6 / 60
第6話 イレギュラー発生!
しおりを挟む
もう帰ろう。すぐ帰ろう。
でも、最初にダンジョンの中に出た時からなんとなくわかっていたけど、入り口から一番遠いところに出たみたいだ。
現在地と出口までの距離がわかるのはいいとして、いかんせん遠い。
「まあ、遠回りしてるから、余計ってのもあるんだけど……」
スキルのおかげか、どれだけ歩いても疲労を感じてないから、別にいいんだけどね?
きっと、伊井野さんや、伝説的な探索者である飯屋《めしや》さんなんかのレベルなら、ゴブリンに囲まれていてもまっすぐ突っ切るだろうし、むしろ困っている人を助けるんだろうけども、今の俺にそこまでの力はないと思う。
安全策安全策。
いやしかし、にしても人と会わなさすぎな気がする。
ここは広め深めのダンジョンだった気もするもけども、モンスターとは遭遇するのに、探索者の一人ともすれ違わないなんて。
「孤独な仕事とは聞いていたけど、上層ならもう少し人がいてもおかしくないはずだよな? 何か起きてるのかな?」
基本的にダンジョンは下へ行くほど危険度が増す。
俺が今いる上層、そして、中層、下層、深層という順番だ。
探索者として生計を立てている人もいるし、平日でも多くの人がダンジョンにいると思ったのだが、まったくいないな。
生計を立てている人は上層にはいないか。
ちょっとばかし、助けを期待したところもあるのだが、今の調子なら帰れそうだし、いっか。
「おっ!」
何やらボス部屋らしき重厚そうな扉が開かれている。
一応、ここのダンジョンは中層のボスまで討伐され、下層までは解放されているという話だったが、倒されたボスも時間でまた湧いてくる。
一度倒していれば下の層へは降りられるが、ある種の力試しとして、ボスに挑戦する探索者が存在していると聞いたことがある。
しかし、扉は開いているものの、誰かが入っていく様子は見えない。
ボス部屋に入れば、挑戦している最中は扉が閉じられているはずだし、特に何もなければやっぱり扉は閉まっているはず……。
「……ゃー……」
遠くから人の声が響いてくる。
ゴブリンを倒した時ほどはっきりは聞こえないが、おそらく悲鳴。
戦いの最中ということはわかるが、遠くからでははっきりとわからない。
悔しいが、俺が行ってもボスレベルともなれば足手纏いになりかねない。できることがあるとすれば、さっさと帰って助けを呼ぶことくらい……。
「キャー!」
はっきりと悲鳴が聞こえた。
瞬間、俺の体は勝手に動いていた。助けを呼んでも間に合わなければ意味がない。
自分でも驚くほどのスピードでボス部屋に入り、状況を確認する。
「……っ! なんだこの穴……」
ボス部屋の床には、本来開けられないはずの穴がぽっかりと開いていた。
そして、ボス部屋の中には、ボスどころか、挑戦しているはずの探索者の姿もない。誰もいない。
「まさか、ボスごと下に?」
考えられるとすればその可能性。
「グアー!」
「やめて!」
「ウワー!」
叫び声だけが上層にまで響いてくる。やはり、ボスが下の層に降りるイレギュラーが発生している。
叫び声が複数ということを考えると、上層から落下した探索者と中層を探索していた探索者、そのどちらもが巻き込まれていると判断してよさそうだ。
こうなったら時間が惜しい。
「落下ダメージ無効は、あるな」
俺はスキルを確認してから、穴に向かって飛び降りた。
「ふっ」
着地成功。
「ひ、ひいっ! な、何が起きてるって言うの? どうして、ミノタウロスなんかがここに」
「も、もうダメだぁ」
「大丈夫。今、入り口まで送るから。転移! それから転移!」
やはり、ボスが下の階層へ乱入するイレギュラーのようだ。
混乱した様子の声があっちこっちで飛びかっている。
「って、アレ、伊井野さんか?」
まずは状況把握と、モンスターや探索者の位置を把握していたのだが、見慣れた声に目を向けてみると確かに、クラスでよく見る人気者の顔だ。
やたらボロボロになりつつも懸命に対処している。どうやら、手当てが難しいと判断し一人ずつ転移させているようだ。
「おい! さっさとやれねえのかよ!」
「すみませんっ。転移! これで」
「い、いや、いやー!」
ミノタウロスがガレキを投げつけた。飛んだ方向には一人の女性。
さすがに遠い。
「くっ! 大丈夫?」
「は、はい」
「転移……まだいたのね。ううん。あと一人」
身を挺して伊井野さんが庇った。
「まずいなぁ……壊したら巻き込んじゃうから攻撃できなかったし、そもそもさすがに、意識が……」
フラッフラで立ちあがろうとする伊井野さん。だが、その場から動けない様子。
止まってる場合じゃない。俺でも攻撃が通りそうな場所を探して、せめてミノタウロスの気を引いて時間を稼げ。
なんでもいい。どこか、どこか。
見えた!
「いけっ、ここだぁ! くらえ、縦斬り!」
飛び上がって、ただ、剣を振り下ろす。
「モオオオオオォォォォォ……」
最後のなんだか体に似つかわしくない牛のモノマネのような叫びをあげ、ミノタウロスは倒れ込んだ。
全身全霊の一撃は、俺のビギナーズラックがまだ続いていたらしく、周りの人たちが弱らせていたこともあって最後の一撃となったようだ。
ミノタウロスはアイテムの山へと変わった。
「よ、よかったぁ」
「えっ、嘘……ボスを、一撃で……?」
近くにモンスターの反応もない。ひとまず安全は確保できたはず。
「だ、大丈夫? ケガ、俺、その、魔法がわからなくて、手当てするにも、えっと」
「大丈夫。わたしは落ち着いたら自分で治せるから。あとから帰れる。助けてくれてありがとう。でも、まだ何が起こるかわからないから。転移」
「え」
俺の視界は真っ白くなった。
でも、最初にダンジョンの中に出た時からなんとなくわかっていたけど、入り口から一番遠いところに出たみたいだ。
現在地と出口までの距離がわかるのはいいとして、いかんせん遠い。
「まあ、遠回りしてるから、余計ってのもあるんだけど……」
スキルのおかげか、どれだけ歩いても疲労を感じてないから、別にいいんだけどね?
きっと、伊井野さんや、伝説的な探索者である飯屋《めしや》さんなんかのレベルなら、ゴブリンに囲まれていてもまっすぐ突っ切るだろうし、むしろ困っている人を助けるんだろうけども、今の俺にそこまでの力はないと思う。
安全策安全策。
いやしかし、にしても人と会わなさすぎな気がする。
ここは広め深めのダンジョンだった気もするもけども、モンスターとは遭遇するのに、探索者の一人ともすれ違わないなんて。
「孤独な仕事とは聞いていたけど、上層ならもう少し人がいてもおかしくないはずだよな? 何か起きてるのかな?」
基本的にダンジョンは下へ行くほど危険度が増す。
俺が今いる上層、そして、中層、下層、深層という順番だ。
探索者として生計を立てている人もいるし、平日でも多くの人がダンジョンにいると思ったのだが、まったくいないな。
生計を立てている人は上層にはいないか。
ちょっとばかし、助けを期待したところもあるのだが、今の調子なら帰れそうだし、いっか。
「おっ!」
何やらボス部屋らしき重厚そうな扉が開かれている。
一応、ここのダンジョンは中層のボスまで討伐され、下層までは解放されているという話だったが、倒されたボスも時間でまた湧いてくる。
一度倒していれば下の層へは降りられるが、ある種の力試しとして、ボスに挑戦する探索者が存在していると聞いたことがある。
しかし、扉は開いているものの、誰かが入っていく様子は見えない。
ボス部屋に入れば、挑戦している最中は扉が閉じられているはずだし、特に何もなければやっぱり扉は閉まっているはず……。
「……ゃー……」
遠くから人の声が響いてくる。
ゴブリンを倒した時ほどはっきりは聞こえないが、おそらく悲鳴。
戦いの最中ということはわかるが、遠くからでははっきりとわからない。
悔しいが、俺が行ってもボスレベルともなれば足手纏いになりかねない。できることがあるとすれば、さっさと帰って助けを呼ぶことくらい……。
「キャー!」
はっきりと悲鳴が聞こえた。
瞬間、俺の体は勝手に動いていた。助けを呼んでも間に合わなければ意味がない。
自分でも驚くほどのスピードでボス部屋に入り、状況を確認する。
「……っ! なんだこの穴……」
ボス部屋の床には、本来開けられないはずの穴がぽっかりと開いていた。
そして、ボス部屋の中には、ボスどころか、挑戦しているはずの探索者の姿もない。誰もいない。
「まさか、ボスごと下に?」
考えられるとすればその可能性。
「グアー!」
「やめて!」
「ウワー!」
叫び声だけが上層にまで響いてくる。やはり、ボスが下の層に降りるイレギュラーが発生している。
叫び声が複数ということを考えると、上層から落下した探索者と中層を探索していた探索者、そのどちらもが巻き込まれていると判断してよさそうだ。
こうなったら時間が惜しい。
「落下ダメージ無効は、あるな」
俺はスキルを確認してから、穴に向かって飛び降りた。
「ふっ」
着地成功。
「ひ、ひいっ! な、何が起きてるって言うの? どうして、ミノタウロスなんかがここに」
「も、もうダメだぁ」
「大丈夫。今、入り口まで送るから。転移! それから転移!」
やはり、ボスが下の階層へ乱入するイレギュラーのようだ。
混乱した様子の声があっちこっちで飛びかっている。
「って、アレ、伊井野さんか?」
まずは状況把握と、モンスターや探索者の位置を把握していたのだが、見慣れた声に目を向けてみると確かに、クラスでよく見る人気者の顔だ。
やたらボロボロになりつつも懸命に対処している。どうやら、手当てが難しいと判断し一人ずつ転移させているようだ。
「おい! さっさとやれねえのかよ!」
「すみませんっ。転移! これで」
「い、いや、いやー!」
ミノタウロスがガレキを投げつけた。飛んだ方向には一人の女性。
さすがに遠い。
「くっ! 大丈夫?」
「は、はい」
「転移……まだいたのね。ううん。あと一人」
身を挺して伊井野さんが庇った。
「まずいなぁ……壊したら巻き込んじゃうから攻撃できなかったし、そもそもさすがに、意識が……」
フラッフラで立ちあがろうとする伊井野さん。だが、その場から動けない様子。
止まってる場合じゃない。俺でも攻撃が通りそうな場所を探して、せめてミノタウロスの気を引いて時間を稼げ。
なんでもいい。どこか、どこか。
見えた!
「いけっ、ここだぁ! くらえ、縦斬り!」
飛び上がって、ただ、剣を振り下ろす。
「モオオオオオォォォォォ……」
最後のなんだか体に似つかわしくない牛のモノマネのような叫びをあげ、ミノタウロスは倒れ込んだ。
全身全霊の一撃は、俺のビギナーズラックがまだ続いていたらしく、周りの人たちが弱らせていたこともあって最後の一撃となったようだ。
ミノタウロスはアイテムの山へと変わった。
「よ、よかったぁ」
「えっ、嘘……ボスを、一撃で……?」
近くにモンスターの反応もない。ひとまず安全は確保できたはず。
「だ、大丈夫? ケガ、俺、その、魔法がわからなくて、手当てするにも、えっと」
「大丈夫。わたしは落ち着いたら自分で治せるから。あとから帰れる。助けてくれてありがとう。でも、まだ何が起こるかわからないから。転移」
「え」
俺の視界は真っ白くなった。
21
あなたにおすすめの小説
【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。
木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。
しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。
そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。
【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】
異世界帰りの元勇者、日本に突然ダンジョンが出現したので「俺、バイト辞めますっ!」
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
俺、結城ミサオは異世界帰りの元勇者。
異世界では強大な力を持った魔王を倒しもてはやされていたのに、こっちの世界に戻ったら平凡なコンビニバイト。
せっかく強くなったっていうのにこれじゃ宝の持ち腐れだ。
そう思っていたら突然目の前にダンジョンが現れた。
これは天啓か。
俺は一も二もなくダンジョンへと向かっていくのだった。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
【完結】元ゼネコンなおっさん大賢者の、スローなもふもふ秘密基地ライフ(神獣付き)~異世界の大賢者になったのになぜか土方ばかりしてるんだがぁ?
嘉神かろ
ファンタジー
【Hotランキング3位】
ゼネコンで働くアラフォーのおっさん、多田野雄三は、ある日気がつくと、異世界にいた。
見覚えのあるその世界は、雄三が大学時代にやり込んだVR型MMOアクションRPGの世界で、当時のキャラの能力をそのまま使えるらしい。
大賢者という最高位職にある彼のやりたいことは、ただ一つ。スローライフ!
神獣たちや気がついたらできていた弟子たちと共に、おっさんは異世界で好き勝手に暮らす。
「なんだか妙に忙しい気もするねぇ。まあ、楽しいからいいんだけど」
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
MP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~
ある中管理職
ファンタジー
勤続10年目10度目のレベルアップ。
人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。
すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。
なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。
チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。
探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。
万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。
クラスのマドンナがなぜか俺のメイドになっていた件について
沢田美
恋愛
名家の御曹司として何不自由ない生活を送りながらも、内気で陰気な性格のせいで孤独に生きてきた裕貴真一郎(ゆうき しんいちろう)。
かつてのいじめが原因で、彼は1年間も学校から遠ざかっていた。
しかし、久しぶりに登校したその日――彼は運命の出会いを果たす。
現れたのは、まるで絵から飛び出してきたかのような美少女。
その瞳にはどこかミステリアスな輝きが宿り、真一郎の心をかき乱していく。
「今日から私、あなたのメイドになります!」
なんと彼女は、突然メイドとして彼の家で働くことに!?
謎めいた美少女と陰キャ御曹司の、予測不能な主従ラブコメが幕を開ける!
カクヨム、小説家になろうの方でも連載しています!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる