夏目の日常

連鎖

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二人の日常

海水浴②

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 海の家で夏目から言われた準備をしていた濱田の所には、
 新しいお客様が現れていた。

「オヤジ。荷物が残っているようだが、もうこれを解体していいかぁ?」

 年齢は三十代入った程度、木之下 邦家
 160cm前半の小柄で痩せた短髪の男で、
 笑っても目が笑っていなく、冷たい蛇のような目で、
 相手にも気持ち悪いとしか印象を与えられなかった。

 あと特徴的な痩せた身体も、海の近くに住んでいるのに、
 日焼けもせずに真っ白で、その独特な印象を一段と強くしていた。

「すまない。悪いが、今日は店に客が来てるから明日にしてくれ。」
「めんどくせええぇから、今日、今すぐやろうぜええぇぇ。
 客の相手なら、オヤジが適当にしていればいいだろ?」
「でもなぁ。。」
「俺が、その間に裏手から解体してやるからよォ。
 まあ、ぶっ壊す時に多少は音がするけどいいよな!オヤジ。ぎゃはは。」

 濱田の事をオヤジとまで言っているのだが、
 尊敬まではされてはいないようで、相手が困っているのを無視して、
 自分の事だけを考えて、店を壊そうとしていた。

「ちょっと待て、解体の騒音や振動で、
 客に帰って貰ったら困るんだ。だから、今日はやめてくれ。」
「上客とかなのかぁあ?こんな、夏休みも終わった時期に来ないだろ?
 もし来たって、こんな田舎に来る上客ってのなぁああ?ぎゃははははは。
 いいよな。オヤジよぉ。もう壊そうぜぇえええ。面倒なんだよなぁあ。」

「だから待て。上客って言っても、あっちじゃなく、仕事の上客だ!
 来たのは、変態カップルのお忍び旅行ってやつらしくてな、
 女は、さっさと家に帰りたいって愚痴っているんだが、
 相手の事が好きらしく、イヤイヤ露出の旅行に付き合っているんだよ。」

 一日程度の遅れなど、田舎ではよくある話だし、
 木ノ下の仕事だって、年末前の暇な時期なのも知っているので、
 濱田としては、一日だけでも解体を待って欲しいと頼んでいた。

「そうか、露出なら、女はババアかデブだろ?
 ああ、そうか。違ったか?ちびっ子か?ガキかぁ?ぎゃははははは。
 いたよなあぁ。ガリチビっての。じゃあァ諦めてくれよな。ギャハハ。」
「ちがうぞ。違うからな。」
「俺は、ババアと。。デブにチビもガリだって勘弁してくれェ。ぎゃはは。
 なあオヤジぃ。俺は、さっさと壊して次の準備をしたいんだ。
 いいだろぉおお。なあ壊そうぜぇえ。もういいよなぁああ!」

(へえェえぇ、濱田も必死だなぁ。
 こんな小屋を壊すのは簡単だが、何かありそうだなぁぁぁ。
 アハハ。じゃあ少し位は無理言って、多少は乗せてやろっかアァァ。)

 こういう男らしく、相手が困っている事など、
 付け入る隙にしか考えていないので、
 今から嫌がって、どうやって追加でお金を出させようかと考えていた。

「まあ待て。。待てって。若いし、最高にいい女だぞ。いい女なんだよ!
 チビでも無いし、背も高くてスタイルなんか最高な女なんだって、
 もちろん、デブでもガリでもないぞ、違うからな!絶対に違うぞ。
 あとな、胸もデカいが、ケツもデカくて、若くてイイ。女だからな!」

 二人にとっても、夏目がいい獲物だということは間違いないが、
 濱田が覗いて撮影していた映像を、木ノ下に素直に見せれば簡単だが、
 何故か身振り手振りだけで必死に説明していた。

「でも、オヤジが言う若いってのモナァア。あと、可愛いって。。。なぁ。
 オヤジの場合、40ってのでも可愛いだしなぁ?50でもだろぉ。」
「そう言うなって、可愛いし、いい女なんだから。すっごい美人だからな。
 あと、その籠を覗いてみろ。見てみろよ!そこだ。それだからな。
 それを女に着させるような、変態が彼氏だぞ。ちゃんと見てみろよ!」

 濱田はそういう気遣いが出来るのか、
 籠の中に入っているのは、ベージュのロングワンピースの上に、
 枠だけの赤いブラに、白い枠の割れたショーツが、
 商品棚に置かれているように、綺麗に折り畳まれていた。

「ピラ。。ピラピラ。。へぇぇぇ。白のオープンショーツ。
 フゥうん。ぴらぴら。赤の枠ブラかよ。で。。
 ぐしゃ。。このベージュのロングワンピースかよぉ。ど変態だなぁあ。」
 
 木ノ下は、女が着ているものになど興味が無く、
 肌に直接着けていた下着など、気持ち悪くて触りたくも無いのか、
 適当に布をつまみ上げて確認すると、籠の中に乱暴に放り投げていた。

「この格好を女にさせてドライブさせるような男だ。なら。。」
「ああ、宿泊は源氏旅館か?」「ああ。そうだ。」
「やっぱり、目的は混浴に乱交ってやつか?へぇぇぇ。この時期にかぁ。」
「それは分からないが、混浴ってのは女も理解していたぞ。」

 濱田も夏目を旅館で楽しませてあげたい気持ちもあるが、
 最近は暴走することも多いので、少し持て余し気味なのもあって、
 いつものように木ノ下との話を進めて、泊まらせるのがいいのか、
 それとも彼女を説得して、
 泊まるのを止めさせたらいいのかを悩んでいた。

「そうか、それで女が嫌がって、帰りそうって感じなのか。あはははっ。」
「わかるよな。解体は明日にしてくれ。いいよな。」
「楽しめそうなのはわかったが、やっぱり明日はダメだ。
 俺も忙しいんだよ。明日は。ああ、残念だなぁ。あす。明日かアァぁ。」

 強い風が吹けば壊れそうな小屋など、すぐ解体が出来るし、
 仕事の少ない時期なので、木ノ下が暇な事も知っているので、
 アイツが何か追加でお金が欲しいのは、二人ともわかっていた。

「そっかぁああ。あーあ。帰っちまうなぁ。残念だなぁ。そぉおかぁああ。
 誰が見ているかわからない海水浴場で、全裸で撮影してくれるような、
 若い、可愛い、美人な、ベタ惚れ女を連れたカップルを、
 仕事もさせずに返しちまう、温泉も宴会もせずに返すって、
 あーあ、残念ダァ。はァ。。ほんっとに残念ダァ。そうかぁ。はぁあ。」

(お金を追加で払うのは、別にいいんだが、嘘だと思われるのもなぁぁぁ。
 さあさあさあさあ。きのしたくん?ほらほら、言えよ木ノ下っくん。)

 海の家を解体する費用などは大したことではないが、
 以前から気になっていた木ノ下の態度を、少しは直せるかもと、
 相手が何か言い返してくるように、挑発的に言っていた。

「オヤジ。ほんっとに全裸か?」「ほぼな。」
「いい女なんだな。」「最高にいい女だ。合っていたら。いいよなァァ?」
「あはは。いいぜぇえ。解体料金はチャラでいいぞ。いいゾ。ぎゃはは。
 わかい。ワカイだぞ!俺が見てだからな!
 俺が見て、いい女で、わ。。か。。い。。女な!わかいだぞ。若いな。
 もし違っていたら。。。オヤジもいいよな。ギャハハハハハ。」

(まあ若くても、ブサイクだと言えばいいし、
 ちょいデブでもデブだって言えば、イイだけ。若いなど気持ちだからな。
 アハハハハハ。これで、今回は俺が勝ちダナァ。いやぁ。はまちゃん。)

 もちろん、お互いをよく知っている暇つぶしでの言い合いだし、
 答えなど自分の気持ちだけで決められるので、
 とくに気にした感じもなく、濱田が言っていた提案に乗っていた。

「いいぞォオオ。いいぞ。あはははっ。認めてやるよ。いいぞぉ。
 今、変態彼氏の前で撮影会をしているから、確かめてくればいい。
 そして、いい女って確認してこい。いやぁ。タダかぁ。あははは。」

(見てこいよ。まあ、映像を見せてやっても良かったんだがな。。。。)

 もちろん、夏目を盗撮した映像を見せてやれば、
 木ノ下にもわかって貰えると知っていたが、
 さっき話していた彼女の事を思い出して笑っていた。

 。

 濱田が楽しく録画映像を見ながら仕事をしていると、

「おい。。おいオヤジ。。あ。。あの女。。アレか?あれでいいんだな。」

 すごく慌てた顔をした木之下が、海の家に慌てて戻ってきた。

「いい女だろぉお。で。。あの女が混浴だってよ。あはは。あの子がだぞ。
 上手く行けば、その後のお楽しみも追加で楽しめるんだぞ?」
「ほ。。本当に旅館に来るのか?本当なのか!ほんとうだよなああぁ。」
「女から聞いているが嘘では無いと思うぞ。でっ。水着は、どうだった?」

(さすがに、夏目さんを相手にして、ブス、デブ、ガリ、チビ、
 ガキとかは言えないよな。無理だろうなぁああ。
 アハハハハハ。驚いてる。いやぁあ、スッキリするなぁ。アハハハハ。)

 さっきまで、グチグチと不満を言っていた木ノ下が、
 夏目を見てきた後では手のひら返しをして、
 彼女を美女だったと驚いている姿も滑稽だし、
 欲しがっている顔も馬鹿っぽくて、久しぶりに心の中で笑っていた。

 ついさっきまでは、濱田のお願いを無視して、
 さっさと海の家を解体して、夏目を帰らせようとしていたのに、
 今では、どうやったら旅館に泊まらせて、どうやったら混浴に入らせ、
 もちろん、その先までと言い出した木ノ下に呆れていた 。

「スゲぇなあ。あんな格好して、すぐそばで撮影していたぞ。
 ニップレスに、極小シームレスショーツ。しかも色も赤だぞ、
 選んだアイツも、見せる事しか考えていない変態野郎だなァアア。」

(あれだけの美人なのに、誰が見るかわからん場所で、
 局部だけ隠している女を、俺が楽しめる?アイツを好きにできるんだ。
 ああ、いつものように。。そうだなぁ。そうだよ。そろそろ飽きたなぁ。
 くたびれたゴミと交換ってのも。アハハハハ。いいねぇ。いいぞぉお。)

 夏目の格好は、とてもイヤらしく刺激的だったし、
 最近楽しんだ女の中でも、極上と言っていい程に熟れた身体に、
 もちろん顔や目も好みで、とても魅力的で是非泣かせてみたかった。

 もしアイツを好きにできると募集すれば、多くの男達を集められるし、
 もちろん、その時の映像をネットに流せば、
 世界中にファンが出来そうだと木ノ下も喜んでいた。

「そうだろぉ。そういう男に引っかかる女も大変だァ。可愛そうになぁ。」
「それは言うなよ。俺たちだって同じだからな。ギャハハハハハ。」

(まずは、たっぷり全員で調教が必要だよな。ああ、あの女を調教なぁ。)

 少し気になる事があったようだが、
 だんだんと、夏目の事ばかりが頭を満たし木ノ下の顔が変わっていた。

「そういえば、女は恥ずかしそうに必死に隠していたが、
 近づく前から、こっちは見ていたんだよ。
 こっちは全て知っていて、男の背に隠れながら近づいていたんだしな。
 あはは。タップリ楽しまさせて貰った後なのに、隠していたぜ。
 その後に怒ってもなァ。アハハハ。いやぁぁぁ笑った。アハハ。」

(あの顔。目がいいねぇ。従順なのも飽きてきたし、
 今度もタップリ調教してやるよ。なつっめぇえ。アハハ。あとでな。)

 夏目は全裸と言ってもいい格好で、明るい日差しがある時間に外に出て、
 その格好のまま周りから見える砂浜で、楽しそうに写真を撮影していた。

 その砂浜は、木ノ下が子供の頃から生活している見慣れた場所で、
 その場所で、夏目が局部しか隠していない格好で遊んでいたのが、
 一段と、この男の滾る心を鷲掴みにしていた。

 もちろん、夏目の目が特に木ノ下好みで、
 これからどうやって泣かせてやろうかと、嬉しそうに笑っていた。

「男はどうだった?中年のデブで金持ちだろ?」
「違う。若い男で顔も芸能人並みにカッコよかったぞ。」
「なっちゃんも、その顔にベタ惚れってのか、
 可愛そうになぁ。なっちゃん。可哀想にぃ。そうだったんだなあぁぁ。」

(そういう男が好きなんだね。夏目さんは、はぁ。どうする?
 はぁ、やっぱり約束通りか?やっぱりか?でもなぁ。いいのか?)

 夏目の相手がお金持ちで、
 貧乏な彼女を、お金で騙して付き合わせていると思っていたが、
 木ノ下の言う通りだとすれば、カッコイイ彼のお願いを断れなくて、
 彼女もすべてわかって、ここに来ていると思い直していた。

「オヤジ。なっちゃんってのは、女でいいんだろ?」「ああ。」
「あの女も指輪をしていたが、ホストに貢いでいる主婦ってのか?」
「そこまでは知らねえ。まあ、知っているのは、
 なっちゃんは、さっさと帰りたい。男は混浴に入りたい。
 あの水着は相手の趣味。。。なら。。。わかるだろ?」

(ああ、まだあったか。ホストに入れ込んだキャストか?
 でも、夏目さんが入れ込まれるのならわかるが、
 ホストに入れ込むような人なのか?うぅん。それが本当なのか?)

 木ノ下が言う通りかもしれないし、実は違っているのかもしれないし、
 頼まれた通りにするしか選ぶ事が出来ない濱田は、
 彼が言う通りに、全て進めようとしていた。

「ああ、そうだなぁ。そうだよなぁ。それが目的だろ!」
「じゃあ、賭けは俺の勝ち。残りの準備は頼むぞ。チャラだぞ。」
「ああ、わかった。旅館は貸切で用意しておくから、
 オヤジ。絶対に女を連れてきてくれよ。
 ぜったいダゾ。絶対に。。。ぜったいに連れてこいよな。ギャハハ。」

(なつめぇえええええ。アハハ。待っていてやるよ。俺達がなぁあ。
 泣きわめいたって、あそこは俺たちの巣だからな。アハハハ。)

 仲間たちしかいない旅館に、夏目を来させてしまえば、
 仲間達と取り囲んで、あの、泣きわめくのが良く似合う女を、
 たっぷり楽しめる。犯せる。調教を施せる。
 これからそこで、新しい獲物を飼い続ける事ばかりを考えていた。

「ああ、わかった。料理や酒の準備もよろしく頼むぞ。
 大丈夫。いろいろ言いくるめて旅館に連れていくからな。」

(夏目さん。まだ帰れますよ。今ならまだ逃げれるんですよ。でもなぁ。)

 木ノ下にはそう言っているが、やっぱり夏目をその場所に連れて行って、
 楽しませるなど、いいのか?本当に連れていくのか?と、
 嬉しそうに帰っていく木ノ下を見ながら、不思議な気持ちになっていた。


海水浴②
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