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麻帆は女子

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男子のCチームは、スタメンになれずレギュラーの座に落ちたBチームよりもさらに残念で補欠にも入れなかった者達だった。男子とはいえ主に一年生。まだあどけなさが残る少年たちで身長も低く声変わりもしていない。

 だが麻帆はものすごく態度を変えた。女の子らしさが全開になり走る時に腕が妙に横へとピョコピョコでている。村上先生はまったくもうと呆れ顔で、麻帆! と呼んだ。練習はツーメンからスリーメンへ変更。だが麻帆は男子と組ませない。凛、奏歩、麻帆トリオで固定された。麻帆は不満そうにしていたがピョコピョコが直らない。走る時に必死な表情になりたくないからかスピードが落ちている。

「麻帆さん! 全速力!」

 みかねた奏歩が初めて先輩に指示を出した。わざとものすごく鋭いボールを投げる。麻帆はそれに追いつけず凛と奏歩と麻帆トリオは相性が最悪になった。こぼれたボールを何度も取りに行く麻帆。男子たちは呆れている。

「麻帆、ちょっと来て」

 村上先生が呼んだ。

「麻帆、走れない訳じゃないでしょ?何度も失敗するほうがカッコ悪いのよ。ほら男バスのレギュラーたちがみてる。顔なんて見えないけどミスって怒られてるのは丸見えよ。本気でやりなさい。あなたはかなりセンスあるんだから。本気をだしなさい」

 確かに、ミスを連発する麻帆はカッコ悪かった。そうと気づくと麻帆は逆に限界までダッシュし始めた。奏歩のパスがうまく通る。綺麗なレイアップシュート。決まった。男子たちはおお、と僅かにどよめいた。バスケが上手い女子はモテる。男子たちの士気が上がった。女子にいいところを見せたい。そんな下心が沸き上がってスリーメンは盛り上がりをみせた。

 一旦休憩、水分補給。せっかく男子で人数が増えたので3on3をすることになった。女子チームは赤のビブス、男子は無し。ハーフコートの勝負だ。

「まずは基本の動きを説明するわ。三対三だからポジションは関係ない。トップにたった人がボールをもち、残りの二人がミートする。ディフェンスの裏をかいてパス回しをうまくやること。中央が空いたら躊躇せず1対1をしかけなさい。といってもあなたたちはまだスリーポイントが打てないからドライブでぬくこと。中央にディフェンスを集めて外へとパス。パスをもらったらワンドリブルでジャンプシュート。できるわね?」

 村上先生は無茶をいう。ジャンプシュートなんてまだ練習していないのに。

「とにかく動き続けることよ。もちろんできるならスリーを打っても構わないけどリバウンドはとることね」

 3on3が始まった。流石に男子は強い。女子たちは全然ゴールできないでいた。それどころかドリブルをスティールされまくりだ。

 だが奏歩は違っていた。レッグスルーをうまく使って一人抜くと次のディフェンスが奏歩をマークする。パスすることを覚えた奏歩はフリーになった麻帆へパス。麻帆は言われた通りワンドリブルで斜め45度からの一番率の高いシュート。入った。

 なかなかの底力を見せつけた。抜かれた男子は悔しげだ。雄一も男子相手だとディフェンスの遠慮がない。体を当ててセンターラインにきた男子のシュートを阻止していた。勝負は五分五分。奏歩のシュートミスが目立つが身長の高い信子がリバウンドをとりゴール下からシュート。入った。

 凛はまだ活躍できていない自分に焦っていた。男子のディフェンスはきつく、ミートでパスをもらえない。スリーポイントラインのあたりをうろうろするばかりで体力だけが削られる。だが凛の特技は相手の観察と状況判断。ドリブルもパスもシュートも苦手だが、相手の弱点を見抜く眼力があった。

 凛に張り付いている男子は左ドリブルが苦手。だから凛はあえて右側を守り男子が左ドリブルをするよう仕向けた。予想どおりおぼつかない。一瞬の隙をみてスティール。うまくいった。ボールは凛の手に渡った。そこでゲーム終了となり得点は男子相手に12対10。凛は自分が冷静に判断できるという特技に気づいた。オフェンスよりディフェンス向きだ。弱点がわかる。ちょっと楽しい。村上先生から集合がかかった。

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