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第1話 なんだ此奴?

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 なんだ此奴?
 それが初対面の第一印象でした。
 応接室のテーブルの対面に座る男。アラサーぐらいでオールバックに決めている、どちらかというと渋いオジサン。体はジムにでもいっているのか締まっていて、黒に近いグレースーツ、それも体にフィットしているところから仕立て服を着こなしている。ここまでなら、仕立て服を保っていることからお金持ちのオジサンとなるのだが。
 二人きりの応接室で対面に座る私の前で大事そうに抱えるカバンから人形を出したところで空気が一変した。
 オジサンは渋い表情のまま大事そうに人形を取り出すと、お姫様でも扱うようにテーブルの上に座らせた。人形は、昔風の日本人形でなく今風のドールといった感じで、アニメの世界から飛び出してきたような瞳をしている。そしてドールがきちんと座っているのを確認すると私の方に向く。それもまじめな表情のままで。
 もう一度言おう、なんだ此奴?
「小松菜さんから紹介されました、探偵の出閒 徹と言いいます」
 出閒は丁寧に頭を下げつつ名刺を差し出す。礼儀正しく社会人として申し分ない人なのだが、隣のドールがこっち見ている。
 キモイキモイ。
「お天気お姉さんをしてます愛宕と言います。よろこしくね~」
 キモさを飲み込み、多少引きつった営業スマイルで挨拶した。
「ご丁寧にどうも。それでは早速仕事の話に入りましょう。
 ストーカーに悩まされていると?」 
 出閒はきりっと締まった顔で聞いてくるが、隣のドールが全てを帳消しにする。
 私はお天気お姉さんをしている、ブレイクはしてないがローカル局でやっとこレギュラーのお天気お姉さんの役をゲットしたところで、ストーカーに付きまとわれ出した。
 売れないグラビアアイドルを事務所は本気で守ってくれない。被害が出ないのに警察は本気で守ってくれない。
 怖くて怖くてしょうが無いが、ブレイクするまでと彼氏もいない私を守ってくれる男もいない。
 そこで事務所の先輩に相談したら、ストーカーに強い探偵を紹介されて今に至る。
正直出費が痛いが月賦もOKというし、最近ストーカーにアイドルが刺された事件もありなりふり構ってられなくなった。
そして仕事が終わった後直ぐにと言うことで局の応接間を借りて二人っきりで会うことになったのだが・・・。
 ハッキリ言おう、目の前の男が怖い、キモイ、帰りたい。
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-えいえんのせかい-

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