13 / 49
第13話 悔い改めろ
しおりを挟む
俺はまだ何もしていないのに、甘露のお見合い相手である石崎は、単なる気迫だけでびくびくし出した。
「ま、待て。落ち着け。話せばわかる」
「武器を掲げてるヤツが言う言葉かよ」
「いや、これはちがっ……」
石崎は慌てた様子で剣を背中に隠した。さっきまでの威勢はどこへ消えたのやら。
しかし、こんなところを見ると、やはりこいつは探索者じゃない。ただの一般人だ。
だが、だからといって、平気で他人を踏みにじるヤツを野放しにするわけにもいかない。
「まずはお前が、その剣を捨てるべきなんじゃないのか?」
ダンジョンの壁に石崎をぶつけるようにはじき飛ばしながら、俺は石崎との距離を詰めた。
「かはっ」
大の字で壁にぶつかったことで、肺に入った空気を大量に吐き出した石崎だが、気絶するような威力じゃない。
これくらいで気絶してもらっては困る。
「や、やだなぁ。これはモンスター用ですよ。人間に対しては使いませんって」
「人間に対しても使ってるって話じゃなかったか?」
「……」
「おいおい、だんまりかよ」
石崎は壁に背中をすりつける形になりながらも、目を泳がせて必死に言い訳を考えているようだった。
甘露に対して行ってきた悪行。加えて、自慢げに話していた他人の権利を奪ってきた行いに対する言い訳を。そして、その他大勢を見下してきたことへの言い訳を。
しばらくして、ようやく言い訳を思いついたのか、石崎は口を開いた。
「あれは言葉のあやですよ」
「は?」
「別にひどいことは何もしていません。剣を持ってやめろと言っただけです」
「それで、さっき言ってたことになるのか? 女に探索なんて無理だとか。お前に媚びてればいいとか。そういうことを言うために、剣まで振り回してたってことか?」
「いやぁ……。そーいう時も、あるんじゃないかなぁ? なんて……」
「ねーよ」
「うっ……」
「あるわけないだろ。剣を突きつけて、お前が間違ってる、とか言う状況なんてねーよ。それとも、今だってそうするつもりだったのか?」
「……」
石崎は何も答えない。
答えることができないのか、また次の言い訳を考えているだけなのか。
そんなこと知らない。考えたくもない。
「いいか。お前が踏んだのは、猫のしっぽみたいなかわいいものじゃない。虎の尾だ。命までは奪わないが、償いぐらいはしてもらわないとな」
「そ、そうそう! あなた、僕なんかよりよっぽどすごい探索者みたいですから、この剣あげますよ。だから離してください」
「ほう?」
剣。
それを手放す気になったのは、少し変わった証拠かもしれない。
少しは観念したのかもしれない。
「くれるってんなら、もらっといてやるよ」
「じゃあ」
「だが、それとこれとは話が別だ」
「そんな……」
「お前。甘露に対する行いを改めるとは言ってないだろ」
「……」
まただんまりか。
「そうかよ。あとで甘露に当たり散らせるから、今のことはやり過ごせばいいと。剣もまた他のを買えばいいと」
「そ、そんなわけないじゃないですか! やだなぁ!」
「一度として、甘露を思いやる言葉も口にできないのにか」
「さっきあなたに言ったこと、あなたを罵倒したことで不快にさせたんなら謝りますよ」
「俺が謝ってほしいわけじゃない」
「じゃあ、どうして怒ってるんですか。謝ってほしいわけじゃないなら、どうして怒ってるんですか!」
目を血走らせ、石崎はツバを飛ばしながら言ってきた。
え、こいつ逆ギレしてきたんだけど。
「わからないのか?」
「ええ。わかりませんよ。どうして僕がこんな目に遭わなくちゃならないんだ。あなたにはまだ何もしていない。甘露さんがどうなったって、あなたにとって何も関係ないでしょう。あれですか? 尻尾を振られて気分良くなっちゃったんですか?」
「お前!」
「ぐ、うぅ」
「それ本気で言ってるのか?」
俺の問いかけに、石崎は怪訝そうな表情を浮かべるだけ。
今、自分が置かれている状況が、どうして甘露を理由に責められているのか、まるでわからないといった様子だ。
「謝るんじゃ足りないなら、お金もあげますから」
「違う。甘露のことだよ。甘露にお前がやってきた愚行についてだ!」
「……」
「正義どうこうの話がしたいわけじゃない。だが、お前がやってきたこと、これからも続けるってんなら」
「わ、わかりましたから、離してください。やめますから」
懇願するように石崎は言った。
「ダメだ。まだお前の口から聞けてない。甘露との関係をどうするのか。やめた程度じゃやり方を変えるだけだろ」
「……。甘露さんとの関係は僕のせいってことで終わりにします。だから離してください!」
口約束。
だが、それで十分だ。
魂の拘束。俺の憑依はいつまでもついて離さない。
「言ったな」
「ええ。言いましたよ。だから離してください」
「自覚があるならそれでいい」
俺も壁に押しつけるのをやめてやる。
「もう甘露の前に二度と姿を現すな」
「わ、わかりましたから」
「消えろ」
「ひぃっ……」
石崎は脇目も振らず逃げ出した。
これであの男は甘露の前に姿を現すことはできない。
「ま、待て。落ち着け。話せばわかる」
「武器を掲げてるヤツが言う言葉かよ」
「いや、これはちがっ……」
石崎は慌てた様子で剣を背中に隠した。さっきまでの威勢はどこへ消えたのやら。
しかし、こんなところを見ると、やはりこいつは探索者じゃない。ただの一般人だ。
だが、だからといって、平気で他人を踏みにじるヤツを野放しにするわけにもいかない。
「まずはお前が、その剣を捨てるべきなんじゃないのか?」
ダンジョンの壁に石崎をぶつけるようにはじき飛ばしながら、俺は石崎との距離を詰めた。
「かはっ」
大の字で壁にぶつかったことで、肺に入った空気を大量に吐き出した石崎だが、気絶するような威力じゃない。
これくらいで気絶してもらっては困る。
「や、やだなぁ。これはモンスター用ですよ。人間に対しては使いませんって」
「人間に対しても使ってるって話じゃなかったか?」
「……」
「おいおい、だんまりかよ」
石崎は壁に背中をすりつける形になりながらも、目を泳がせて必死に言い訳を考えているようだった。
甘露に対して行ってきた悪行。加えて、自慢げに話していた他人の権利を奪ってきた行いに対する言い訳を。そして、その他大勢を見下してきたことへの言い訳を。
しばらくして、ようやく言い訳を思いついたのか、石崎は口を開いた。
「あれは言葉のあやですよ」
「は?」
「別にひどいことは何もしていません。剣を持ってやめろと言っただけです」
「それで、さっき言ってたことになるのか? 女に探索なんて無理だとか。お前に媚びてればいいとか。そういうことを言うために、剣まで振り回してたってことか?」
「いやぁ……。そーいう時も、あるんじゃないかなぁ? なんて……」
「ねーよ」
「うっ……」
「あるわけないだろ。剣を突きつけて、お前が間違ってる、とか言う状況なんてねーよ。それとも、今だってそうするつもりだったのか?」
「……」
石崎は何も答えない。
答えることができないのか、また次の言い訳を考えているだけなのか。
そんなこと知らない。考えたくもない。
「いいか。お前が踏んだのは、猫のしっぽみたいなかわいいものじゃない。虎の尾だ。命までは奪わないが、償いぐらいはしてもらわないとな」
「そ、そうそう! あなた、僕なんかよりよっぽどすごい探索者みたいですから、この剣あげますよ。だから離してください」
「ほう?」
剣。
それを手放す気になったのは、少し変わった証拠かもしれない。
少しは観念したのかもしれない。
「くれるってんなら、もらっといてやるよ」
「じゃあ」
「だが、それとこれとは話が別だ」
「そんな……」
「お前。甘露に対する行いを改めるとは言ってないだろ」
「……」
まただんまりか。
「そうかよ。あとで甘露に当たり散らせるから、今のことはやり過ごせばいいと。剣もまた他のを買えばいいと」
「そ、そんなわけないじゃないですか! やだなぁ!」
「一度として、甘露を思いやる言葉も口にできないのにか」
「さっきあなたに言ったこと、あなたを罵倒したことで不快にさせたんなら謝りますよ」
「俺が謝ってほしいわけじゃない」
「じゃあ、どうして怒ってるんですか。謝ってほしいわけじゃないなら、どうして怒ってるんですか!」
目を血走らせ、石崎はツバを飛ばしながら言ってきた。
え、こいつ逆ギレしてきたんだけど。
「わからないのか?」
「ええ。わかりませんよ。どうして僕がこんな目に遭わなくちゃならないんだ。あなたにはまだ何もしていない。甘露さんがどうなったって、あなたにとって何も関係ないでしょう。あれですか? 尻尾を振られて気分良くなっちゃったんですか?」
「お前!」
「ぐ、うぅ」
「それ本気で言ってるのか?」
俺の問いかけに、石崎は怪訝そうな表情を浮かべるだけ。
今、自分が置かれている状況が、どうして甘露を理由に責められているのか、まるでわからないといった様子だ。
「謝るんじゃ足りないなら、お金もあげますから」
「違う。甘露のことだよ。甘露にお前がやってきた愚行についてだ!」
「……」
「正義どうこうの話がしたいわけじゃない。だが、お前がやってきたこと、これからも続けるってんなら」
「わ、わかりましたから、離してください。やめますから」
懇願するように石崎は言った。
「ダメだ。まだお前の口から聞けてない。甘露との関係をどうするのか。やめた程度じゃやり方を変えるだけだろ」
「……。甘露さんとの関係は僕のせいってことで終わりにします。だから離してください!」
口約束。
だが、それで十分だ。
魂の拘束。俺の憑依はいつまでもついて離さない。
「言ったな」
「ええ。言いましたよ。だから離してください」
「自覚があるならそれでいい」
俺も壁に押しつけるのをやめてやる。
「もう甘露の前に二度と姿を現すな」
「わ、わかりましたから」
「消えろ」
「ひぃっ……」
石崎は脇目も振らず逃げ出した。
これであの男は甘露の前に姿を現すことはできない。
4
あなたにおすすめの小説
幼馴染が家出したので、僕と同居生活することになったのだが。
四乃森ゆいな
青春
とある事情で一人暮らしをしている僕──和泉湊はある日、幼馴染でクラスメイト、更には『女神様』と崇められている美少女、真城美桜を拾うことに……?
どうやら何か事情があるらしく、頑なに喋ろうとしない美桜。普段は無愛想で、人との距離感が異常に遠い彼女だが、何故か僕にだけは世話焼きになり……挙句には、
「私と同棲してください!」
「要求が増えてますよ!」
意味のわからない同棲宣言をされてしまう。
とりあえず同居するという形で、居候することになった美桜は、家事から僕の宿題を見たりと、高校生らしい生活をしていくこととなる。
中学生の頃から疎遠気味だったために、空いていた互いの時間が徐々に埋まっていき、お互いに知らない自分を曝け出していく中──女神様は何でもない『日常』を、僕の隣で歩んでいく。
無愛想だけど僕にだけ本性をみせる女神様 × ワケあり陰キャぼっちの幼馴染が送る、半同棲な同居生活ラブコメ。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
大好きな幼なじみが超イケメンの彼女になったので諦めたって話
家紋武範
青春
大好きな幼なじみの奈都(なつ)。
高校に入ったら告白してラブラブカップルになる予定だったのに、超イケメンのサッカー部の柊斗(シュート)の彼女になっちまった。
全く勝ち目がないこの恋。
潔く諦めることにした。
昔義妹だった女の子が通い妻になって矯正してくる件
マサタカ
青春
俺には昔、義妹がいた。仲が良くて、目に入れても痛くないくらいのかわいい女の子だった。
あれから数年経って大学生になった俺は友人・先輩と楽しく過ごし、それなりに充実した日々を送ってる。
そんなある日、偶然元義妹と再会してしまう。
「久しぶりですね、兄さん」
義妹は見た目や性格、何より俺への態度。全てが変わってしまっていた。そして、俺の生活が爛れてるって言って押しかけて来るようになってしまい・・・・・・。
ただでさえ再会したことと変わってしまったこと、そして過去にあったことで接し方に困っているのに成長した元義妹にドギマギさせられてるのに。
「矯正します」
「それがなにか関係あります? 今のあなたと」
冷たい視線は俺の過去を思い出させて、罪悪感を募らせていく。それでも、義妹とまた会えて嬉しくて。
今の俺たちの関係って義兄弟? それとも元家族? 赤の他人?
ノベルアッププラスでも公開。
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
クラスのマドンナがなぜか俺のメイドになっていた件について
沢田美
恋愛
名家の御曹司として何不自由ない生活を送りながらも、内気で陰気な性格のせいで孤独に生きてきた裕貴真一郎(ゆうき しんいちろう)。
かつてのいじめが原因で、彼は1年間も学校から遠ざかっていた。
しかし、久しぶりに登校したその日――彼は運命の出会いを果たす。
現れたのは、まるで絵から飛び出してきたかのような美少女。
その瞳にはどこかミステリアスな輝きが宿り、真一郎の心をかき乱していく。
「今日から私、あなたのメイドになります!」
なんと彼女は、突然メイドとして彼の家で働くことに!?
謎めいた美少女と陰キャ御曹司の、予測不能な主従ラブコメが幕を開ける!
カクヨム、小説家になろうの方でも連載しています!
まずはお嫁さんからお願いします。
桜庭かなめ
恋愛
高校3年生の長瀬和真のクラスには、有栖川優奈という女子生徒がいる。優奈は成績優秀で容姿端麗、温厚な性格と誰にでも敬語で話すことから、学年や性別を問わず人気を集めている。和真は優奈とはこの2年間で挨拶や、バイト先のドーナッツ屋で接客する程度の関わりだった。
4月の終わり頃。バイト中に店舗の入口前の掃除をしているとき、和真は老齢の男性のスマホを見つける。その男性は優奈の祖父であり、日本有数の企業グループである有栖川グループの会長・有栖川総一郎だった。
総一郎は自分のスマホを見つけてくれた和真をとても気に入り、孫娘の優奈とクラスメイトであること、優奈も和真も18歳であることから優奈との結婚を申し出る。
いきなりの結婚打診に和真は困惑する。ただ、有栖川家の説得や、優奈が和真の印象が良く「結婚していい」「いつかは両親や祖父母のような好き合える夫婦になりたい」と思っていることを知り、和真は結婚を受け入れる。
デート、学校生活、新居での2人での新婚生活などを経て、和真と優奈の距離が近づいていく。交際なしで結婚した高校生の男女が、好き合える夫婦になるまでの温かくて甘いラブコメディ!
※特別編6が完結しました!(2025.11.25)
※小説家になろうとカクヨムでも公開しています。
※お気に入り登録、感想をお待ちしております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる