催眠術師は眠りたい ~洗脳されなかった俺は、クラスメイトを見捨ててまったりします~

山田 武

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大きな戦いに挑もう

逃げてから撃とう

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「おっと、見つけた見つけた。雑魚い奴がいると思って目を付けてたんだが……ふーん、他の奴はずいぶん運が悪いんだな」

「あ、あの、あなたはいったい……」

「俺? 俺は────。お前と同じ、神に選ばれし主人公の一人さ。まあ、お前と違って最強なんだけどな」

 えっ、名前が分からない?
 いやいや、だってどうでもいいし……。

 男が【英雄】か、それ以外の何かなのかは分からないが……派手派手しい装備を身に纏うその姿は、いちおう主人公っぽいな。

「そっちの奴は……反応も無いし、ただの雑魚か。おい、殺されたくなきゃ見逃してやるよ。ほら、さっさといけ」

「い、イムさ──」

「ひ、ひー! おたすけー(棒)」

「イムさん!?」

 俺は脚力スキルも大量に保有している。
 その中でも、奴隷から拝借した種族固有のスキル(蒼狼脚)は、低燃費かつ連続行使可能な便利スキルである。

 そんなスキルをベースとして、複数の脚力系のスキルを使って駆け抜けていく。
 その姿は二人からはすぐに確認されない場所へ向かうため、いっさい見えなくなった。

「さて、状況を把握しないと」

 気配を探られていないことを確認したうえで、(千里眼)スキルで元居た場所の状況を確認する。

「まあ、定番の理由だな……殺したら報酬が貰えるから、雑魚から稼ぎに来たと。へー、しかも装備も殺して得た特典か。全然使えそうにないけど、ハズレも出るんだな」

 視認したので(解晰夢)スキルが発動し、男の装備をある程度把握できた。

 一部はいっさい見えなかったのだが……そこは特典ということで、何か神的な存在の干渉があったのかもしれないな。

「殺させるわけにはいかないし、俺は殺してアイテムを貰っても嬉しくないからな……とりあえず生け捕りだな」

 元素魔法で土を操り、周りから認識できないように闇で隠した台座を生成する。
 その上に立ち、千里眼スキルを維持したまま武器を構えた。

「『凄い弓』、『凄い矢』、『黄の矢』」

 弓と矢そのものに強化魔法を施したうえ、矢には雷や麻痺に関する魔法セットを掛けてさらに性能の付与していく。

「風──“導風エアガイド”。弓──“長距離射アウトレンジショット”」

 そんな矢を届かせるため、風を吹かせたうえで長距離狙撃用の武技により矢を飛ばす。
 放たれた矢は付与した雷により、尋常ではない速度で飛び……そのまま男に刺さった。

「うん、ヒットヒット。許容範囲以上の痛みで気絶、ついでに感電と麻痺の効果もあるからじわじわと弱らせられる」

 弓と矢そのものの強度が足りなければ使えない技らしいが、個人で付与魔法を使えるので問題なく使用可能だ。

 殺すこともできたが目的は生かしておくことなので、派手な装備の隙間を掻い潜って射貫いておいた……どうやら防ぐ能力を所持していなかったのか。

「まあ、それは分かっていたけど……って、根が真面目な奴だなぁ」

 サリスは始め、ビックリしているだけだったのだが……なぜか、収納の魔道具から状態異常回復のポーションを取り出して飲ませようとしている。

 必死に飲ませているようだが、俺が与えた状態異常の方が回復よりも強かったようで変化が無い。

「はあ……仕方ない、戻るか」

 急ぐ必要はないので、分身体たちの経験を改めて洗いながら歩いて元の場所へ帰る。
 空間魔法、は警戒網も広そうだし……面倒だがしょうがないな。

  ◆   □   ◆   □   ◆

「ただいまー、何やってるんだ?」

「い、イムさん! あの、この人を助けることってできますか?」

「まあ、可能だが……それやったの俺だし、殺されそうになったお前がそいつを治してやる必要があるのか?」

「ひ、必要とか必要じゃないとか、そんなことはどうでもいいです。大切なのは……だ、誰も死なないことです!」

 そういって、ポーションを口の中に押し流そうとする。
 だが口の中に入らず、漏れ出す液体。
 それを見て、何かを覚悟するサリス。

「──口移しか? まあ、ちょっとそういうのはやらなくていいから」

「えっ、あ、あの……」

「分かった分かった。とりあえずは絶対服従だけで治してやることにする。殺そうとしたうえ、もう殺している。これ以上のサービスは死者に失礼だぞ」

「……は、はい」

 男が自慢するように殺した雑魚の話をしていたので、そのことは理解しているようだ。
 なのであとのことは任せてくれる……ここで殺すのが一番楽なんだけどな。

「水──“水操作ウォーターコントロール”」

 まずは飲ませていたポーションを強引に口の中へ流し込み、やりたかったことをやらせておく。

 ついでに無詠唱で“回聖ホーリーヒール”を使い、状態異常を完全に回復させる。
 それだけで心なしか顔はマシなものに、鑑定結果もいちおう平常となっていた。

「あとは隷属作業を済ませればいいだけ──『支配契約』。あとは目印に首輪だな」

 催眠魔法の効果もあり、相手の許可など不要に強制的な契約を交わすことができる。

 首輪は奴隷を隷属させるための物だが、俺が用意したのはその効果を剥がして書き換えたものだ。

「さて、これで充分か……って、ん?」

 そんなことをやっていると……なぜか再び[メニュー]画面が勝手に開かれた。

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