世界で唯一の天職【配信者】と判明した僕は剣聖一家を追放される〜ジョブの固有スキルで視界を全世界に共有したら、世界中から探し求められてしまう〜

マグローK

文字の大きさ
32 / 69

第32話 おびえたドラゴン

しおりを挟む
「グ、グオー! グオーグオー!」

 ダンジョンで宝箱を見つけて、守るドラゴンとどう戦おうと思っていたんだけど、アレは本当にドラゴンか不安になってきた。

 ドラゴンが僕に気づいたみたいだけど……。

「えっと……。えぇっと……」

 反応に困る。

 今のは何だったんだろう。

 咆哮……? いや、何だかもっと人の声で鳴き声を真似たみたいな感じがしたというか。

 とにかく、宝箱を守るドラゴンからは威圧感のようなものを感じない。

 あれって本当にドラゴンだよな?

「グ、グオー。グオオー」

「…………」

 うん。なんだろう。完全に威厳が足りていない。

 どちらかというと親しみやすさを感じてしまう。

 あのドラゴンならダンジョンの外にいても驚かない気がする。
 いや、実際にいたら驚くんだけど。

「グオ、グオ! グオグオ!」

 まあでもお宝を取られないように守っていることは確かだ。

 距離があるからか攻撃はしてこないけど、宝箱が僕に取られないようにしていることは伝わってくる。

 ドラゴンが守る宝箱を調べるためにも申し訳ないが、倒さないといただけない。

「えっと。探索してるから倒させてもらうけどいいかな?」
「グウウウ!」

 僕が敵意を明確に伝えたからか、先ほどよりも低い声でうなっている。

 それに、嫌って言ってる気がする。
 でも、ここはダンジョン。

 今までだって僕も命を狙われてきた。

「よっ、ほっ」

 どうやら、最終警告ということだったらしい。

 ブレスと長いしっぽによるなぎ払い攻撃。

 今回は僕から先にしかけた形になったけど、攻撃は単調。先ほどの謎の魔獣よりも弱い。

「グオッ! ぐおぉ……」

「よっとっと」

 うん。見切った。

 あまり戦い慣れていない感じがする。何だろう、僕がケガをしないように、あくまで本当に警告としてしか攻撃をしてきていない。

 当てる気がないような感じ。
 あまり激しくやって、何かに気づかれるのを恐れているような。

 でも、そこまではわからない。

 攻撃が見えたタイミングで僕はドラゴンの体をなぎ払った。

「軽っ」
「グワー。アあぁ……」

 まるでサーピィと相対した時のように、相手について知っていることと、相手の実力が合っていない感覚。

 見た目ほどの重さもなく、ドラゴンを軽々と飛ばしてしまった。

 ドラゴンはそのまま壁にぶつかると力なく倒れ込んだ。

 さらに、ドラゴンの体は小さくなると、ドラゴンの体を維持することすらできなくなったのか、女の子のような姿にまで縮んでしまった。

 僕の知るドラゴンは人に擬態することもあるって聞いたことがある。でも、逆ってこと?

「……グ……」

「生きてる?」

「……ぐ」

 気を失っているだけみたいだ。

 トドメは刺さないでおこう。
 なんだかトドメを刺すのは悪い気がする。

 お宝の方がガラ空きだから、そっちだけ確認させてもらうことにしよう。

「中は……。ん? あれ?」

 ほとんど入っていない。

 さっき宝石を拾ったから、もっといっぱいあるかと思ったけど、

「いや、底の方に何かある! ……これは、ぬいぐるみ?」

「……あたしのお友達のぬいぐるみ……。大切なお宝だけど、きみにあげる。あたし、負けちゃったから……」

「え」

 いつの間にか意識を取り戻していたドラゴンが、カベに寄りかかりながら言ってくる。

 ボロボロの、歴史を感じさせるぬいぐるみ。

 ドラゴンがぬいぐるみを大切にするイメージはないけど、でも、他にない唯一の宝物だということは、これしか中に入っていないことからもわかる。

 とても大切なものなんだろう。

「これは、もらえないよ。とても大切なものみたいだから」

 僕はぬいぐるみを宝箱の中に戻し、同じようにフタを閉めた。

 これでいい。

「でもっ!」

「あげるって言ってたけど、何だかとてもさみしそうだったから。それに、僕の求めていたお宝じゃないから」

「そ、そっか……」

 ちょっと安心したみたいでよかった。

 それにしても、僕がこんなにゆっくりしていても仲間のドラゴンが戻ってくる気配もやってくる気配もない。

 確か、もともとは目の前のドラゴン以外にも気配があったはず。

 ドラゴンの協力関係というのは薄いのか、それとも……。

「……でも、あたし……」

 我に返ったようにドラゴンは再び怯え出した。

 まずい、あんまりじっと見ていたから、怖がらせてしまったのかもしれない。

 震え出したドラゴンに大丈夫なんて言っても信じてもらえないだろう。

 なら、

「きみはここで何をしていたの? 物としてのお宝の代わりに、きみの経験というお宝を教えてくれないかな?」

「それなら、いいけど……」

 周りを確認するように周囲の様子をうかがってから、ドラゴンは立ち上がって僕の方まで歩いてきてくれた。

 ドラゴンならお宝を溜め込んでいるはずと思って来たけど、何もなかった。

 伝承が正確じゃないってことは知ってたけど、ここまで違うとは思っていなかった。

 なら、サーピィのように話を聞くというのが僕たちのプラスになるはず。

 ドラゴンはぬいぐるみを取り出し、大事そうに抱きしめると、少し落ち着いた様子で僕を見てきた。

「それは」

「あっれー? 何してんの?」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』

ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。 全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。 「私と、パーティを組んでくれませんか?」 これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

死んだはずの貴族、内政スキルでひっくり返す〜辺境村から始める復讐譚〜

のらねこ吟醸
ファンタジー
帝国の粛清で家族を失い、“死んだことにされた”名門貴族の青年は、 偽りの名を与えられ、最果ての辺境村へと送り込まれた。 水も農具も未来もない、限界集落で彼が手にしたのは―― 古代遺跡の力と、“俺にだけ見える内政スキル”。 村を立て直し、仲間と絆を築きながら、 やがて帝国の陰謀に迫り、家を滅ぼした仇と対峙する。 辺境から始まる、ちょっぴりほのぼの(?)な村興しと、 静かに進む策略と復讐の物語。

神様、ありがとう! 2度目の人生は破滅経験者として

たぬきち25番
ファンタジー
流されるままに生きたノルン伯爵家の領主レオナルドは貢いだ女性に捨てられ、領政に失敗、全てを失い26年の生涯を自らの手で終えたはずだった。 だが――気が付くと時間が巻き戻っていた。 一度目では騙されて振られた。 さらに自分の力不足で全てを失った。 だが過去を知っている今、もうみじめな思いはしたくない。 ※他サイト様にも公開しております。 ※※皆様、ありがとう! HOTランキング1位に!!読んで下さって本当にありがとうございます!!※※ ※※皆様、ありがとう! 完結ランキング(ファンタジー・SF部門)1位に!!読んで下さって本当にありがとうございます!!※※

能力『ゴミ箱』と言われ追放された僕はゴミ捨て町から自由に暮らすことにしました

御峰。
ファンタジー
十歳の時、貰えるギフトで能力『ゴミ箱』を授かったので、名門ハイリンス家から追放された僕は、ゴミの集まる町、ヴァレンに捨てられる。 でも本当に良かった!毎日勉強ばっかだった家より、このヴァレン町で僕は自由に生きるんだ! これは、ゴミ扱いされる能力を授かった僕が、ゴミ捨て町から幸せを掴む為、成り上がる物語だ――――。

さんざん馬鹿にされてきた最弱精霊使いですが、剣一本で魔物を倒し続けたらパートナーが最強の『大精霊』に進化したので逆襲を始めます。

ヒツキノドカ
ファンタジー
 誰もがパートナーの精霊を持つウィスティリア王国。  そこでは精霊によって人生が決まり、また身分の高いものほど強い精霊を宿すといわれている。  しかし第二王子シグは最弱の精霊を宿して生まれたために王家を追放されてしまう。  身分を剥奪されたシグは冒険者になり、剣一本で魔物を倒して生計を立てるようになる。しかしそこでも精霊の弱さから見下された。ひどい時は他の冒険者に襲われこともあった。  そんな生活がしばらく続いたある日――今までの苦労が報われ精霊が進化。  姿は美しい白髪の少女に。  伝説の大精霊となり、『天候にまつわる全属性使用可』という規格外の能力を得たクゥは、「今まで育ててくれた恩返しがしたい!」と懐きまくってくる。  最強の相棒を手に入れたシグは、今まで自分を見下してきた人間たちを見返すことを決意するのだった。 ーーーーーー ーーー 閲覧、お気に入り登録、感想等いつもありがとうございます。とても励みになります! ※2020.6.8お陰様でHOTランキングに載ることができました。ご愛読感謝!

魔力ゼロで出来損ないと追放された俺、前世の物理学知識を魔法代わりに使ったら、天才ドワーフや魔王に懐かれて最強になっていた

黒崎隼人
ファンタジー
「お前は我が家の恥だ」――。 名門貴族の三男アレンは、魔力を持たずに生まれたというだけで家族に虐げられ、18歳の誕生日にすべてを奪われ追放された。 絶望の中、彼が死の淵で思い出したのは、物理学者として生きた前世の記憶。そして覚醒したのは、魔法とは全く異なる、世界の理そのものを操る力――【概念置換(コンセプト・シフト)】。 運動エネルギーの法則【E = 1/2mv²】で、小石は音速の弾丸と化す。 熱力学第二法則で、敵軍は絶対零度の世界に沈む。 そして、相対性理論【E = mc²】は、神をも打ち砕く一撃となる。 これは、魔力ゼロの少年が、科学という名の「本当の魔法」で理不尽な運命を覆し、心優しき仲間たちと共に、偽りの正義に支配された世界の真実を解き明かす物語。 「君の信じる常識は、本当に正しいのか?」 知的好奇心が、あなたの胸を熱くする。新時代のサイエンス・ファンタジーが、今、幕を開ける。

処理中です...