TS転生したけど、今度こそ女の子にモテたい

マグローK

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第181話 勝負じゃないので好きに描いてほしい

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 筆を持つ人々に見つめられる楓。

 唐突に頼んだ日から少し時間が空いたことで、もういいかなと思った楓は葛に対して事前に許可取りをした。

 その時に承諾を得て、今はアトリエを使わせてもらっていた。

「ちょっとくらい動いてもいいかな?」

 楓が声を出すと、向日葵が即座に首を横に振った。

「ダメだよ。もうちょっとじっとしてて」

 向日葵に言われ、楓は動くことを諦めた。

 ふっと息を吐き出すと、そのままの姿勢でぼんやりと思考を探った。



 気持ちが届き始めたのか、楓の作戦が功を奏しているのか、向日葵と咲夜は日に日に距離を縮めていた。

 いくら楓の頼みでも、そんな言葉を言っていた気がしたが、確実に喧嘩は減っていた。

 楓としては二人の間での争いが減り、平和だなと感じ始めていた。

 それでも、まだ若干のいざこざが残っているため、ここいらで発散してもらおうと残っていたネタを使うことにしたのだ。

「ねえ、二人とも。同じテーマで絵を描いてみない?」

 楓は言葉にしながらも次に続ける言葉を考えていた。

 何故そんなことをしなければならないのか、そんな言葉が返ってくることは想像に難くなかったからだ。

 しかし、楓の提案に対して、二人とも予想に反し、間を置かずにイエスと答え、絵を描くこととなった。

 と言っても、テーマが既に決まっていたわけではなく。

「何か描きたいものとかある?」

 という楓の質問の結果、楓が描かれるということになったのだった。

 そんな訳で、今楓は向日葵、咲夜、葛、そして真里の四人に囲まれる形で絵を描かれていた。

 以前、向日葵とお互いを描きあった時も、なんだかんだと楓と向日葵が少し距離のある時期だったため、今回もいいことでは考えたが、描かれるだけというのは、椿にされたことはあったものの、やはり慣れないと楓は思った。

「なあ、もう少し前から描きたいのだ」

 不満そうに真里が言葉をこぼした。

 予定としては、楓に向日葵、咲夜と葛を加えた四人で何かをするはずだった。

 にも関わらず、真里がこの場にいる理由、それは、興味を持った真里がこっそりと楓たちをつけてきていたからだ。

 葛の家に着くなり姿を現し、帰ってもらう訳にもいかず一緒に絵を描いていた。

「真里は後ろからにしたんでしょ」

「もっといい位置がよかったのだ」

「私ならどこから描いてもいいって言ってたくせに」

「確かに言ったが、やってみると思っていたのとは違ったのだ」

 いまさら文句を言っているが、楓を後ろから描くことを決めたのは、本人も認めているように真里だった。

 テーマは楓で描くことに決まったものの、どう描くかまでは決まっていなかった。

 そこで、真里が全員正面からでは面白味がないと言い出したのだ。

 結果、四方から描くことになり、真里は後方から描くこととなった。

 唸り声が聞こえるたび、楓は笑いを抑えるのに苦労していた。それとは別で、恥ずかしさに耐えながら、楓はただ描かれる時間を過ごしていた。



 幽体離脱してみんながどんなふうに描いているのか見られたらいいのに。

 楓がそんなふうに思っていると次第に描き手の手が止まり始めた。

 どうやら完成が近づいてきているらしい。

 満足そうに息を吐く音が次々に聞こえてきた。

「だあーもう私にはここまでしかできないのだ」

 そんな中最初に音を上げたのは やはり真里だった。

「なあ、もう終わりにしないか?」

「私はそれでいいと思います。描き終わりました」

 葛が余裕そうに言った。

 向日葵も咲夜も二人の言葉に頷いた。

 どうやら、すでに十分描けたらしい。

「じゃあ、もう体勢崩していい?」

「いいよ」

「やったー」

 向日葵の返事に、楓は早速息を吐き出しながら、だらしなく体から力を抜いた。

 体中から音を発しながらストレッチをして、凝り固まった体をほぐした。

「早速私の描いた絵を見るのだ」

 楓まで絵の緊張感から解放されると早速真里が席を立った。

 大きな画面を持って、とてとてと楓のもとまで歩いて移動した。

「上手くかけた?」

「ふっふっふ。私を甘くみないでほしいのだ。いくら納得がいかないからと言って手を抜くことはないのだ」

 顔に笑みを浮かべながら、真里は手に持っていた画面の裏表をひっくり返した。

「え……うっま」

 初めて見た真里の絵に、楓は思わず声を漏らした。

 そこに描かれていたのは、顔の見えない後ろ姿の少女。

 楓はそれが自分の姿であるということは知っていた。しかし、どうにか顔を見てみたい。そんなふうに思ってしまっていた。

「真里、僕より絵うまかったんだ」

「だから言っただろう? 私を甘く見るなと」

 楽しそうに笑う真里を見ながら、楓は動けなくなっていた。

 今まで知らなかっただけで、どうやら真里には多方面で才能があったようだ。

「それじゃ、私は終わりだな。次は誰にするのだ?」

「時計回りでいいんじゃない?」

「すると私ですか」

 今度は葛の番だった。

 葛に描かれるというのも真里と同じく初めてだったが、葛の絵は楓も知っていた。

 簡単に言えばリアルな絵。

 どんな絵に仕上がったのか想像していると、葛は楓に絵を向けた。

「おおー」

「どう、ですかね?」

 不安そうに聞いてくる葛を前に楓は黙ってまばたきを繰り返した。

「前より格段に魅力的なってると思うよ」

「本当ですか?」

「僕はそう思うよ。まあ、葛に習ってる僕が言っても説得力ないかもしれないけど」

「いいえ。誰からだって褒められたら素直に嬉しいです」

 照れたようにはにかみながら葛は言った。

 その姿に、楓からも笑みがこぼれた。

 葛の絵は相変わらずリアル寄りの絵だった。

「ただただリアルなだけじゃないのがいいと思う。でも、僕としては美化されてる感じがするけどね」

「絵はある程度現実から離れててなんぼじゃないですか?」

「まあ、そうとも言えるんだけど」

 立て続けにキレイに描かれたことに、楓は描かれている時とは別の羞恥心を抱きながら、次に向日葵の方を見た。

「向日葵は一回同じテーマで描いてる訳だけど」

「そうだね。でも、全く同じにはならなかったかな」

 クルリと回して出てきたのは、そもそも今までとは少し角度の違う楓の姿だった。

「どう?」

「やっぱり向日葵の絵が好きだな」

「やったー」

 ガッツポーズする姿を微笑みつつ見ながら、楓は絵の方へと視線を移した。

「以前よりもより美化されてる気がする。いや、葛のは美化って感じだったけど、向日葵のはデフォルメって感じかな?」

「私は楓はキレイだけど可愛いが強いと思ってるから」

「へへ。な、なるほど」

 楓は思わず目線をそらして頬をかいた。

 少しは慣れてきても可愛いと言われると照れくさく、楓はなかなか向日葵を正面から見ることができなくなっていた。

「それじゃあ、次は俺だね」

 とうとう最後、咲夜の方を楓はゆっくりと首を回した。                                                                                        
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