24 / 48
第24話 死の山への侵入者:エルディー視点
しおりを挟む
何者かの接近を感じ取り、リュウヤに断りもなく走り出してしまった。
だが、今死の山に私以外の実力者を送り込む国があってもあり得ない話ではない。
私をわざわざ国外に調査に出させるほどの存在。フェイラ様の降臨という一大イベントがあったのだ。
「さて、この辺のはずだが……見つけた」
「あぁ。どうすればいいのだ。ああっ、はあっ! あの方は、ああっ!」
いたのは変態だった。
体をくねらせながら、リュウヤをツケ狙っている謎の女だった。
ひとまず、私の帰りが遅いから送られてきたイルマット王国の使者ではなさそうで安心した。
まあ、私以外にこの山を探索できるものなどいないのだが、あの王のことだ、他の国から人を雇うことに頓着はないだろう。
しかし、フェイラ様ではなくリュウヤを狙っているのか。
確かにリュウヤは魅力的だ。つい丁寧に教えてあげたくなるほどだった。
正直なところ今残っているのは私の私情だ。
私が任された調査はとうに終わっている。そのため本来なら、妹のためにも一刻も早く戻りたいが、同時により長くリュウヤといたいとも思ってしまっているのだ。妹以外にこんな感情を抱いたのは初めてだ。
だが、ひとまずは目の前の女に対処しなくては。
あれは使者ではないにしても、ここにいていい存在ではない。おぼろげだが、妹のエディカが話していた特徴と一致する。
紫色の巻き毛に同じく紫色の瞳。人間離れした白い肌。そしてそのうえに纏う漆黒のドレス。こいつは魔王の一柱、デューチャに違いない。
「ここで何をしている?」
「そなたはエルディーか?」
「そうだと言ったらどうする? 魔王デューチャ」
「ほう、わらわの正体を見抜いているのだな? さすがは地上最強の女騎士といったところであろうか」
先ほどまでのほうけた態度は入れ替え、冷たい視線を向けてくるデューチャ。
相手の力量を正確に把握しているわけではないが、私の実力からしてフェイラ様のような神を除き、私が勝てない相手はいない。
目の前の魔王も勝つこと自体は容易い。
だが、ここでこの魔王が死んだ場合、私以外に何があるかわからない。
私は確かにフェイラ様のいう通り地上最強かもしれないが、周りへの影響まで全て無効化できるわけではない。
となれば、滞在させてもらっている以上迷惑をかけることはできない。
「顔が怖いのであるよ? しかし、わらわの首を取らないとは、よほど周りが大切と見受けられる。随分と彼らに入れ込んでおるのだな」
「今までにないほどの待遇を受けているからな」
「単にライバルを増やしたくないだけでは?」
「ライバル? なんのことだ」
「あら、自覚がないのであるか? あのお方の隣に立つ者のことである。すでにそなたを含め四人もいるであろう。ライバルは少ない方がいい。てっきりそういう話かと思っていたのだが」
「何をバカなことを。リュウヤの隣に立たれるのはフェイラ様だ。私は二番目でいい。二人を守れるなら私はそれで構わない。そして、お前が二人の平穏の邪魔をするなら、私はお前を切る」
「妹を放っておいてであるか? ……ん? フェイラ? まさか最高神が降臨なされているので?」
「……」
「図星であるな。そうであるか。しかし、一番はわらわのもの。神にも渡さない。一人で勝手にことの結末を決めている方はさっさと家族を大切にしているといいである。さて、どう出て行こうか」
この魔王、痛いところをついてくるな。
さすがは聡明な我が妹が、一番頭が回る魔王だと言っていただけのことはある。
たかだか私程度の情報まで押さえているとは。
だが、そうだな。私一人では無理でもリュウヤならばこの魔王をどうすればいいか決められるかもしれない。
「ああ、寝込みを襲う? それとも一人になったところで抱きつく? どうすれば最も愛を伝えられるのであろうか」
「だったら連れて行こうではないか」
「何をおっしゃっているのだ」
「なあに、遠慮はいらない」
「ちょっと、やめなさい!」
このまま俵のように担いで連れて行こう。
どうせ、魔王の攻撃は私には効果がない。
リュウヤの命を取る様子はないのだし、変なことをすれば呪いの推定有効範囲外までぶん投げてからトドメを刺せばいい。
「自分がいかに恥ずかしいことを言っていたか自覚がないのであるか? もうあれは好きだと言っているようなものだと思うのであるが」
「私に動揺を誘う術は効果がない」
「自覚がないのだな」
妹はいずれ解放してみせる。そのためにここでの情報収集は個人的に重要なのだ。
だからどうか耐えてくれ、エディカ。
だが、今死の山に私以外の実力者を送り込む国があってもあり得ない話ではない。
私をわざわざ国外に調査に出させるほどの存在。フェイラ様の降臨という一大イベントがあったのだ。
「さて、この辺のはずだが……見つけた」
「あぁ。どうすればいいのだ。ああっ、はあっ! あの方は、ああっ!」
いたのは変態だった。
体をくねらせながら、リュウヤをツケ狙っている謎の女だった。
ひとまず、私の帰りが遅いから送られてきたイルマット王国の使者ではなさそうで安心した。
まあ、私以外にこの山を探索できるものなどいないのだが、あの王のことだ、他の国から人を雇うことに頓着はないだろう。
しかし、フェイラ様ではなくリュウヤを狙っているのか。
確かにリュウヤは魅力的だ。つい丁寧に教えてあげたくなるほどだった。
正直なところ今残っているのは私の私情だ。
私が任された調査はとうに終わっている。そのため本来なら、妹のためにも一刻も早く戻りたいが、同時により長くリュウヤといたいとも思ってしまっているのだ。妹以外にこんな感情を抱いたのは初めてだ。
だが、ひとまずは目の前の女に対処しなくては。
あれは使者ではないにしても、ここにいていい存在ではない。おぼろげだが、妹のエディカが話していた特徴と一致する。
紫色の巻き毛に同じく紫色の瞳。人間離れした白い肌。そしてそのうえに纏う漆黒のドレス。こいつは魔王の一柱、デューチャに違いない。
「ここで何をしている?」
「そなたはエルディーか?」
「そうだと言ったらどうする? 魔王デューチャ」
「ほう、わらわの正体を見抜いているのだな? さすがは地上最強の女騎士といったところであろうか」
先ほどまでのほうけた態度は入れ替え、冷たい視線を向けてくるデューチャ。
相手の力量を正確に把握しているわけではないが、私の実力からしてフェイラ様のような神を除き、私が勝てない相手はいない。
目の前の魔王も勝つこと自体は容易い。
だが、ここでこの魔王が死んだ場合、私以外に何があるかわからない。
私は確かにフェイラ様のいう通り地上最強かもしれないが、周りへの影響まで全て無効化できるわけではない。
となれば、滞在させてもらっている以上迷惑をかけることはできない。
「顔が怖いのであるよ? しかし、わらわの首を取らないとは、よほど周りが大切と見受けられる。随分と彼らに入れ込んでおるのだな」
「今までにないほどの待遇を受けているからな」
「単にライバルを増やしたくないだけでは?」
「ライバル? なんのことだ」
「あら、自覚がないのであるか? あのお方の隣に立つ者のことである。すでにそなたを含め四人もいるであろう。ライバルは少ない方がいい。てっきりそういう話かと思っていたのだが」
「何をバカなことを。リュウヤの隣に立たれるのはフェイラ様だ。私は二番目でいい。二人を守れるなら私はそれで構わない。そして、お前が二人の平穏の邪魔をするなら、私はお前を切る」
「妹を放っておいてであるか? ……ん? フェイラ? まさか最高神が降臨なされているので?」
「……」
「図星であるな。そうであるか。しかし、一番はわらわのもの。神にも渡さない。一人で勝手にことの結末を決めている方はさっさと家族を大切にしているといいである。さて、どう出て行こうか」
この魔王、痛いところをついてくるな。
さすがは聡明な我が妹が、一番頭が回る魔王だと言っていただけのことはある。
たかだか私程度の情報まで押さえているとは。
だが、そうだな。私一人では無理でもリュウヤならばこの魔王をどうすればいいか決められるかもしれない。
「ああ、寝込みを襲う? それとも一人になったところで抱きつく? どうすれば最も愛を伝えられるのであろうか」
「だったら連れて行こうではないか」
「何をおっしゃっているのだ」
「なあに、遠慮はいらない」
「ちょっと、やめなさい!」
このまま俵のように担いで連れて行こう。
どうせ、魔王の攻撃は私には効果がない。
リュウヤの命を取る様子はないのだし、変なことをすれば呪いの推定有効範囲外までぶん投げてからトドメを刺せばいい。
「自分がいかに恥ずかしいことを言っていたか自覚がないのであるか? もうあれは好きだと言っているようなものだと思うのであるが」
「私に動揺を誘う術は効果がない」
「自覚がないのだな」
妹はいずれ解放してみせる。そのためにここでの情報収集は個人的に重要なのだ。
だからどうか耐えてくれ、エディカ。
1
あなたにおすすめの小説
帰って来た勇者、現代の世界を引っ掻きまわす
黄昏人
ファンタジー
ハヤトは15歳、中学3年生の時に異世界に召喚され、7年の苦労の後、22歳にて魔族と魔王を滅ぼして日本に帰還した。帰還の際には、莫大な財宝を持たされ、さらに身につけた魔法を始めとする能力も保持できたが、マナの濃度の低い地球における能力は限定的なものであった。しかし、それでも圧倒的な体力と戦闘能力、限定的とは言え魔法能力は現代日本を、いや世界を大きく動かすのであった。
4年前に書いたものをリライトして載せてみます。
スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
能力『ゴミ箱』と言われ追放された僕はゴミ捨て町から自由に暮らすことにしました
御峰。
ファンタジー
十歳の時、貰えるギフトで能力『ゴミ箱』を授かったので、名門ハイリンス家から追放された僕は、ゴミの集まる町、ヴァレンに捨てられる。
でも本当に良かった!毎日勉強ばっかだった家より、このヴァレン町で僕は自由に生きるんだ!
これは、ゴミ扱いされる能力を授かった僕が、ゴミ捨て町から幸せを掴む為、成り上がる物語だ――――。
【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。
木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。
しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。
そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。
【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】
文字変換の勇者 ~ステータス改竄して生き残ります~
カタナヅキ
ファンタジー
高校の受験を間近に迫った少年「霧崎レア」彼は学校の帰宅の最中、車の衝突事故に巻き込まれそうになる。そんな彼を救い出そうと通りがかった4人の高校生が駆けつけるが、唐突に彼等の足元に「魔法陣」が誕生し、謎の光に飲み込まれてしまう。
気付いたときには5人は見知らぬ中世風の城の中に存在し、彼等の目の前には老人の集団が居た。老人達の話によると現在の彼等が存在する場所は「異世界」であり、元の世界に戻るためには自分達に協力し、世界征服を狙う「魔人族」と呼ばれる存在を倒すように協力を願われる。
だが、世界を救う勇者として召喚されたはずの人間には特別な能力が授かっているはずなのだが、伝承では勇者の人数は「4人」のはずであり、1人だけ他の人間と比べると能力が低かったレアは召喚に巻き込まれた一般人だと判断されて城から追放されてしまう――
――しかし、追い出されたレアの持っていた能力こそが彼等を上回る性能を誇り、彼は自分の力を利用してステータスを改竄し、名前を変化させる事で物体を変化させ、空想上の武器や物語のキャラクターを作り出せる事に気付く。
スキル【収納】が実は無限チートだった件 ~追放されたけど、俺だけのダンジョンで伝説のアイテムを作りまくります~
みぃた
ファンタジー
地味なスキル**【収納】**しか持たないと馬鹿にされ、勇者パーティーを追放された主人公。しかし、その【収納】スキルは、ただのアイテム保管庫ではなかった!
無限にアイテムを保管できるだけでなく、内部の時間操作、さらには指定した素材から自動でアイテムを生成する機能まで備わった、規格外の無限チートスキルだったのだ。
追放された主人公は、このチートスキルを駆使し、収納空間の中に自分だけの理想のダンジョンを創造。そこで伝説級のアイテムを量産し、いずれ世界を驚かせる存在となる。そして、かつて自分を蔑み、追放した者たちへの爽快なざまぁが始まる。
~最弱のスキルコレクター~ スキルを無限に獲得できるようになった元落ちこぼれは、レベル1のまま世界最強まで成り上がる
僧侶A
ファンタジー
沢山のスキルさえあれば、レベルが無くても最強になれる。
スキルは5つしか獲得できないのに、どのスキルも補正値は5%以下。
だからレベルを上げる以外に強くなる方法はない。
それなのにレベルが1から上がらない如月飛鳥は当然のように落ちこぼれた。
色々と試行錯誤をしたものの、強くなれる見込みがないため、探索者になるという目標を諦め一般人として生きる道を歩んでいた。
しかしある日、5つしか獲得できないはずのスキルをいくらでも獲得できることに気づく。
ここで如月飛鳥は考えた。いくらスキルの一つ一つが大したことが無くても、100個、200個と大量に集めたのならレベルを上げるのと同様に強くなれるのではないかと。
一つの光明を見出した主人公は、最強への道を一直線に突き進む。
土曜日以外は毎日投稿してます。
『希望の実』拾い食いから始まる逆転ダンジョン生活!
IXA
ファンタジー
30年ほど前、地球に突如として現れたダンジョン。
無限に湧く資源、そしてレベルアップの圧倒的な恩恵に目をつけた人類は、日々ダンジョンの研究へ傾倒していた。
一方特にそれは関係なく、生きる金に困った私、結城フォリアはバイトをするため、最低限の体力を手に入れようとダンジョンへ乗り込んだ。
甘い考えで潜ったダンジョン、しかし笑顔で寄ってきた者達による裏切り、体のいい使い捨てが私を待っていた。
しかし深い絶望の果てに、私は最強のユニークスキルである《スキル累乗》を獲得する--
これは金も境遇も、何もかもが最底辺だった少女が泥臭く苦しみながらダンジョンを探索し、知恵とスキルを駆使し、地べたを這いずり回って頂点へと登り、世界の真実を紐解く話
複数箇所での保存のため、カクヨム様とハーメルン様でも投稿しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる