【完結】愛するものがすべて。 愛しい姫君のために大納言さまに我が身を差し出す献女の正体は?

あっ ふーこ賦夘

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第1話 牡丹と椿。2人の距離はまだ遠い。

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 わらわは、椿つばき
 わらわが愛しておるのは、右大臣家の可愛いらしい姫君《牡丹ボタン》さま、ただおひとり。

 牡丹ボタンさまは、わらわの命の恩人であり、わらわが全てをかけてその望みをかなえたいと思わずにはいられない、純粋なお方。

 わらわと、牡丹さまの出会いは春まだ浅い野辺のべに少女であった牡丹さまがお出かけになっていた折のことであった。

┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

「はあ、はあ。」

 やつはまいたようじゃが、体が思うように動かない。

 草むらの影に身をひそめあちこちに血のにじんだおのが体からむせる血の匂いに意識が薄らいでいく。

「まあ!ひどい怪我!」

 だれじゃ?わらわを抱き上げる柔らかく優しげなこの腕は?

「可哀想な小狐ちゃん、一体だれがこんな酷いことを・・・。もう大丈夫。私が助けてあげますからね。」

 優しく温かいオーラに包まれて、安堵のもやの中に落ちていく意識。

 この時、この辺りを古くから縄張りにしていた猪神の領域にうっかり足を踏み入れてしまってとんだ災難にあったわらわを、助けてくれたのが右大臣家の二の姫、牡丹さまであったことは後々わかった。

┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

「姫さま、そんなケモノを連れ帰って・・・。病気でも持っていたらどうするんですか?」

 病気じゃと?
 オノレ!高貴な妖狐ようこ族のわらわを侮辱するとは!
 なんたる無礼。

 オロオロと新しい布を持ってため息まじりにたしなめる女官の声なんて牡丹には届かないよう。
 ガン無視で自分のお部屋に連れ帰った小狐のお世話をせっせとやいてふたりの世界に入り込んでいる。

「まあ、なんて真っ白でキレイな小狐ちゃん。元気になるまで私のお部屋で一緒に過ごしましょうね。」

 真ん丸な目をパチパチさせて不思議そうに自分を眺める小狐、椿。

 この姫は本気でわらわを心配しておるのか???

「わぁー。今、ありがとうってゆってくれたわ。いいのですよ!私をお母さんだと思って甘えてくださいな。」

 にっこり微笑みかける笑顔につい心を許してしまう。
 どのみちこの怪我では身動きはできないし、今動けばまだ狙っているかもしれぬ猪神にどんな目にあわされるか知れたものではない。
 大人しくしているしかないのう。
はあ。

「可愛い!照れてるのね。何か食べ物を?何がいいかしら??」

 照れてなどおらぬ!

 油あげがよいのー。あげ。揚げー!

「あっ。木の実よね。」

 がくっ。 

 油揚げじゃ、あーげー!!

 呆れてみている女官達にふりかえる牡丹。

「これ、木の実を探してきておくれ!いろんな木の実がいいわ!」

「この時期は木の実はあまり・・・。木の芽はどうでしょう?」

 いや、油揚げがよいのじゃ!

「では、木の芽を。」

 あーげーじゃー!!

 余り動けない体をもたげて目で訴えてみる、小狐椿。

「ふふ。この子喜んでるみたい!待っててね。」

・・・。ぴえん。
 まあ、なんでもよいわ。


 数日看病を続けられると、元々強い妖力を秘めておるわらわは、体力も妖力も回復してきた。

 相変わらず、どこかズレてる憎めない姫君との生活。
 この姫君ときたら余程よほどわらわが可愛いらしく、どこにいくにも離してくれぬ。

 体が動くようになればこんな屋敷に用はない。
 とっととおさらばして、住処に戻ればよいのじゃが・・・。

「可愛い小狐ちゃん。みて椿。」

  んっ?椿とはわらわの名前。
 わらわの名前と同じ花。

「キレイな真っ白の小狐ちゃんに赤い椿が良く似合うわあ!」

  ぽっ。

 椿の花輪を頭に被せてうっとりとえつに入る牡丹に見つめられると悪い気がしない。

「あなたの名前は椿にしましょう。小狐、椿。椿さま♥️」

   ぽぽっ。

 わらわの名前は元々、椿じゃが。
 わらわの思っていることはまるでわからぬようじゃが、わらわの名前を当てるとは。

 だが、このままこの姫の側で暮らすことは。




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