TSしたダンジョン配信者は無自覚で無双する〜かわいい見た目と超絶スキルで美少女をイレギュラーから救いバズりの嵐を生む〜

マグローK

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第29話 体育やろうぜ!

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「ふふ。似合ってるよ」

「どうも」

 散々触られてくすぐったかった。

 えりちゃんは本当にスキンシップが多い気がする。
 色々見えてても気にしないし。恥ずかしがってるの。俺だけ?



 人のいない遠く広い体育場。同じところだと危ないのだ。そう校舎が生徒が。

 つまりは危険人物たちの隔離である。
 いや、実際暴れてれば探索者もモンスター同様駆除対象だからね。

 まあ、なんにせよ、えりちゃんが来てくれたおかげでギリギリセーフ……

「痛ぁー!」
 と、なりそうな勢いのチョークが飛んできた。

「あっぶな」

 スキルがなかったら完全に当たっていた。

 チョークが接近している認識はなかったけどかわせた。やっぱりスキルは発動しているみたいだ。相手によるのか?

「遅い! その油断が命取りに……今、私のチョークをかわしたのか?」

「え、はい」

 外からの優秀な探索者の先生。上下ジャージ姿のいかにも体育教師といった風貌の女性。スポーティな雰囲気で普通に体育を教えていそうな印象を受ける。

 それもそのはず、教員免許も持っていなければ探索者の体育教師にはなれない。ちゃんとした先生でありながら、探索者という変わり者なわけだ。

 そんな先生は、初っ端から生徒にチョークを投げつけるような先生らしい。
 チャイムは今なっているのでセーフだと思う。

「致命傷にならない不意打ちをするのが教師の義務、ですよね?」

「あ、ああ。だが、伊井野でも最初はかわせなかった私のチョークをかわすとは、逸材だな」

「そうでしょう? しょうちゃんは天才なんです」

「天才ではないと思うけど」

「……確実に見ていなかったはず、どうして……?」

 しかし、普段から不安になるような発言をしている人みたいだ。

 致命傷にならない不意打ちは教育者と言うより、人としてどうなのだろうか。
 それに、先生も先生で探索者なわけだし、チョークと言えど、人によっては致命傷になってしまうんじゃ。

「ひとまず、最初の試練は合格だ。今日からよろしく、高梨正一郎くん。女子のようだが、間違ってないか?」

「はい。間違ってないです」

「それじゃあ、初めての生徒もいることだし、自己紹介から始めよう」

 チョークを投げたことなど気にしないように授業が始まるようだ。

 今になって思ったが、えりちゃんや先生がおかしいんじゃなくて、探索者ってのが変わり者集団ってこと?
 俺もあっち側の人間になるのかな?

「さて、なんだか私を疑うような目で見ている高梨」

「はい」

「否定しないのか」

「すみません」

「いやいい。探索者で教師なんてのはそうそういない。だからこその自己紹介だ」

 先生は姿勢を正すとまっすぐ俺を見てきた。

「私は藤岡《ふじおか》瑠奈《るな》。先生と呼ばれるような大したことはしていない。探索者としての実績なら君ら二人に遠く及ばないだろう。だが、教師としてできることを教えていくつもりだ。よろしく」

「あれ、今日の先生素直ですね」

「うるさいぞ」

「照れてるんですか? やっぱりしょうちゃんの魅力」

「さん付けで呼んでくれてるとありがたい」

「えー。わたしの時はそんなふうに言わなかったじゃないですか」

「口を挟むな」

 これまで一対一だったからか、えりちゃんの様子が、俺と接する時とあんまり変わらないように思う。
 対探索者と他で切り替えているということなのか。

「えっと。俺は高梨正一郎です。新人探索者です。よろしくお願いします」

「わたしはしょうちゃんのパートナーのえりちゃんです!」

「本当に、伊井野は世間に対するイメージと私に対するイメージでまったく違うな」

「先生は先生ですし、しょうちゃんはしょうちゃんですから。それに、先生は探索者の実績で及ばないって言いますけど、こうしてわたしに教えてるってことが、実績として特上じゃないですか?」

「そうだな。おそらくその話をするだけで生活できるくらいの話題性はあるな」

「そうでしょう?」

 なんだか楽しそうだな。
 授業も実は楽しいものなのか? 探索者になる訓練はしてきたけれど、探索者の授業なんて知る機会はなかった。
 いや、でも、こんなところに来るってことはやっぱり。

「あ、わかった。先生が素直な理由。生徒が増えて嬉しいんだ」

「そうなんですか?」

「授業を始める!」

「先生はね、照れ隠しが下手だから無視するんだよ」

「違う! 変なこと吹き込むな! 授業だ授業!」

 顔が真っ赤なところを見れば、えりちゃんの言う通りそうなのかもしれない。
 言葉遣いは荒っぽいし、チョークを投げてくるが、心は優しい人なのかもな。

「それで、授業はなにをするんですか? 今までは普通って言うとあれですけど、普通の体育しか受けたことなくて」

「誰だってそうだ。そこの中学生から探索者やっているやつがおかしいだけだ」

「おかしいって生徒に言うのはおかしいと思います」

「こうして、私を先生と呼びながら、まったく敬意を感じないからな」

「尊敬してますよ。いっつもゴマすってるじゃないですか」

「いらないんだよ! 誰が本当にすりゴマを授業中に渡す。今回はサッカーだサッカー」

 そんなことしてるのか、と思わず顔が引きつる。

 しかし、さっかー……?

「さっかーって、あのサッカーですか?」

「そう、知っての通りのサッカーだ」

 いや、でもサッカーってボールがもつのか? と思っていると、先生が転がしてきたのは後方に転がっていた黒々しい鉄球だった。

「今回はこれでサッカーをする」

「頭おかしいんですか?」

「そうだそうだー!」

「普通のサッカーボールできみたちにサッカーができるわけないだろう。それに、伊井野は経験あるだろう。見せてやれ」

「はーい」

 そう言うとえりちゃんは先生からパスを受け鉄球でリフティングを始めた。
 軽やかに蹴り上げると、ポンポンといともたやすく足で鉄球をコントロールし、リフティング回数を増やしている。
 俺は普通のサッカーボールでもできたことないのだが、えりちゃんは軽そうに見えるほど鉄球をなめらかに扱っている。

「はい」

 最後は華麗にキャッチ。
 砲丸投げの砲丸より大きい鉄球を、サッカーボール同様扱っている。

「さあ、二人でサッカーしようか」



「うおおおお!」

「ゴール!」

 体もボールもゴールも丈夫なおかげで、今の俺でも全力でサッカーができる。
 重りによるトレーニングの要領だ。
 同じようにはいかないが、慣れればドリブルも問題なくできる。

「今の俺の得点だけど?」

「そうだよ? でも、しょうちゃんは」

 俺はスキルで毎回回避してしまうのでえりちゃんのシュートを防げない。

 それに、特殊な体操着でも作ってくれたのかスライディングでも傷つかない。
 授業時間中破けることはなかった。

「そこまで! 初めてにしてはよかったんじゃないか?」

「そうですね」

「ああっ! 思ったよりできてしまった……」

 スキルってすごいんだな。とこんなところで実感させられるとは思っていなかった。
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