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三年vs山本学園

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「勝たなきゃ爽快感は味わえない。シュートが決まらなきゃ走っても無駄なだけ。私は無意味なことが一番嫌い。村上先生は県大会出場って言ったけど私は男子にも負けたくない。このチームで県大会優勝するつもりでいるの」

「まじか。こんな素人寄せ集めで?」

「まじだよ」

 奏歩の熱さに対して他のメンツは冷めていた。もはや走り込みに嫌気がさしていたのだ。だから、三年の試合にもできれば出たくないのが山々だった。どうせ圧倒的な点差で負けるに決まってる。走りたくない、嫌だった。

「ほら試合始まるよ」

 雄一が時計の時間に気づいた。皆は三年と合流すべくコートへと向かった。三年たちは余裕の表情だ。

「皆楽しむよ!」

 一華がいう。

「ファイトオー」

 円陣を組み、手を重ねる。山本学園の応援団はこちらの保護者勢の比較にならず多かった。声も出ているし旗もある。ポンポンを持ったチアガールさえいるのだからどれだけバスケに力を入れているかがわかるというもの。

 試合が始まった。三年がスタメンだがジャンプボールで一華は高さで負けた。そのまま山本学園がレイアップシュート。2対0。向こうの応援陣がどっと沸く。いけいけそれそれやれやれもっともっと!歌になっているのが、こちらとしては耳障りだ。

「マンツーマンでディフェンスするよ」

 キャプテンの一華が声かけしている。村上先生は口をつぐみ黙ってみていた。山本学園のオフェンスだ。ボールがセンターに渡る。かとおもいきやスーパープレーが出た。

 センターはターンしてノールックで逆サイドのセンターへとパス。もらった方のセンターは待ち構えていたかのようにまるでバレーボールのトスのようにボールを弾いてシュート。決まった。

 一華たちはこの空中戦についていけない。ボールがひらひらと花を舞う蝶のように頭上を飛び交う。ぴったりマークしているはずが翻弄され続けわちゃわちゃだ。早くも第一クォーターで体力の限界がきた様子。まだ1得点も決まっていない。流石にまずいと焦り始めたのか村上先生が立ち上がった。

「選手交代!」

 え? となる三年たち。こんなシーンでしかも全員交代なんて。だが、足が棒のようになっているのは端から見ても明らかだった。ここは少し休むに限る。麻帆以外の三年がベンチへ戻った。変わって出場したのは気合い満々の奏歩、青ざめた信子、嫌気の指している凛、自信なさげな雄一だ。

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