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偽善者と廻る縁 二十八月目
偽善者と他世界見学 その11
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ビオトープを出た俺たちは、再びスリース王国の見学を再開する。
知っていることで、何か起き得る変化があるだろうと、まずは地形を覚えていった。
俺はこの街をすべて知っているわけでもないし、イベントフラグを把握しているわけでもない……知らないところで何かが起きていることなんて、ざらにあるわけだし。
スーを背負ったまま、歩を進める。
特に絡まれるということも、逆に絡まれている様子を見ることもない。
祈念者が歩けば必ず事件が起きるような世界は、火サスか少年探偵の世界だけだろう。
世界はそれと比べればもっと平和であり、トラブルはあまり起きないのだ。
「スーは何か感じ取っているか?」
「……ん、全然」
「やっぱりそうだよな。前に魔剣といっしょに来たときは、暗殺者と一戦交えたな。どういう確率なんだろうな、偶然街を訪れたその日に暗殺が決行されるって」
「奇跡だと思う」
奇跡は起こすものではなく叶えるものだという考えがあるが、そういう奇跡は望まれはしないだろうな。
だがまあ、さすがに人の生き死にに関わるようなトラブルを俺は望みはしないさ。
せめて暴行……いや、魔法による脅しとかでも偽善らしく動けるのになー。
スーには現在、スリース王国が構築した結界に干渉してもらっている。
内部で起きていることを、スーは感知することができる……そのためだった。
その気になれば、結界の温度調整を弄ることもできてしまう。
ある意味今のスーこそが、もっとも危機的なイベントを起こせるんだよな。
「やること……は、特に無いか。それじゃあやっぱり、ただ歩くだけの時間になるか」
「……ん、いいと思う」
「そうだな、さっきの街でも病気の母親がいるとかそういう感じになったし、今回は本格的に何もしない時間でいいかもな」
スーを背負って歩くだけ、それはある意味無駄な時間を過ごしていると言えよう。
だが俺とスーにとっては、そういう時間にも価値があるのだ。
少なくとも、ただ暇な時間というわけではないだろう。
スーがいっしょに居るのだ、話し合う相手は居るの──
「……Zzz」
「まあ、スーを休ませた方がいいか。暇にはならない……んだよな?」
頼もしい話し相手が居なくなってしまった以上、先ほどまでの自信は失われた。
街の中の探索も、一人でやってもあまり面白くないと思うし。
なら、それ以外の何かで時間を潰してみなければならない。
これまではなかったが、スーも寝てしまったし……起きるまではやってみよう。
◆ □ ◆ □ ◆
イテルナ寒地
次の目的地であるコールザード王国に移動するため、スリース王国を出る。
これまでと違って、今回はフィールドに出てそのまま向かう予定だ。
スーが寝ている以上、その安全を守るのは俺だけしか居ない。
縛りも大半は解除して、ある程度自由な状態で活動を行うことを決めた。
吹雪く雪山。
極寒に近い凍てつく大地だが、俺とスーはその体一つで移動中だ……事前にスーが張ってくれた、防寒の結界が作動中だからだな。
「スー、借りるぞ──“忌避結界”」
結界魔法、正確にはもう一つリッカの精神魔法を混ぜたのだが……とにかくその魔法を発動し、周囲に展開する。
結界に忌避感を覚え、魔物たちが近づかなくなるという代物だ。
スーの安全を第一にする以上、万全の態勢で移動を行わなければならない。
「“結界歩行”、“加速結界”」
空に足の踏み場を用意し、一段一段、文字通りの高みへと昇っていく。
吹雪を掻き分け、進んでいく……そして一定地点に到達すると、水平に歩き始める。
「エリアボスとの戦闘のアレが出ると、なんか無粋だしな……しかしまあ、視界いっぱい雪でいっぱいだよ──“探査結界”」
このフィールドにはエリアボスが配置されているので、領域ごと避けることにした。
理由はシンプル、干渉時に発生する演出でスーを起こしたくないから。
魔力をたくさん籠めて、新しく構築する結界の射程距離を広げた。
スーと違って魔法を介さなければ精度が低いが、それでも視界に頼らず辺りを探れる。
「前回は馬車で行ったんだっけ? まあ、お客人といっしょにだったしな……」
スーにも語った暗殺対象と共に、お隣の国まで行ってたからな。
偽善中だったから、いろいろと楽しみながら行った記憶があるよ。
「今さらながら、あそこには何があるのか。前回は断罪イベントだけやって、帰るときに少し遊んだぐらいだからな」
氷鬼だったかな?
まあ、それはともかく、コールザード王国で何かしたという記憶はない。
なので今回、スリース王国以上に見て回るつもりなのだが……前回のこともあったし、あまりやるべきことはないんだよな。
「空にも居るのか──“切断結界”」
魔物が空から飛来したが、結界魔法で識別すらせずに一撃で処理する。
結界を二次元で三次元を切断させる、鋭い刃とすることで可能とした魔法だ。
「どんな魔物だったのやら……回収するのも面倒臭いし、そのまま行くとしますか」
それから何度も、“切断結界”で魔物を処理しながら目的地へ向かう。
なお、スーはその間、いっさい起きることなくぐっすり寝ていましたとさ。
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ビオトープを出た俺たちは、再びスリース王国の見学を再開する。
知っていることで、何か起き得る変化があるだろうと、まずは地形を覚えていった。
俺はこの街をすべて知っているわけでもないし、イベントフラグを把握しているわけでもない……知らないところで何かが起きていることなんて、ざらにあるわけだし。
スーを背負ったまま、歩を進める。
特に絡まれるということも、逆に絡まれている様子を見ることもない。
祈念者が歩けば必ず事件が起きるような世界は、火サスか少年探偵の世界だけだろう。
世界はそれと比べればもっと平和であり、トラブルはあまり起きないのだ。
「スーは何か感じ取っているか?」
「……ん、全然」
「やっぱりそうだよな。前に魔剣といっしょに来たときは、暗殺者と一戦交えたな。どういう確率なんだろうな、偶然街を訪れたその日に暗殺が決行されるって」
「奇跡だと思う」
奇跡は起こすものではなく叶えるものだという考えがあるが、そういう奇跡は望まれはしないだろうな。
だがまあ、さすがに人の生き死にに関わるようなトラブルを俺は望みはしないさ。
せめて暴行……いや、魔法による脅しとかでも偽善らしく動けるのになー。
スーには現在、スリース王国が構築した結界に干渉してもらっている。
内部で起きていることを、スーは感知することができる……そのためだった。
その気になれば、結界の温度調整を弄ることもできてしまう。
ある意味今のスーこそが、もっとも危機的なイベントを起こせるんだよな。
「やること……は、特に無いか。それじゃあやっぱり、ただ歩くだけの時間になるか」
「……ん、いいと思う」
「そうだな、さっきの街でも病気の母親がいるとかそういう感じになったし、今回は本格的に何もしない時間でいいかもな」
スーを背負って歩くだけ、それはある意味無駄な時間を過ごしていると言えよう。
だが俺とスーにとっては、そういう時間にも価値があるのだ。
少なくとも、ただ暇な時間というわけではないだろう。
スーがいっしょに居るのだ、話し合う相手は居るの──
「……Zzz」
「まあ、スーを休ませた方がいいか。暇にはならない……んだよな?」
頼もしい話し相手が居なくなってしまった以上、先ほどまでの自信は失われた。
街の中の探索も、一人でやってもあまり面白くないと思うし。
なら、それ以外の何かで時間を潰してみなければならない。
これまではなかったが、スーも寝てしまったし……起きるまではやってみよう。
◆ □ ◆ □ ◆
イテルナ寒地
次の目的地であるコールザード王国に移動するため、スリース王国を出る。
これまでと違って、今回はフィールドに出てそのまま向かう予定だ。
スーが寝ている以上、その安全を守るのは俺だけしか居ない。
縛りも大半は解除して、ある程度自由な状態で活動を行うことを決めた。
吹雪く雪山。
極寒に近い凍てつく大地だが、俺とスーはその体一つで移動中だ……事前にスーが張ってくれた、防寒の結界が作動中だからだな。
「スー、借りるぞ──“忌避結界”」
結界魔法、正確にはもう一つリッカの精神魔法を混ぜたのだが……とにかくその魔法を発動し、周囲に展開する。
結界に忌避感を覚え、魔物たちが近づかなくなるという代物だ。
スーの安全を第一にする以上、万全の態勢で移動を行わなければならない。
「“結界歩行”、“加速結界”」
空に足の踏み場を用意し、一段一段、文字通りの高みへと昇っていく。
吹雪を掻き分け、進んでいく……そして一定地点に到達すると、水平に歩き始める。
「エリアボスとの戦闘のアレが出ると、なんか無粋だしな……しかしまあ、視界いっぱい雪でいっぱいだよ──“探査結界”」
このフィールドにはエリアボスが配置されているので、領域ごと避けることにした。
理由はシンプル、干渉時に発生する演出でスーを起こしたくないから。
魔力をたくさん籠めて、新しく構築する結界の射程距離を広げた。
スーと違って魔法を介さなければ精度が低いが、それでも視界に頼らず辺りを探れる。
「前回は馬車で行ったんだっけ? まあ、お客人といっしょにだったしな……」
スーにも語った暗殺対象と共に、お隣の国まで行ってたからな。
偽善中だったから、いろいろと楽しみながら行った記憶があるよ。
「今さらながら、あそこには何があるのか。前回は断罪イベントだけやって、帰るときに少し遊んだぐらいだからな」
氷鬼だったかな?
まあ、それはともかく、コールザード王国で何かしたという記憶はない。
なので今回、スリース王国以上に見て回るつもりなのだが……前回のこともあったし、あまりやるべきことはないんだよな。
「空にも居るのか──“切断結界”」
魔物が空から飛来したが、結界魔法で識別すらせずに一撃で処理する。
結界を二次元で三次元を切断させる、鋭い刃とすることで可能とした魔法だ。
「どんな魔物だったのやら……回収するのも面倒臭いし、そのまま行くとしますか」
それから何度も、“切断結界”で魔物を処理しながら目的地へ向かう。
なお、スーはその間、いっさい起きることなくぐっすり寝ていましたとさ。
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