85 / 136
外国へ遊びに行こう
朝練を終えよう
しおりを挟む「……嗚呼、面倒だった」
地面に転がる奴隷たちを、別の奴隷たちが回収していく。
欲望に忠実な奴隷のお蔭で、やりたかった技はある程度モノになった。
「じゃあ、配っておいてくれ」
「畏まりました」
メイド長に指示をしておけば、後のことは勝手にやってくれるだろう。
大切なのは、俺が指示をしたという事実だけだし。
「──というわけだな。ここでの朝練、まだやる気があるか?」
「いつも、やっているの?」
「別に。試したいことがあれば、時々って感じだな。嫌がるならやらせてないし、失敗すれば詫びは渡している。あくまで自己責任ってやつだな」
「……意外」
いつの間にかレクリエーション的な運動を終えたフレイアが、こちらを見ていた。
スキルを使っているようで、魔力の波動が奴隷たちに向かっている。
「誰も嫌がってない?」
「だから言っただろう、強制はしてないんだよ。アイツらは褒美が欲しくて、自分から率先して動いている。危険度に応じて、ちゃんと報酬がある……いわばこれは、ビジネスと言っても過言ではない」
「そうじゃなくて……イムを……もがっ」
「おい、俺を……なんだ?」
振り返ってみれば、フレイアが奴隷たちに囲まれていた。
「なんだ、何か言われちゃ困ることでもあったのか?」
「い、いえ、そのようなことは……」
「まあ、別にいいけど。お前たちに嫌われていても憎まれていても、奴隷と主という関係がある以上殺すことはできないわけだし」
「そ、そういったことを考えている者は、私たちに中にはいません!」
誤魔化し役っぽい奴隷はそう言うし、彼女自身に嘘は無いように見える。
だが、個人個人を探れば真相はすぐに分かるだろうな。
「!」
「……いや、面倒だな。そういうヤツが居るなら、俺にその情報が漏れる前に捕らえてくれればそれでいい。俺の面倒事を解消しろ、命令したのはそれだけだしな」
「こ、心得ております」
神妙な顔つきで、奴隷は頷いた。
捕まえといて、誰かが許しを請うなら催眠で脳を弄っておしまいにする。
もし、誰もそれを求めないなら……人形として、踊ってもらうだけだ。
「なら、それでいい。朝練は終了だ、フレイアもそろそろ城に帰れ」
「わ、分かっています」
「そうか……ピィン、やっておけ」
「畏まりました」
以降フレイアの朝練に対応させようとしていたので、名前は覚えておいた。
運動係はフレイアを、待機しているであろう彼女の侍従たちの下へ連れていく。
その際、奴隷たちがフレイアに詰め寄り何かを言っているが……誰かが防音を施しているようで、声は届いてこない。
読唇術を使ってみようと思ったが、そちらも闇魔法で対策がされている。
「そこまでしてか……」
本当に危険な情報であれば、一人ぐらい俺の味方になってくれるだろうからとりあえず問題ないだろう。
もしかして、俺へのサプライズか? って祝うようなこと、無かったな。
「ハァ……朝風呂でも入るかな」
朝練に参加していない奴隷が、すでに風呂の準備をしてくれてあるだろう。
日本人たる者、風呂を忘れるべからず──というか、急がないと朝練終わりの奴隷たちの朝食に飯の時間が被ってしまう。
◆ □ ◆ □ ◆
「ふ~、やっぱり朝風呂は気持ち好いな~」
好いものは素直に好いと言うべきだ。
中でも風呂ほど好いものを、未だにこの世界で見たことは無い。
異世界だけあり、こじんまりとしたバスタブで我慢する必要は無くなった。
何より、妹の長風呂に飽き飽きする日々が無いだけでも至上の風呂とも言える。
「アイツ、風呂に何でも持ち込んで時間を潰してたからな……それなのに、俺にはさっさと出ろって言うし」
ただ、俺がある程度入浴に満足して、それから時間を潰そうとするとそう言ってくるんだよな。
妹という存在には、兄が暇かどうかを暴くセンサーでもあるのかもしれない。
「誰か、居るか?」
「──ここに」
「名前は……チーリンだったか?」
「はい」
黄色の鱗が首筋から見える少女。
前にも似たような展開があったので、どうにか思いだせた。
しかしまあ、尻尾が揺れているな……せっかく登場は隠密っぽいのに、なんでだろう。
「食堂の込み具合はどうだ?」
「すでに満員です」
「マジか……長風呂しすぎたな」
女子は長風呂、だから間に合うと思ったんだが……やはり一時間も入っていれば、逆に抜かれてしまうか。
長風呂ができるようになったせいか、つい入りすぎるんだよな。
「仕方が無い。待つしかないか……」
「……あの、お訊きしたいことがあるのですが。奴隷の身に不相応な行いなのは承知しております。それでもよろしいでしょうか?」
面倒な言い回しで彼女は訊ねてくる。
「固い、面倒、適当にしろ。それで、何が訊きたいんだ?」
「どうしてご主人様は、わざわざ従えている奴隷たちと同じ場で、同じように食べているのでしょうか?」
「──逆に、分けた方が面倒だろ?」
「は、はい?」
どうやら理解できなかったようだな。
シンプルかつ分かりやすく、理由を説明したつもりなんだが……。
「そうだな……まず、俺以外の奴らにああいう食べ方をさせているのは、ストレスとかを感じさせないためだな。──ああして、一家団欒な飯を食ってれば、さすがに不満は感じさせないだろう」
「そうかと思われます」
「メイドなお前なら分かると思うが、そのうえ飯は美味い。環境も整えてあるんだから、俺に反乱する気もないだろう」
「はい、すべてはご主人様の仰る通りかと」
これは前にも考えたことだ。
反意とは、自身の居る環境に不満を持たない限り個人で動くことは無い。
集団もまた、個人の不満が漏れない限りそれを実行はしないだろう。
「まあ、そういうことだ」
「……あの、ご主人様が共に同じ卓に着く理由がまだ」
「それは簡単だ。一に不満を出せなくするため、二に予約席が嫌いだから」
「な、なるほど……」
予約とは、妹が兄をパシリにするために使うものだからな。
10
あなたにおすすめの小説
異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします
Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。
相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。
現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編
ダンジョンをある日見つけた結果→世界最強になってしまった
仮実谷 望
ファンタジー
いつも遊び場にしていた山である日ダンジョンを見つけた。とりあえず入ってみるがそこは未知の場所で……モンスターや宝箱などお宝やワクワクが溢れている場所だった。
そんなところで過ごしているといつの間にかステータスが伸びて伸びていつの間にか世界最強になっていた!?
【完結】スキルを作って習得!僕の趣味になりました
すみ 小桜(sumitan)
ファンタジー
《ファンタジー小説大賞エントリー作品》 どんなスキル持ちかによって、人生が決まる。生まれ持ったスキルは、12歳過ぎから鑑定で見えるようになる。ロマドは、4度目の15歳の歳の鑑定で、『スキル錬金』という優秀なスキルだと鑑定され……たと思ったが、錬金とつくが熟練度が上がらない!結局、使えないスキルとして一般スキル扱いとなってしまった。
どうやったら熟練度が上がるんだと思っていたところで、熟練度の上げ方を発見!
スキルの扱いを錬金にしてもらおうとするも却下された為、仕方なくあきらめた。だが、ふと「作成条件」という文字が目の前に見えて、その条件を達してみると、新しいスキルをゲットした!
天然ロマドと、タメで先輩のユイジュの突っ込みと、チェトの可愛さ(ロマドの主観)で織りなす、スキルと笑いのアドベンチャー。
スキル【幸運】無双~そのシーフ、ユニークスキルを信じて微妙ステータス幸運に一点張りする~
榊与一
ファンタジー
幼い頃の鑑定によって、覚醒とユニークスキルが約束された少年——王道光(おうどうひかる)。
彼はその日から探索者――シーカーを目指した。
そして遂に訪れた覚醒の日。
「ユニークスキル【幸運】?聞いた事のないスキルだな?どんな効果だ?」
スキル効果を確認すると、それは幸運ステータスの効果を強化する物だと判明する。
「幸運の強化って……」
幸運ステータスは、シーカーにとって最も微妙と呼ばれているステータスである。
そのため、進んで幸運にステータスポイントを割く者はいなかった。
そんな効果を強化したからと、王道光はあからさまにがっかりする。
だが彼は知らない。
ユニークスキル【幸運】の効果が想像以上である事を。
しかもスキルレベルを上げる事で、更に効果が追加されることを。
これはハズレと思われたユニークスキル【幸運】で、王道光がシーカー界の頂点へと駆け上がる物語。
倒した魔物が消えるのは、僕だけのスキルらしいです
桐山じゃろ
ファンタジー
日常のなんでもないタイミングで右眼の色だけ変わってしまうという特異体質のディールは、魔物に止めを刺すだけで魔物の死骸を消してしまえる能力を持っていた。世間では魔物を消せるのは聖女の魔滅魔法のみ。聖女に疎まれてパーティを追い出され、今度は魔滅魔法の使えない聖女とパーティを組むことに。瞳の力は魔物を消すだけではないことを知る頃には、ディールは世界の命運に巻き込まれていた。
転生したら幽閉王子でした~これどうすんの?
サクラ近衛将監
ファンタジー
神様の眷属の過失が原因の事故に遭って死んだ桜庭雄一が異世界に転生したら、とある国の忌避すべき王子として幽閉されていた。
転生にはチートがつきもののはずだが、事故で死んだ者が300名を超えるために、個別にチートは与えられず、転生先の者の能力を生かせと神に告げられている。
「神の加護」ではないけれど、「恩寵」が与えられているので、当該異世界では努力を為した分、通常に比べると成果があるらしい。
これはとある国の幽閉王子に転生した男の冒険譚である。
原則として、毎週月曜日20時に投稿予定です。
他人の寿命が視える俺は理を捻じ曲げる。学園一の美令嬢を助けたら凄く優遇されることに
千石
ファンタジー
【第17回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞】
魔法学園4年生のグレイ・ズーは平凡な平民であるが、『他人の寿命が視える』という他の人にはない特殊な能力を持っていた。
ある日、学園一の美令嬢とすれ違った時、グレイは彼女の余命が本日までということを知ってしまう。
グレイは自分の特殊能力によって過去に周りから気味悪がられ、迫害されるということを経験していたためひたすら隠してきたのだが、
「・・・知ったからには黙っていられないよな」
と何とかしようと行動を開始する。
そのことが切っ掛けでグレイの生活が一変していくのであった。
他の投稿サイトでも掲載してます。
※表紙の絵はAIが生成したものであり、著作権に関する最終的な責任は負いかねます。
おっさんが雑魚キャラに転生するも、いっぱしを目指す。
お茶飲み人の愛自好吾(あいじこうご)
ファンタジー
どこにでも居るような冴えないおっさん、山田 太郎(独身)は、かつてやり込んでいたファンタジーシミュレーションRPGの世界に転生する運びとなった。しかし、ゲーム序盤で倒される山賊の下っ端キャラだった。女神様から貰ったスキルと、かつてやり込んでいたゲーム知識を使って、生き延びようと決心するおっさん。はたして、モンスター蔓延る異世界で生き延びられるだろうか?ザコキャラ奮闘ファンタジーここに開幕。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる