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第34話 僕がお宝!?
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戦闘が終わり、ドラゴンの女の子も落ち着いたということで、僕はドラゴンの落とした宝石をせこせこと収納袋に入れていく。
少し心苦しいが、弱肉強食だってドラゴンたちがそう言っていた。
ならば、僕が持ち帰っても誰からも文句は言われないだろう。きっと、情報として役に立つはずだ。
それに、あの三体のドラゴン相手に、手を抜く方が失礼というものだろう。弱肉強食というのなら、全力で戦うのが僕なりの礼儀だ。
だから、やられたところで納得しているはず。
「あ、あの……!」
「どうかした?」
「……その……」
一体だけ残されたドラゴンの女の子。僕が勝手に共感して助けた子。
何かを言いたそうにしているけれど、感謝はもう十分にもらった。
今は泣き止み、少し落ち着いたように見える。
きっともう大丈夫だろう。
姫様には倒したドラゴンのことだけ話そう。この子は自由に暮らしてほしい。
「大丈夫だよ。もうあの三体のドラゴンたちは来ないから。それに、力は鍛えればつくはずだよ。だから大丈夫。ドラゴンならそこらの魔獣には負けないって。それじゃあ」
「ま、待って!」
なぜか呼び止められた。そして、腕まで掴まれている。
弱々しい腕だけど、きっと大丈夫。
でも、なんだろう。何かあったかな?
「あ、宝石?」
聞くと女の子は首を横に振る。
反撃もしてこない。
自分の宝石は置いていってほしいということかと思ったが、そうではないらしい。
あとは、なんだろう。
「あたしは倒さないの?」
そのことか。
「うーん……。本当は倒した方がいいのかもしれないけど、倒さないよ」
「どうして?」
「僕がそんな気になれないから、かな? だからいいんだ。きみはここでゆっくり暮らせばいいんだよ」
「あたしも嘘をついてる悪い子かもしれないのに?」
「ふふっ!」
「え、え? あたし、何か変なこと言ったかな?」
「ごめんごめん。なんだか似たような話をつい最近聞いた気がして、吹き出しちゃった」
「そう、なの?」
「うん」
姫様にも同じようなことを言われた。
もしかしたら、僕が思っている以上に、姫様も悪人なのかもしれない。
そもそも、善人だと思いたかった人が悪人だった経験はある。
いつだって、僕が見ているのは一面だけ。
もしかしたら、僕の見ていない面が本当の面なのかもしれない。
でも、そんなことは関係ない。
「少なくとも、僕にはきみが悪い子には見えないし、そうは思えない。だって、ぬいぐるみを大切にしてるんだしさ。お宝なら、大事にしなよ? 次こそは、僕みたいな悪い探索者に取られちゃうかもしれないからね」
「……! ……お宝、見つけた……!」
いや、なんだろう。急に目をかがやかせ出した。
それに、さっきより僕の手を掴む力が強くなった気がする。
え、なに?
手を振って歩き出そうとしたんだけど、全然歩き出せない。
踏ん張りが明らかに強くなってる。
「えっと、そろそろ帰ろうと思うんだけど」
「待って!」
女の子は、何かを探すようにあっちこっちをキョロキョロし出した。
どこにも何もないけど、少し元気になったのはわかる。
「あたしたちドラゴンが溜め込むのは、生まれた時に決められたお宝なの」
「きみの場合はぬいぐるみだったの?」
「ううん。あたしは、誰か」
「え?」
「あたしは、あたしが大切にしたくて、あたしを大切にしてくれる誰か。そんな誰かがいれば、ドラゴンとしての力を強く発揮できるの。なんだかあたし、今までで一番元気なんだ! これは、その……」
ん? それはつまり……。
「僕がその誰かだったってこと?」
「と、とにかく! できれば一緒にここにいてほしいの。でも、ムリだってわかってる。だから、一緒に行きたい! あたしはあなたと一緒がいい!」
「えっと……」
「ついてく! 力になりたい! きっと、あなたがあたしのお宝だから! お願い!」
まっすぐ頼みこまれると断りづらい。
それに、女の子を傷つけずに動くことができそうにない。
先ほどからどんどん力が強まっている。真の力が使えるようになっているのは言葉の通りみたいだ。
でも、姫様がどういうかわからない……。
いや、僕は何を迷っているんだ。
「わかった」
「やったー!」
「でも、僕を兵としてそばに置いてくれている姫様にきちんと確認してからね」
「うん!」
ギュッと僕の手を握ってくる。
そして、無邪気な笑顔でほほえんでくれる。
その笑顔には、もう先ほどまでのさみしそうな雰囲気はない。
大丈夫。
困っている女の子を放置するわけにはいかない。そのことに納得してくれたから、姫様はサーピィだって受け入れてくれたんだ。
「あ、そうだ。きみもやっぱり名前ってない?」
「名前? あたしの名前? ないよ?」
「うーん。そうだなー」
「つけてくれるの!?」
「うん。きみがいいなら」
「や、やったー! なに? なに?」
なにがいいだろう。
と言っても、僕が覚えておけそうなものじゃないといけないからなぁ。
ドラゴン、ドラ、ドラ……。
「ニュードラとかはどう? ドラゴンっぽいし」
「ニュードラ! いい! あたしニュードラ! あなたの名前は?」
「僕はリストーマ。じゃあ、改めてよろしく、ニュードラ」
「よろしく! リストーマ!」
「おっとっと」
ニュードラはまっすぐ僕に抱きついてきた。
見上げてくる笑顔は曇っていない。
しかし、ここまで力が強まるということは、ニュードラのお宝を奪うのは、倒したドラゴンたちの戦略だったのかもしれない。
力を強めるための、必然的なやり方。
だからって、ニュードラや他の子を傷つけていいことにはならない。
「……リストーマ。あたしの最高のお宝!」
少し心苦しいが、弱肉強食だってドラゴンたちがそう言っていた。
ならば、僕が持ち帰っても誰からも文句は言われないだろう。きっと、情報として役に立つはずだ。
それに、あの三体のドラゴン相手に、手を抜く方が失礼というものだろう。弱肉強食というのなら、全力で戦うのが僕なりの礼儀だ。
だから、やられたところで納得しているはず。
「あ、あの……!」
「どうかした?」
「……その……」
一体だけ残されたドラゴンの女の子。僕が勝手に共感して助けた子。
何かを言いたそうにしているけれど、感謝はもう十分にもらった。
今は泣き止み、少し落ち着いたように見える。
きっともう大丈夫だろう。
姫様には倒したドラゴンのことだけ話そう。この子は自由に暮らしてほしい。
「大丈夫だよ。もうあの三体のドラゴンたちは来ないから。それに、力は鍛えればつくはずだよ。だから大丈夫。ドラゴンならそこらの魔獣には負けないって。それじゃあ」
「ま、待って!」
なぜか呼び止められた。そして、腕まで掴まれている。
弱々しい腕だけど、きっと大丈夫。
でも、なんだろう。何かあったかな?
「あ、宝石?」
聞くと女の子は首を横に振る。
反撃もしてこない。
自分の宝石は置いていってほしいということかと思ったが、そうではないらしい。
あとは、なんだろう。
「あたしは倒さないの?」
そのことか。
「うーん……。本当は倒した方がいいのかもしれないけど、倒さないよ」
「どうして?」
「僕がそんな気になれないから、かな? だからいいんだ。きみはここでゆっくり暮らせばいいんだよ」
「あたしも嘘をついてる悪い子かもしれないのに?」
「ふふっ!」
「え、え? あたし、何か変なこと言ったかな?」
「ごめんごめん。なんだか似たような話をつい最近聞いた気がして、吹き出しちゃった」
「そう、なの?」
「うん」
姫様にも同じようなことを言われた。
もしかしたら、僕が思っている以上に、姫様も悪人なのかもしれない。
そもそも、善人だと思いたかった人が悪人だった経験はある。
いつだって、僕が見ているのは一面だけ。
もしかしたら、僕の見ていない面が本当の面なのかもしれない。
でも、そんなことは関係ない。
「少なくとも、僕にはきみが悪い子には見えないし、そうは思えない。だって、ぬいぐるみを大切にしてるんだしさ。お宝なら、大事にしなよ? 次こそは、僕みたいな悪い探索者に取られちゃうかもしれないからね」
「……! ……お宝、見つけた……!」
いや、なんだろう。急に目をかがやかせ出した。
それに、さっきより僕の手を掴む力が強くなった気がする。
え、なに?
手を振って歩き出そうとしたんだけど、全然歩き出せない。
踏ん張りが明らかに強くなってる。
「えっと、そろそろ帰ろうと思うんだけど」
「待って!」
女の子は、何かを探すようにあっちこっちをキョロキョロし出した。
どこにも何もないけど、少し元気になったのはわかる。
「あたしたちドラゴンが溜め込むのは、生まれた時に決められたお宝なの」
「きみの場合はぬいぐるみだったの?」
「ううん。あたしは、誰か」
「え?」
「あたしは、あたしが大切にしたくて、あたしを大切にしてくれる誰か。そんな誰かがいれば、ドラゴンとしての力を強く発揮できるの。なんだかあたし、今までで一番元気なんだ! これは、その……」
ん? それはつまり……。
「僕がその誰かだったってこと?」
「と、とにかく! できれば一緒にここにいてほしいの。でも、ムリだってわかってる。だから、一緒に行きたい! あたしはあなたと一緒がいい!」
「えっと……」
「ついてく! 力になりたい! きっと、あなたがあたしのお宝だから! お願い!」
まっすぐ頼みこまれると断りづらい。
それに、女の子を傷つけずに動くことができそうにない。
先ほどからどんどん力が強まっている。真の力が使えるようになっているのは言葉の通りみたいだ。
でも、姫様がどういうかわからない……。
いや、僕は何を迷っているんだ。
「わかった」
「やったー!」
「でも、僕を兵としてそばに置いてくれている姫様にきちんと確認してからね」
「うん!」
ギュッと僕の手を握ってくる。
そして、無邪気な笑顔でほほえんでくれる。
その笑顔には、もう先ほどまでのさみしそうな雰囲気はない。
大丈夫。
困っている女の子を放置するわけにはいかない。そのことに納得してくれたから、姫様はサーピィだって受け入れてくれたんだ。
「あ、そうだ。きみもやっぱり名前ってない?」
「名前? あたしの名前? ないよ?」
「うーん。そうだなー」
「つけてくれるの!?」
「うん。きみがいいなら」
「や、やったー! なに? なに?」
なにがいいだろう。
と言っても、僕が覚えておけそうなものじゃないといけないからなぁ。
ドラゴン、ドラ、ドラ……。
「ニュードラとかはどう? ドラゴンっぽいし」
「ニュードラ! いい! あたしニュードラ! あなたの名前は?」
「僕はリストーマ。じゃあ、改めてよろしく、ニュードラ」
「よろしく! リストーマ!」
「おっとっと」
ニュードラはまっすぐ僕に抱きついてきた。
見上げてくる笑顔は曇っていない。
しかし、ここまで力が強まるということは、ニュードラのお宝を奪うのは、倒したドラゴンたちの戦略だったのかもしれない。
力を強めるための、必然的なやり方。
だからって、ニュードラや他の子を傷つけていいことにはならない。
「……リストーマ。あたしの最高のお宝!」
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