魔女ッ娘天使くるくるリン

コトナガレ ガク

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第四話 中間管理職は辛いよ

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わたし くるくるリン 神様から迷える人間を救うように使命を授かったの
 辛い溜息一つで あなたのもとにくるりん。

「…というわけで、このプロジェクトは…」
「なんだね。そのプロジェクトは」
 若手が入念に準備し意気揚々とプレゼンをする中、部長が失笑した。
「そうだ。なんだそのプロジェクトは、お粗末にも程があるぞ」
「しかし、これは主任と相談して…」
「俺は、知らん」
「兎に角、そのプロジェクトは、こう変更しなさい」
「っさすが部長、素晴らしい指示です」
「そんな、それは最初私は出した計画じゃないですか、主任が変えろと…」
「黙りなさいっ。人の所為にするなど、君はビジネスマンとしての自覚はあるのかね」
 俺は若手の声を塗り潰して叱責した。

「はあ~っ」
 バーカウンターに重い溜息を吹きかけた。
「お客さん、そんな溜息をついていると悪魔がやってきますよ」
「ははっマスターも冗談を言うんだね」
 溜息が良くないことは分かるが、今日の会議を思い返すと気が重くなる。 
 自分でも分かっている、下に厳しく、上にへつらう。
 将来自分はこうなるまいと思っていた男に自分はなっていく。
 しかし、仕方ないだろ。そうでなくては、出世出来ない。
 他の会社じゃ知らないが、少なくても我が会社では、上にへつらわなくては生きていけない。
 部下達は、さぞや俺のことを嫌って軽蔑していることだろう。
「はあ~っ」
 また、重い溜息を零す。
 そんな、俺の前に、スッとグラスが置かれた。
  甘い香りがする、ホットミルクだ。
「マスターこれは?」
「あちらのお客様からです」
 マスターの指し示す方を見ると、そこにはピンクのトリプルテールを揺らす女の子がいた。
 なんだ? 俺の娘なんか、ゴミ箱に捨てたくなるくらい可愛いじゃないか。
 いや、そんなことが問題じゃない。
 なんで、あんな幼い子がバーになんかいるんだ。
 少女は、とことこ近寄ってくる。
「何かお悩みですか?」
 少女は微笑みと共に尋ね、俺の隣の席にぴょんと飛び乗る。
 気取った台詞とのギャップが可愛すぎる。
「ふっお嬢ちゃんには言ってもしょうがないことだ」
 俺も少し気取ってグラスを揺らしながら答える。
「そう言わず。くるくるリンに話してみるりん。
 バーは愚痴の吐き捨て場、リンに囁くとらくりん」
「そうかもな」
 思えば、俺の愚痴を聞いてくれるような人はいない。
 妻とは冷え切り、娘は私を避ける。
 上司に言えるわけもなく、部下には嫌われてる。
 俺は、バーで出会ったこの可愛い少女に、ふと零したくなった。
 この少女なら、私の悩みを聞いてくれると本能的に悟ったのかもしれない。
「人間、どうして思い描いた大人になれないんだろう」
「あなたは、なれなかったりん」
「ああ。強きを挫き、弱きを助ける。
 それが、気付けば、弱気を挫き、強気にへつらうだ。
 理想と、裏表が逆になってしまったよ」
「そうなのりん」
「ああ。でもそれが生きるということかもしれないな」
「それじゃ、駄目なのりん?」
 りんは、流し目で尋ねると、ホットミルクを一口啜った。
「会社人間としては駄目じゃない。でも人間としてはどうなのだろう?」
 酒は口を軽くする、きっと明日にはこんなセリフ忘れて部下をいびるのだろう。
 だから次のセリフも感傷に酔った、ただの戯れ言。
「これからも人に嫌われ続けるのかな~。はあ~、いっそ裏表逆になりたいよ」
「そのお願い叶えるりん」
「えっ?」
「言ってしまいましたねお客さん。可哀想に」
 マスターは、これ以上見たくないとばかりに、さっとこちらに背を向ける。
「何をだ」
 俺が戸惑う内に、リンは光り輝き、頭には天使の輪っか、背中には純白の翼が羽ばたく。
「くるくるくるくる、くるくるりん。
  あなたのお願いかなえるりん。マジックハンド」
 リンの手に、おもちゃによくある、棒の先に腕が付いているマジックハンドが表れた。
「これでズバッと、う・ら・が・え・し」
 不吉な響きと共に、私の口の中に、マジックハンドが突っ込まれた。
 うご、異物の挿入に吐きそうになったが、構わずマジックハンドは、ぐいぐい入ってくる。
 食道を通りぬけ、胃まで侵入してくる。
 気持ち悪い、これ胃カメラの比じゃない。そもそも麻酔もないので、痛いし気持ち悪い。
「くるくるくる、りんりんりん。どこまでいくかな~」
 涙で霞む視界に、楽しそうに口すさぶ笑顔が見える。
 うごごごごご、小腸大腸を通過し、とうとうマジックハンドは、
 出口から、出てしまった。
「マジックハンドオープンクローズ」
 マジックハンドに、私の尻はぎゅっと掴まれた。
「そーーーーれ、うっらがえし。うっらがえし」
 リンはマジックハンドを引き抜きだした。
 つられて、俺の尻が出口に吸い込まれ行く。
 ちょっとまてっ、俺はどうなってしまうんだ?
 俺の身体が、どんどん出口に飲み込まれていき。
 マジックハンドも入り口に戻っていく。
 俺は俺は、裏返されていく?
 足や尻が、ぐにゅぐにゅ入り込んだと思うと、
 胃が限界一杯まで膨らみ、くっ苦しい。食い過ぎなんてもんじゃない。
 気を失いたいのに、失えない。
「そーーーれ。裏返った」
 ぽんっという音と共に私は、身体の裏表が裏返ってしまった。
「ふう、お願い叶えたりん」
 リンは、一仕事終えたビールを飲むように、ミルクをおいしそうに飲む干した。
「じゃあ、お仕事頑張ってりん」
「ええ、りんちゃんも頑張ってね」

「部長、こんなのは納得出来ません。
 これでは、部下が付いてきません」
「よくやったね。失敗は気にしないで、責任は私が持つわ」
 悪魔と出会った日以来私は、部下を守り、上には刃向かうようになった。
 私は上に煙たがるようになったが、不思議なことに一目置くようにもなった。
 部下にも慕われだし、なんか中世の騎士のような忠誠心を見せる人まで出てくる。
 娘も私に心を開いてくれるようになり、今ではたまに一緒にお風呂に入る。
 人生とは分からないものね。

 ほんとこれまでと、世の中の味方が一変した。
 まあ、溜息なんかつかないで頑張りましょう。
 でも、知らなかったわ。
 月に一度来るものが、あんなに辛いなんて。
 いっそ私も一人くらい産んでみようかしら。
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