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奏歩と信子は体育館の外のランニングロードにでて、軽くジョギングを始めた。信子はまだ奏歩の事を怖がっており口数少ない。奏歩も、何を話していいか分からず困惑している。

「今日何時に起きたの?」

「7時かな」 

「さっき試合出てみてどうだった?」

「まあまあかな」

「なんでバスケ部入ったの?」

「なんとなく」

 こりゃ駄目だ、と奏歩が匙を投げた時、雄一と凛がやってきた。

「お二人さん仲良くやってるね」

「どこが!」

 雄一は初めて試合を経験した感想をとうとうと述べた。

「やっぱさー私はディフェンスが無理だわ。体当たっちゃうじゃん。遠慮してしまってね」

「そんなん言ったら負けちゃうじゃん。ガンガン当たりなよ。壁になったと思えばいいの。雄ちゃんは立ってるだけ。向こうが勝手に当たってくる。それなら向こうのファールだよ」

「でも」

「バスケは激しくぶつかり合う勝負なんだよ。相手に進路を譲ってどうする」

 奏歩は怒りぎみだ。雄一の弱気が赦せないらしい。信子がそこで初めて自分から口を開いた。

「奏歩ちゃんはどうしてそこまで勝ちにこだわるの?」

「どうしてもないよ。勝負なんだから勝ちたい。勝ったら気分よくない?」

「私はだめだなあ。あんなきつい練習してまで勝ち進みたいって気持ちがわかない。負けててもしんどいけどね」

 凛も同意した。

「わかるわかる。どうせ負けてもしんどいよね。バスケの楽しさっていまいちわかんない」

「だよね」

「皆なんでバスケ部入ったのさ」

「だって先輩が、怖かったからだよ」

「あのなあ」

 奏歩はやれやれといった様子だった。

「ボールを持ったときのワクワク感とか敵を抜いた爽快感シュートの決まった時に誇らしい気持ちとかは感じないわけ?」

「そりゃまあそうだけど」

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