TS転生したら、カードゲーム系アニメのノリで美少女令嬢とダンジョン探索してた

マグローK

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第33話 獲得! 探索者資格!!

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 僕は合格した嬉しさで意気揚々と控え室を出た。

 建物の中やその外まで、軽い足取りで闊歩した。

 だのに、嶺さんは見つからなかった。

 待っていると言ってくれていたはずなのに、見つけることはできなかった。
 連絡先も知らないし、もう出会うことはできないだろう……。

「……ショック」

 数分は呆然としてしまったかもしれない。
 チラチラと脳裏に浮かぶのは、優しく接してくれた嶺さんの笑顔。

 どんな人なのかほとんど知らないけれど、僕の胸はたしかに踊っていた。

「でもきっと、何かの用事で急に帰らないといけなくなったのだろう。うん。そうだ」

 こればっかりは仕方ない。

 僕は意識を切り替えて、スマホのカメラを起動。インカメで笑顔の練習をしてから車へと向かった。

 今の身体能力なら、徒歩で帰る事もできないではない。けれど、せっかくお友だちが待っていてくれているのだ。向かわない訳にはいかないだろう。

 行きでも使った、試験場近くの駐車場へ向かうと、見知った顔が見えてきてほっとした。車の外へ出て待っていてくれたのか、手を振ってくれるみふだちゃんたちに、僕も手を振り返す。
 それから無意識のうちに駆け足で向かっていた。

「どうだった?」

 興奮気味に聞いてくるみふだちゃんの目は、らんらんと輝いていた。
 笑顔の練習なんてしたから、表情でバレてしまっているかもしれない。

「結果はね……」

「どうだったの?」

 僕は、もったいぶるようにためてから、探索者証を取り出した。

「合格!」

「おめでとう!」

「お姉様なら当然です!」

「やりましたね」

 みふだちゃんだけでなく、千伊香ちゃんやライラさんまで、まるで自分ごとのように喜んでくれているように見える。

 本当、僕にはもったいないくらい、いい人たちだ。

「ありがとう。ようやく、ようやくだよ」

「でも、今回の結果はわかってたよ。歴ちゃんなら合格できるってわかってた」

「そんなことないよ。ギリギリだったもん」

「そう言いますが、お姉様は周りに見える他の方と違って、身なりが綺麗なままです。余裕があったんじゃありませんか?」

「それは……」

 どうやら他の受験者がどんな様子だったかまで把握してくれていたようだ。

 指摘されてしまうと、装備の摩耗具合は明らかに少ない。
 なんせ、最終試験の内容が、僕は戦闘じゃなかったからだ。

 ただ、他の人が受けていた試験内容がわからないだけに、どう答えたらいいのかわからない。

 そこで、手を叩く音。

 返答に困った僕に助け舟を出してくれたのは、ライラさんだった。

「みなさん。わたくしとしても、ともに喜びたいところですが、会場が近いです。あまり大きな声で話さない方がいいかもしれません」

 ライラさんの注意を受けて周りを見ると、怨嗟の視線が飛んできているのを感じた。

 おっと……、配慮不足だったか。ここはまだ会場近く。不合格者もいるのだ。

「合格者から探索者証を奪って売りさばく、不届な輩もいるからね」

「そんなことして何になるの?」

「お金になるんだよ」

 みふだちゃんは、親指と人差し指で丸を作った。
 探索者証が売れるという話は、僕でも知っている一般的な事柄だ。
 とはいえ、わざわざ探索者から盗んでまで売る人がいるとは知らなかった。

 それでも、ようやくの事で、今回ばかりは素直に嬉しい。

 促されるまま車に入りながら、もみくちゃにされるのも、今日くらいは悪くない。

 道中、なんとかできるだけおとなしくして、みふだちゃんの家まで戻って来ると……、すぐには入れてもらえなかった。

「まさか、プライベートダンジョンは仮免まで……?」

「違う違う! そうじゃないよ」

 まるでさっきもったいぶった僕に対する当てつけのように、ためてからみふだちゃんは咳払いした。

「今日はちょっと見てほしいものがあるから」

「見てほしいもの?」

 案内されるまま、いくつもあるうちの部屋に入ると、中には貴族が開いていそうなパーティ会場。そこには豪華な食事が並べられていた。

「なに、これ……? 誰かの誕生日?」

 僕、プレゼントとか用意してないんだけど。

 そんな言葉に、みんなくすくすと笑い出した。

 おや、ボケたつもりはないんだけどな。

「なに言ってるの。歴ちゃんのだよ」

「僕、誕生日じゃないよ?」

 もちろん関係ないだろうが、前世の僕も今日が誕生日ではない。

「知っています。誕生日じゃありませんよ。お姉様の合格記念です」

「え……」

 みふだちゃんに千伊香ちゃん、ライラさんや他のメイドさんたち、1人1人の顔を見れば、みんなうなずき返してくれる。
 どうやら、そういうドッキリではないらしい。

「な、え、嘘……。本当に?」

「本当だよ。高見沢からのおもてなし、受け取ってほしいな」

「あたしも協力したんですよ?」

 ちょっとだけ恥ずかしそうに言う2人に、胸が温まる感じがした。

 今まで、こんなサプライズを受けたことはない。

 会場でのショックも、言ってないはずなのに誕生日が知られている衝撃も、吹っ飛んでしまうほど、何かがグッと込み上げて来るような感じがした。

 どういう訳か目元が熱くなる。
 僕はみんなに背を向けてから、改めて振り返った。

「ありがとう。今日くらいはみんなではしゃごう!」

「なに? どうしたの?」

「なんでもないよ」

 ずっと取れなかった資格が取れたのだ。

 すぐに両親にも連絡して、泊まりの許可ももらった。
 これくらい、祝ったっていいじゃない。

 僕は気づけばぼっちじゃなかった。本当、失礼になるとか、そんな軽薄な関係じゃなかった。

「さ、一緒に食べましょ」

「うん」

「うちのメイドは優秀だからね。色々と問題はあるけれど」

「問題。はて、なんのことでしょうか」

 わちゃわちゃしながら食べるご飯。
 今までしたこともない経験に、味がわからなくなる。
 それでも、これまでの人生全てを通して、一番美味しいことだけはわかった。

 これで、安心してダンカができる。
 胸を張って探索者になれた。
 2人との探索に引け目を感じる必要はない。

 この時の僕は確かにそう思っていた。
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