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【強者の権利】面倒事対処 その05【最下の義務】
スレ73 一歩一歩を大切に
しおりを挟むあれから数週間が過ぎ、ようやく月末が訪れた……どれだけ待ち侘びたことやら。
「これで俺もついに解放。いちいち恨まれながら戦う必要も、無くなったわけだ」
「お疲れ様です、アサマサ師匠」
「ああ、お蔭様でな」
すでに時刻は夕暮れ時、最後の闘いを終えて舞台の上で一人佇んでいた。
そんな場所に現れた一人のイケメン──通常時であれば殴りかかりたくなるが、今の彼は使者なので無下にはできない。
「それで、上司はなんだって?」
「もちろん、『喧嘩は買う』そうですよ」
「さすがに全員は無理だよな? 一位なんて一度も出たことがないらしいし」
「ええ、まだぼくも会っていませんし」
謎の一位『学園最強』が何者なのか。
すべてが謎に包まれた人物に挑もうとする者は多いが、その全員が受け流しを喰らった下位の学園序列持ちに敗北する。
ただ、ウワサがあるんだよな……とある条件を満たせば戦ってくれるっていう。
火の無い所に煙は立たない、それを考えると探す価値がありそうな気がする。
「それで、案内してくれるんだよな?」
「はい。失った空間魔法も取り戻したので、すぐに行けますよ」
「……本当、チートだよな」
「ハハッ、そんなに褒めないでくださいよ」
褒めてねぇ! と叫びたいが我慢した。
いちおう俺にも魔力チートはあるんだし、虚無魔法であれば擬似的な瞬間移動のようなことができるだろうと、絶賛開発中である。
「ぼくに掴まってください。師匠を目的地まで安全にお送りします」
「先に言っておくが、目的地の前に降ろして試験です……なんてことは無しだからな」
「……ぼくに掴まってください。師匠を目的地まで」
「──おい! やっぱりそういうことか!」
逃れようとしたのだが、素早い動きで俺の手を掴んできやがる。
……クソッ、最初から身体強化をしていたのはそういう理由かよ!
「じゃあ行きますよ──“空間転位”!」
ちくしょう! と今度は本当に叫びたかったが……それは転位の際に生じる空間が動く音によって、掻き消されてしまった。
◆ □ ◆ □ ◆
透明状態にしたスマホで調べてみると、そこは学園の中にある迷宮の下層らしい。
学園迷宮、なんとも心躍る単語ではあるが一年生は入場が許されておらず、一度も入っていなかった。
まあ、序列持ちは入れるらしいんだが……わざわざ学友を残していくのも虚しくてな。
それでもいずれ、中を探ろうとは思ったおた……うん、結局来ちゃったわけだ。
「レイル、ここはどこなんだ?」
「秘密です、と言いたいところですが発表します。なんとここは、学園迷宮の中です!」
「……ハッ?」
「いかに師匠といえど、さすがにこの展開は予測できませんでしたね。そう、実は序列持ちだけはここに転位が可能なのです」
彼なりの解釈で、俺が驚いた理由を推測していたようだ。
まあ、ここら辺は創作物でも王道なのでそこまで驚いていないんだが。
認証式のシンボルを持つと、干渉を受けずにいられる……改竄もできそうだな。
「アサマサ師匠、上位序列の皆様から伝えられた言葉をそのまま言いますね──『ここから最下層まで、独りで来い。従魔などは認める』だそうです。ですが、師匠は単独でも楽勝ですよね?」
「ん? まあ、そりゃそうだけど……」
「では、ぼくは他の方々といっしょに観戦をしてますので……頑張ってください!」
「おい、ちょっと待て──」
もちろん、そんなのスルーだ。
ニコリと笑みを浮かべ、そのまま先ほどと同じように“空間転位”を行使してここから消えていった。
彼が伝えた通り、最下層に行ったんだな。
「……ったく、仕方ないな」
これでも迷宮には行った経験がある。
本気で攻略しようと思えば、簡単に最下層まで向かうことができるだろう。
しかし、レイルは言った──観戦すると。
もしかして、とは思ったが……迷宮にはカメラ的な機能もあるんだな。
アイツは教えてくれなかったが、わざわざ言う必要がなかったからかもしれない。
「まあ、攻略を始めるか」
俺の手札は多い、だが開示してある数はそう多くはない。
無属性、闇属性、武術……この三枚のカードだけでどうにか乗り切る必要がある。
「武器は……これしかないか」
まさか転位されるとは思わず、その前にリア充を倒した際の装備しか持っていない。
これも先輩たちからの嫌がらせか? まあ普通、多種の武器を使う奴はいないし、そうでなくともある程度は持ち歩いているか。
だが、俺が持っているのは巨大な木槌。
せっかくだからと、習った武術を再現している途中だったんだ……迷宮に向いていない武器でしかない。
「まあ、ヤバくなったらあれを使えばどうとでもなるか……うん、いつまで経ってもここに居るのはつまらないですよね? そろそろ攻略を始めようと思います」
ちなみにここは、八十一階層。
ゴールは最終階層である百階層。
多少敵は強いとは思うが、魔力チートがある今なら安心して攻略することができる。
ハンマーを肩に担ぎ、前に進み出た。
──カチッ
「あっ……」
だが、さすがに一歩目から罠があるとは思わなかったよ。
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