30 / 135
小さな諸国に行ってみよう
第三王女に接触しよう
しおりを挟む「初めまして第三王女、私はイム・トショクと申します。気軽にイムと呼んでください」
「──チェンジで」
うん、これが俺と第三王女の初邂逅の瞬間である。
小学生ぐらいの背格好で、青色の煌びやかなドレスを着ていた。
髪の色はドレスと同色で、普通ではありえない青色だな。
いつも通り取り繕った挨拶をしてみたわけなのだが……どうしてデリヘル嬢のそれを、第三王女が知っているんだろか。
無表情スキルでそんな葛藤を押し殺し、会話を続けていく。
「ちぇ、チェンジとはどういった意味でしょうか? 私は国王より命じられて貴女様の警護を行うよう──」
「必要ない。貴方みたいにやる気も覇気も無い人、役に立たないに決まってる」
……おお、分かってくれるのか!
そうなんだよ、俺にこの依頼に対するやる気なんて皆無なんだよ。
俺がやりたいのは引き籠もりライフであって、警護なんて面倒事じゃないんだ。
──たとえば、俺がこの第三王女に認められて警護役に就いたとしよう。
今までに就けられる予定であった騎士を蹴落とし、媚びを売ろうとしていた貴族の魔の手を払ってな。
当然恨まれるだろうし、最悪憎いと思われるだろう。
俺に対する騎士の態度は下がるし、貴族からは嫌がらせが始まるに違いない。
──面倒過ぎて、本当にやる気が失せる。
「……いえ、いきなりそこまで本音の色を出されても困るのだけれど」
「……ああ、それが貴女の特別なスキル、というヤツですね」
「そうよ。気持ちが色で視えるだけ、こんなのただの呪いじゃない。見たくもない、知りたくもない相手の本音が分かってしまうのだから……」
急にぶっちゃけてくる第三王女。
心、では無いんだな。
心と気持ち、感情では意味合いが少し異なるのだ。
……まあ、面倒だし説明はいいか。
要するに第三王女は、他人のあれこれを見過ぎてうんざりしているってことだ。
俺を見た場合は、この依頼を面倒臭がっているのが分かったんだろうな。
「ふーん、見なければ良いんじゃないか?」
「はっ、何を言っているの? この呪いは私が生まれた時からずっと蝕んでいる。見なければ良いなんて、甘い考えじゃ──」
「煩いなー、とりあえず『黙れ』。それからちゃんと話を聞けよ」
「──ッ!!」
気に喰わない目をしていた第三王女に、毎度馴染みの催眠魔法を使って黙らせる。
突然そうなったからな、予想通り目を引ん剥いているよ。
「つまりさ、お前は視えなくなれば満足なんだろ? どうせ必要な時には使っているくせに、そうやって厄介物みたいに……。一度味わってみろよ、今まで共に在った物が無くなる気持ちをさ……そーれ」
「──ッ! ────!!」
俺が仕掛けたあることによって、第三王女は突然手を宙に振り回し始める。
まるで何も無い、真っ暗な世界に放り出されたかのように。
「五感の内、聴覚だけは残しておいた。だからこれは聞きとれると思うぞ。お前のそのスキル、たぶんだが視覚と繋がったスキルなんだと思ってさ」
「────ッ! ────────ッ!?」
「それを奪ったらどうなるんだろうとやってみたんだが……成功して良かったよ。──どうだ、それがお前の希望を……強引に叶えてやった未来だ」
催眠魔法ともう一つ──精神魔法を使って第三王女の五感と精神を操っている。
こういう能力の持ち主ってのは、精神が大人びているらしいからな。
ある程度、こちらで制御しとかないと直ぐに冷静になりそうだ。
──少しは焦ってもらわないと。
話している間に観察していたんだが……なまじ良い眼があるせいか、やけに達観しているんだよ第三王女。
だからこそ、第三王女がしていた目になんとなく苛立った。
自分がするのは良いけど、他人がするのは嫌になる──そんな陰のある目を止めさせたかったのかもしれない。
俺には物語の主人公のように女を甘い言葉で意識を変えさせることはできないので、こうやって力尽くでやってみる。
……まっ、嫌われたとしてもこの国に寄生するのを止めればいいだけの話だ。
それに俺がやらかしても、どうせユウキ辺りが堕とすだろう。
……魔眼なんて、いかにもヒロインっぽい特徴を持ってる王女だしな。
「──、────」
「……あっ、何か言いたいのか。『解除』」
「──! ぷはぁああああああ!!」
いつの間にか落ち着いていた第三王女に掛けていた催眠を解除し、その様子を窺う。
視覚が奪われて何も見えないその空間を、第三王女は酸素が無い場所とでも考えていたのだろうか。
荒い息を吐いて、絶賛酸素を補給中だ。
息を止めていたせいか顔が紅潮し、小学生ぐらいの歳の女子がしてはいけないようなナニカが第三王女から見え隠れしている。
「それで、良かったな。今から聞く質問の答えによっては、お前はずっとああやって何も見なくて良いようになるんだ」
「……ゃ」
「でも、さすがに食べ物の味が感じられないのは残酷か? よし、特別に奪うのは視覚だけにしておいてやるよ」
「……ぃゃ」
「えっと……そうだ質問だったな。俺はお前の望むように、嫌な部分を見えないようにしてやる。報酬もお礼も要らないぞ。俺は優しいからな、お前が苦悩を抱えずに生きてくれるだけで満足だ。それじゃあ質問を──」
「絶対に嫌ぁああああ!!」
急に叫び出す第三王女。
……ハァ、発作的興奮状態かよ。
そうして厄介そうに思いながらも、俺の口は少しにやけていた……らしい。
1
あなたにおすすめの小説
異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします
Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。
相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。
現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編
落ちこぼれの貴族、現地の人達を味方に付けて頑張ります!
ユーリ
ファンタジー
気がつくと、見知らぬ部屋のベッドの上で、状況が理解できず混乱していた僕は、鏡の前に立って、あることを思い出した。
ここはリュカとして生きてきた異世界で、僕は“落ちこぼれ貴族の息子”だった。しかも最悪なことに、さっき行われた絶対失敗出来ない召喚の儀で、僕だけが失敗した。
そのせいで、貴族としての評価は確実に地に落ちる。けれど、両親は超が付くほど過保護だから、家から追い出される心配は……たぶん無い。
問題は一つ。
兄様との関係が、どうしようもなく悪い。
僕は両親に甘やかされ、勉強もサボり放題。その積み重ねのせいで、兄様との距離は遠く、話しかけるだけで気まずい空気に。
このまま兄様が家督を継いだら、屋敷から追い出されるかもしれない!
追い出されないように兄様との関係を改善し、いざ追い出されても生きていけるように勉強して強くなる!……のはずが、勉強をサボっていたせいで、一般常識すら分からないところからのスタートだった。
それでも、兄様との距離を縮めようと努力しているのに、なかなか縮まらない! むしろ避けられてる気さえする!!
それでもめげずに、今日も兄様との関係修復、頑張ります!
5/9から小説になろうでも掲載中
スキル【幸運】無双~そのシーフ、ユニークスキルを信じて微妙ステータス幸運に一点張りする~
榊与一
ファンタジー
幼い頃の鑑定によって、覚醒とユニークスキルが約束された少年——王道光(おうどうひかる)。
彼はその日から探索者――シーカーを目指した。
そして遂に訪れた覚醒の日。
「ユニークスキル【幸運】?聞いた事のないスキルだな?どんな効果だ?」
スキル効果を確認すると、それは幸運ステータスの効果を強化する物だと判明する。
「幸運の強化って……」
幸運ステータスは、シーカーにとって最も微妙と呼ばれているステータスである。
そのため、進んで幸運にステータスポイントを割く者はいなかった。
そんな効果を強化したからと、王道光はあからさまにがっかりする。
だが彼は知らない。
ユニークスキル【幸運】の効果が想像以上である事を。
しかもスキルレベルを上げる事で、更に効果が追加されることを。
これはハズレと思われたユニークスキル【幸運】で、王道光がシーカー界の頂点へと駆け上がる物語。
ダンジョン冒険者にラブコメはいらない(多分)~正体を隠して普通の生活を送る男子高生、実は最近注目の高ランク冒険者だった~
エース皇命
ファンタジー
学校では正体を隠し、普通の男子高校生を演じている黒瀬才斗。実は仕事でダンジョンに潜っている、最近話題のAランク冒険者だった。
そんな黒瀬の通う高校に突如転校してきた白桃楓香。初対面なのにも関わらず、なぜかいきなり黒瀬に抱きつくという奇行に出る。
「才斗くん、これからよろしくお願いしますねっ」
なんと白桃は黒瀬の直属の部下として派遣された冒険者であり、以後、同じ家で生活を共にし、ダンジョンでの仕事も一緒にすることになるという。
これは、上級冒険者の黒瀬と、美少女転校生の純愛ラブコメディ――ではなく、ちゃんとしたダンジョン・ファンタジー(多分)。
※小説家になろう、カクヨムでも連載しています。
スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
MP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
備蓄スキルで異世界転移もナンノソノ
ちかず
ファンタジー
久しぶりの早帰りの金曜日の夜(但し、矢作基準)ラッキーの連続に浮かれた矢作の行った先は。
見た事のない空き地に1人。異世界だと気づかない矢作のした事は?
異世界アニメも見た事のない矢作が、自分のスキルに気づく日はいつ来るのだろうか。スキル【備蓄】で異世界に騒動を起こすもちょっぴりズレた矢作はそれに気づかずマイペースに頑張るお話。
鈍感な主人公が降り注ぐ困難もナンノソノとクリアしながら仲間を増やして居場所を作るまで。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる