超能力者なので、特別なスキルはいりません!

ごぢう だい

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カオルコとサラ

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「…………」お互いに無言が続く…。サラは私が話し始めるのをお茶を飲みながら待っている様子だ。気まずくなってるのは私の方で、サラは堂々としている。
「……私がそんなに信用できないか…?」と、口火を切るサラ。
「そんなわけじゃなくてっ! …けど、どこから話していいのか解らなくて…‥、ほらっ! 話の順番ってあるでしょう? それを今頭の中で組み立ててるトコロなの……」
「ふむ……」と、一応納得してお茶を一口飲むサラ。このままでは時間ばかりが過ぎて行くだけだ……。遅くなるとモニカお姉ちゃんにも心配かけてしまう…。
「春風亭のモニカの事なら心配いらんぞ? ギルドから使いを出して遅くなるかもと伝えてある」と、こちらの考えを先読みしてサラ。もしかして精神感応? なわけないか…。サラほどの人なら、私みたいな小娘の考えはお見通しだろうし…。
「実はね…、私……」意を決して話す。「私…、超能力者なんだ……」思わず声が小さくなる。
 私の秘密を打ち明けたサラはポカーンとした顔で「チョーノーリョクシャ? 何だそれは?」と訊いてくる。ソファの上でズッコケそうになる私。ああもぅっ! 説明するより見せる方が理解が早いか!
「いい? これは魔法じゃないの。見ても驚かないでね?」と最初にサラに釘を刺しておく。ソファの後ろに置いてあるサラの執務机の上にあるインク瓶を狙う。するとそのインク瓶は、ふわりと浮いて、静かに私の掌に置かれる。
 その現象を見て目を丸くするサラ。そして「何だこの力はっ!?」と、毎度の事ながらテーブル越しに身を乗り出して私の両肩を掴み、前後に揺さぶる。毎度の事ながら痛い……。
「ちょ…、ちょっと落ち着いて…、ちゃんと説明するからっ!!」身体を前後に揺さぶられながらサラを宥める私。その言葉にハッとなり、サラは手を離す。痛ぇ。
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「今サラさんに見せた能力は念動力、サイコキネシスって言って、意識した物体を自在に動かせる能力なの。昨日サラさんと害鳥退治に行った時に見せたアレも、実はこの力でコントロールしてたの…」
「なるほど…、あのブーメランの変態軌道はそれが正体だったのか…」お願いだから変態って言うの止めてっ!
「確かに魔法とは違う力だ……。しかも詠唱を必要とする魔法よりも、俊敏性や反応力、汎用性に優れている…」と、神妙な顔でサラが言う。そして何かを思い出したように「ちょっとお前のカードを貸してみろ」と言う。
「…………」私はギルドカードを黙って差し出す。そのカードは魔動機に差し込まれ、私自身の詳細なプロフィールがウィンドウに表示される。そして……
「何なんだっ? この異常なパラメータはっ!?」とサラが大声で驚く。続けて「精神力が9999だとぅっ!?」と怒鳴るように言う。声でけぇっってっ!! 外に聞こえちゃうってっ!! 今度は私がサラを抑えに掛かる。「す…スマン…」と我に返りサラ。
「…あのサイコナンチャラの他に出来る事は…?」サラが更に訊いてくる。サイコキネシスね。
「他には…、透視能力クレアボヤンスと…、発火能力パイロキネシス……」
「透視能力だと? 敵が隠し持ってる武器とかを投資できるのかっ?」
「いや…、見ようと思えば全裸まで見れるけど……?」何も考えずに言うと、急にサラが顔を真っ赤にして服の上から腕で胸を隠して足を捩る。
 そんなサラの仕草を見て、自分が何を言ったのかを自覚する。急激に顔が火照って「ちっ…、違いますっ!! これまでサラさんの裸は一度も見てませんっ!! 本当ですっ!」慌てて弁解する私。
「……じゃあ何でお前は私の身体に顔を埋める…?」顔を真っ赤にしながら訴えてくるサラ。チクショウっ! その仕草と顔が可愛いぜサラ…。けどその質問に対して、私は恥ずかしい答えを返さなきゃならない。
「……そ、それは…、単に私が…、美人さんとか可愛い娘のいい匂いがが好きって言うだけで……」顔を伏せながら言う私……。ごめん…、誰か私を殺して……?
「…変態かお前は……」サラが姿勢を直しながら軽蔑した口調で言う。どうやら「裸は見てない」と言う私の主張を信じてくれたようだ。それにしても何この絵?私はまだすっげぇ恥ずかしいんだけど……。
「…あと、瞬間移動とは?」サラが質問する。「テレポーテーションの事ですね」と私。説明するよりもやって見せると「カオルコは転移魔法を使えるのか?と訊いて来た。そこで私は転移魔法との違いを五分くらい掛かって説明した。
「…えー…、他はパイ…ナンチャラだっけか?」サラが体制を整えながら訊いてくる。「パイロキネシス。発火能力の事ですね」と、平静を装いながら言う私。
「…どんな能力だ?」真剣な顔のサラ。私は「意識した物体を発火させる能力です」と真面目にこたえた。「…………」サラは私の目を見たまま沈黙する…。そして「これでそのチョーノーリョクとやらの能力は全部か?」と質問してくる。私は「はい…」と答えた。
 それからの話は、私がこの能力を得た落雷事件や搔い摘んだ過去の事。そして私の能力は絶対機密だと言う事。危機的状況でのみ使用を許可すると言う事。それ以外の状況で使った場合は、ココタ村のギルドとしては一切の責任は取らないと言う事を、私とサラと二人で取り決め合った。
 だが私は、一つだけサラに秘密にしていた事がある。精神感応--テレパシー能力の事だ。自分が何を考え、それをどう思ってるかと言うのを相手に読まれると言うのは、相手に恐れられる。つまりは嫌われる。そしてまた孤独になる…。私がテレパシーを使う場合は、その対象に意識を向けないと発動しないのだが、「テレパシーが使える」と言う事実を知った相手はそうじゃなくなる。私に対して疑心暗鬼になり、今まで接していた態度が変わる。
 十歳で超能力に目覚めた私は、その幼さ故に友達になってくれそうな相手に対してその能力を使ってしまい、更にそれが相手に解ってしまい、ずっと独りぼっちで過ごしてきた。
 私はサラに嫌われたくない。私の事を心配してイジワルしてくれる魅力的なサラに嫌われたくない。私の事を妹と呼んでくれたモニカお姉ちゃんに嫌われたくない。この世界に来て、私に優しくしてくれた人達に嫌われたくない。だから絶対にこの事は秘密にしておくのだ。
 そう決心しながらギルドを出て、家路に向かうのだった。
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