできる・・・
恥ずかしいことや・・・他人には・・・彼氏には言えない・・・

だけど、「親族の安心感」・・・ボクになら言ってもいい・・・してもいい・・・そんな関係だったんだろう。



今日子さんが腰を振っている・・・・遠慮がちにだ・・・

目を瞑り・・・自分の世界に入り込んでいる・・・・

指で挟んだ乳頭が、固く勃起している。



ボクは、今日子さんの中で最大限に硬くなっていた・・・・その周りをウネウネと・・・ユルユルと動かれ・・・そして締め付けられていく・・・


思わず呻き声が上がる。

・・・・泣きたいほどの気持ち良さだ・・・


・・・まだ・・・まだだ・・・我慢する・・・堪える・・・

今、自ら動けば、瞬時に爆発してしまう・・・もう、そこまでにきていた・・・


下から見る、
女の人の感じてる貌を見ているのが好きだった。


今日子さんは、・・・「姉」とはいえ、

明菜さんよりも「可愛い」と感じる部分が多かった・・・・

今日子さんの、耐える・・・堪える・・・可愛い貌を、もっともっと見ていたかった・・・



今日子さんの鳴き声が大きくなる・・・


「快楽の果て」が近い。


いつもの・・・どこか控えめ、
いつも明菜さんに振り回されてる今日子さんとは別人だ。

腰から下だけが、別の生き物のように畝っている・・・艶めかしく・・・しなやかに流れる。

その上半身を、乳房を掴むことで支える。
倒れないように・・・倒れさせないようにと支える。

今日子さんは、遠慮せずに体重をボクの手に預け、腰を振ることに懸命だ。


エクスタシー。


ガクガクと腰が振られる・・・股間が激しいリズムを刻む。
跨った太腿を拡げ、股間を・・・最も敏感な器官をボクに擦りつけてくる・・・・

ボクの身体・・・心・・・全てが満たされていく・・・・漲った真白なマグマが出口を求めて猛り狂う。・・・決壊を求める!


ギシギシ!・・・・ギシギシ!・・・・ギシギシギシ!!!


ベッドが軋む。

今日子さんの動きがさらに加速する・・・・小さな鳴き声・・・・小さな悲鳴・・・・仰け反っていく・・・仰け反っていく・・・・

倒れさせない。
乳房を掴み、最後の一撃までを膣内・・・雌芯に与える。


小さな絶叫。


同時に、ボクも・・・我慢に我慢を重ねた鋼を解き放った。
引き絞った弦を放った。


決壊。


1回・・・2回・・・3回・・・最後の一滴まで弾け跳ぶ・・・


・・・だらしない呻きを上げた・・・


今日子さんの、跨っていた太腿が収縮する・・・・キュウゥ・・・・ボクの脇腹を締め付けるよう収縮していく・・・・


微かな痙攣・・・・


・・・バタリ・・・


ボクの上に覆いかぶさってきた。


ハァハァ・・・・ハァハァ・・・


密着した互いの胸の鼓動が気持ちいい。

ふたつの心臓が木魂している・・・・


それでも、今日子さんが、全ての体重をボクに預けていないことはわかる。・・・・そんな今日子さんが可愛いと思う。


思わず、髪の毛を撫でた。


いつもは照れる今日子さんも、SEXのこの時、この時はされるがままだ。



・・・・・何分経った・・・・


呼吸が落ち着いてきた。・・・・このまま眠ってしまいたい・・・

明菜さんに責められた果てと同じ・・・今日子さんに絞り切られた・・・・



ドンドンドン!!!

ドンドンドン!!!



ドアをノックする音。

ノックじゃない。

握拳で叩く音だ。



・・・・なんだ・・・・?・・・・誰だ・・・・?



ドンドンドン!!!

ドンドンドン!!!



素早く起きてシャツを着る。ジーンズを履く。



ドアを開けた。

通路の蛍光灯に照らされて、スーツ姿の男がふたり立っていた。


男が胸ポケットに手を入れる。


「警察のものです」


手帳を見せて言った。


・・・・テレビや映画みたいに、本当に胸ポケットから手帳を見せるんだと変な関心をした。



男が、さらに、胸ポケットに手を入れる・・・取り出されたのは写真だ。



「この方をご存知ありませんか?」



写真は、

明菜さんの親父さんだった。


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